食料供給困難事態対策法(法令ID:506AC0000000061)は、食料供給困難事態に対応するため、基本方針、対策本部、特定食料の安定供給確保のための措置などを定める法律です。条文全文は法令全集の食料供給困難事態対策法ページまたはe-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)で無料で閲覧できます。

近年の国際情勢の変化や気候変動を背景に、食料の安定供給に対するリスクへの対応が重要課題となっています。食料供給困難事態対策法は、食料供給が危機的な状況に陥った場合または陥るおそれが生じた場合に、政府が段階的に対策を講じる仕組みを整備した法律であり、令和7年(2025年)4月1日に施行されました。

この記事では、食料供給困難事態対策法の基本情報、食料安全保障の法的枠組みにおける位置づけ、条文構成、各規定の確認ポイントを整理します。個別の事業者が計画届出や指示の対象になるかどうか、特定品目の該当性を判断するものではありません。

基本情報

食料供給困難事態対策法は、令和6年(2024年)に制定された法律です。農林水産省は、同法について、令和7年4月1日に施行されたと説明しています。

項目内容
正式名称食料供給困難事態対策法
法令番号令和六年法律第六十一号
法令ID506AC0000000061
制定年2024年
施行2025年4月1日
主な分野食料安全保障、需給状況、対策本部、供給確保措置

第1条は、世界の食料需給・貿易が不安定な状況にあることを踏まえ、基本方針の策定、対策本部の設置、特定食料の安定供給確保のための措置等を定めることにより、食料安全保障の確保に寄与することを目的としています。

食料安全保障の法的枠組み

食料の安定供給に関する制度は、複数の法令が組み合わさって構成されています。食料供給困難事態対策法の位置づけを理解するには、関連する法令の体系を確認することが助けになります。

食料安全保障に関する法的枠組みとしては、農業の振興・農業構造の改善に関する法律(農業基本法の後継として位置づけられる食料・農業・農村基本法等)と、有事や緊急時における個別の対応法制が存在します。食料供給困難事態対策法は、後者の一つとして、食料需給の危機的状況に特化した対策の発動・実施の仕組みを定めています。

法令の分類主な役割
食料・農業・農村基本法等食料・農業・農村政策の基本理念と施策の方向
食料供給困難事態対策法危機的な食料需給事態への対応措置
関連する政令・省令特定食料等の範囲・手続の細目
基本方針対策の基本的方向・判断基準の具体化

この法律は、食料供給が不足した後の対応だけでなく、食料供給困難兆候の段階からの情報収集や体制整備も扱っています。

兆候・事態・対策を分ける

食料供給困難事態対策法は、総則、基本方針、需給状況に関する報告、対策本部、具体的な対策、雑則、罰則で構成されています。以下は主要な章の概要です(出典:e-Gov法令検索 掲載の条文)。

主な内容
第一章 総則目的、特定食料、特定資材、食料供給困難兆候、食料供給困難事態などの定義
第二章 基本方針食料供給困難事態対策の実施に関する基本方針
第三章 報告の徴収特定食料等の需給状況に関する報告
第四章 対策本部食料供給困難事態対策本部の設置、組織、実施方針、公示、廃止
第五章 対策出荷・販売、輸入、生産、製造に関する要請・計画・指示等
第六章 雑則財政上の措置、権限、主務大臣等
第七章 罰則報告や計画届出等に関する罰則

確認するときは、目的規定、定義、基本方針、対策本部、第五章の措置を順に読むと全体像をつかみやすくなります。

用語の位置づけ

この法律を読むときは、第2条の定義が重要です。どのような食料や資材が対象になるか、どの段階で対策が動き出すかを確認する入口になります。

特定食料

第2条は、特定食料について、米穀、小麦、大豆その他の農林水産物で、国民が日常的に消費しているものや国民の食生活上重要なものなどとして政令で定めるものをいうと定めています。

対象となる品目は、法律本文だけでなく政令もあわせて確認する必要があります。記事では個別品目の該当性判断までは扱いません。

食料供給困難兆候

食料供給困難兆候は、気象災害、植物に有害な動植物、家畜の伝染性疾病の発生・まん延などにより、特定食料の供給が大幅に不足し、または不足するおそれがある段階を指します。

この段階では、食料供給困難事態の発生を未然に防止するための措置が想定されています。

食料供給困難事態

食料供給困難事態は、特定食料の供給が大幅に不足し、または不足するおそれが高いため、国民生活の安定または国民経済の円滑な運営に支障が生じたと認められる事態を指します。

