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令和六年法律第三十八号
二酸化炭素の貯留事業に関する法律

施行日:

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第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、世界的規模でエネルギーの脱炭素化に向けた取組等が進められる中で、エネルギー及び鉱物資源の利用による環境への負荷の程度を低減させることが重要となっていることに鑑み、二酸化炭素の貯留層における安定的な貯蔵を確保するための措置その他の貯留事業及び導管輸送事業の適正な運営を確保するための措置、これらの事業の用に供する工作物等についての保安に関する規制の措置等を講ずることにより、これらの事業の健全な発達及び海洋環境の保全を図り、並びに公共の安全を確保し、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「貯留層」とは、その内部及び周辺の地層の温度、圧力その他の性質が二酸化炭素(二酸化炭素がその大部分を占める流体を含む。以下同じ。)の安定的な貯蔵に適している地下の地層をいう。

2 この法律において「貯留事業」とは、二酸化炭素を貯留層に貯蔵する事業をいう。

3 この法律において「貯留区域」とは、貯留層の全部又は一部をその区域に含む地下の一定の範囲における立体的な区域であって、貯留事業の用に供するものをいう。

4 この法律において「試掘」とは、地下の地層が貯留層に該当するかどうかを調査するため、当該地層を掘削すること(当該地層を構成する砂岩その他の岩石を採取することを含み、当該地層における二酸化炭素の貯蔵を伴わないものに限る。)をいう。

5 この法律において「試掘区域」とは、地下の一定の範囲における立体的な区域であって、試掘の用に供するものをいう。

6 この法律において「貯留等工作物」とは、坑井、掘削用機械、圧送機、配管その他の工作物及びこれらの附属設備であって、貯留事業又は試掘の用に供するものをいう。

7 この法律において「貯留権」とは、貯留区域内の貯留層における貯留事業の用に供する貯留等工作物を当該貯留区域に設置し、及び運用し、並びに当該貯留層に二酸化炭素を貯蔵する権利をいう。

8 この法律において「試掘権」とは、試掘区域における試掘の用に供する貯留等工作物を当該試掘区域に設置し、及び運用し、並びに当該試掘区域において試掘を行う権利をいう。

9 この法律において「導管輸送事業」とは、二酸化炭素を貯留層(外国における貯留層に相当するものを含む。)に貯蔵することを目的として、導管により当該二酸化炭素を輸送する事業をいう。

10 この法律において「導管輸送工作物」とは、導管その他の工作物及びこれらの附属設備であって、導管輸送事業の用に供するものをいう。

第二章 貯留事業及び試掘

第一節 貯留事業及び試掘の許可

第一款 特定区域の指定並びに特定区域における貯留事業及び試掘の許可

(特定区域の指定)

第三条 経済産業大臣は、貯留層が存在し、又は存在する可能性がある区域について、当該貯留層における二酸化炭素の貯蔵により公共の利益の増進を図るためには、当該区域内の当該貯留層における貯留事業又は当該区域における試掘を最も適切に行うことができる者(以下「特定事業者」という。)を選定し、その特定事業者に当該区域における貯留事業又は試掘(以下「貯留事業等」という。)を行わせる必要があると認めるときは、当該区域を特定区域として指定することができる。

前項の規定による指定は、その指定の際現にある他の特定区域又は第五条第一項第四号に規定する許可貯留区域等(特定区域以外の区域に存するものに限る。)の直上の区域と重複していない区域に限ってするものとする。

経済産業大臣は、第一項の規定による指定(海域に係るものに限る。)をしようとするときは、あらかじめ、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。

経済産業大臣は、第一項の特定区域を指定したときは、特定区域ごとに、特定事業者の募集に係る実施要項(以下単に「実施要項」という。)を定めなければならない。

実施要項は、次に掲げる事項を定めるものとする。

特定区域の所在地

特定区域の面積

特定区域において行わせる貯留事業又は試掘の別

特定事業者の募集を開始する日及び募集の期間

特定事業者を選定するための評価の基準

その他経済産業省令で定める事項

前項第四号に規定する期間は、三月を下らない期間を定めるものとする。 ただし、経済産業省令で定める緊急を要する特別の事情があるときは、この限りでない。

第五項第五号に規定する評価の基準は、募集に係る特定区域における貯留事業等の適切な実施の確保その他の公共の利益の増進を図る見地から定めるものとする。

経済産業大臣は、第一項の規定により特定区域を指定し、又は第四項の規定により実施要項を定めたときは、遅滞なく、特定区域を表示する図面と併せてこれらを公示しなければならない。 これらを変更し、特定区域の指定を解除し、又は実施要項を廃止したときも、同様とする。

第二項及び第三項の規定は、特定区域の変更について準用する。

(貯留事業等の許可の申請)

第四条 前条第一項の規定により指定された特定区域(特定区域の変更があったときは、その変更後のもの。第十一条を除き、以下同じ。)において貯留事業等を行おうとする者は、当該特定区域に係る実施要項に従って、経済産業大臣に申請して、貯留事業については貯留区域ごとに、試掘については試掘区域ごとに、それぞれその許可を受けなければならない。

前項の規定による申請をしようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を、経済産業大臣に提出しなければならない。

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

当該申請に係る貯留区域又は試掘区域(以下この条、次条第一項及び第七条第二号において「申請貯留区域等」という。)

貯留事業等の開始の予定年月日

貯留事業等の概