この用語は、対策本部の設置、実施方針、公示、出荷・販売等に関する措置と結びついています。食料供給困難兆候の段階と食料供給困難事態の段階では、講じることができる措置が異なるため、どの段階に関する規定かを意識して条文を読む必要があります。

基本方針と対策本部

第二章と第四章は、政府全体で対策を進めるための枠組みを定めています。基本方針と対策本部は、この法律の中核となる制度です。

第3条は、政府が食料供給困難事態対策の実施に関する基本方針を定めるものとしています。基本方針には、対策の基本的な方向、食料供給困難兆候または食料供給困難事態に該当するかどうかの基準、国が実施する措置、実施体制などが含まれます。基本方針は公示され、定期的に見直されることが想定されています。

第6条以下は、食料供給困難事態対策本部について定めています。本部長は内閣総理大臣とされ、内閣官房長官および農林水産大臣が副本部長とされています。対策本部は、食料供給困難事態が発生したと認められる場合に設置され、廃止の公示があるまで存続します。対策本部が設置されると、実施方針の作成や第五章の措置の発動が可能になります。

報告の徴収

第三章は、平時からの情報収集に関する規定を置いています。食料供給の状況を事前に把握し、対策を迅速に発動するための基盤となる仕組みです。

主務大臣は、特定食料等(特定食料および特定資材)の需給状況を把握するため、特定食料等に関する事業者に対して、生産量、販売量、輸入量、在庫量その他の事項について報告を求めることができます。

この報告徴収の仕組みは、食料供給困難兆候の段階でも活用され、食料供給困難事態の予防的な対処に役立てられることが想定されています。報告を正当な理由なく行わない場合や虚偽の報告をした場合には、罰則が適用されます。

出荷・輸入・生産・製造に関する措置

第五章は、特定食料等の供給を確保するための具体的な措置を定めています。条文上は、まず要請が置かれ、その後に計画の届出や変更指示などが規定されています。

第15条は、出荷または販売に関する要請等を定めています。主務大臣は、本部設置期間において必要があると認めるとき、出荷販売業者に対し、措置対象特定食料等の出荷または販売を調整するよう要請することができます。

第16条は輸入に関する要請等、第17条は農林水産物の生産に関する要請等、第18条は加工品等の製造に関する要請等を定めています。各規定は、「要請」の段階から始まり、事業者による計画の届出、計画変更の指示という段階的な仕組みとして構成されています。

要請・指示に従わない場合の効果(計画届出の義務、指示違反の罰則等)については、第五章の各条文と第七章の罰則規定をあわせて確認する必要があります。これらの規定は、どの事業者が対象になるか、どの段階でどの措置が行われるかについて、法律、政令、省令、基本方針をあわせて確認する必要があります。

罰則

第七章は、この法律に定める義務違反に対する罰則を規定しています。報告に関する義務、計画届出に関する義務などの違反が罰則の対象となっています。

報告の徴収に関する規定に基づく報告を正当な理由なく行わない場合、または虚偽の報告をした場合には罰則が設けられています。計画届出や変更指示への不対応についても、罰則規定の対象として整理されています。

罰則の具体的な内容(刑の種類・量)は条文を確認してください。食料供給困難事態対策法は施行から日が浅い法律であり、運用状況は今後も注視が必要です。

基本方針・政省令・公示を確認する

食料供給困難事態対策法を読むときは、報道や解説で使われる表現と、条文上の段階を分けて確認します。第2条の定義では、特定食料、特定資材、食料供給困難兆候、食料供給困難事態が区別されています。食料供給困難兆候の段階では情報収集や予防的対応が中心になり、食料供給困難事態の段階では対策本部の設置、実施方針の公示、出荷・販売、輸入、生産、製造に関する要請や計画届出などの措置が問題になります。

対象となる品目や事業者の範囲は、法律本文だけでなく、政令、省令、基本方針、対策本部の実施方針、公示によって具体化されます。特定食料や特定資材の範囲、報告徴収の対象、要請や指示の対象となる事業者、計画届出の内容を確認する場合は、農林水産省の公式資料とe-Gov法令検索の関連法令をあわせて確認します。法律が施行から日が浅いこともあり、運用資料や公示の更新状況を確認することが特に重要です。

事業者側で確認する資料としては、対象品目、在庫量や輸入量などの報告項目、要請の内容、計画届出の提出先、提出期限、変更指示の有無、罰則の対象となる義務が挙げられます。この記事は制度と条文の読み方を整理するものであり、個別の事業者が計画届出や指示の対象になるか、特定の品目が対象になるかを判断するものではありません。実務上の判断が必要な場合は、所管行政庁または弁護士等の専門家による確認が必要です。

参考リンク

この記事は、以下の公式資料等を参照して作成しています。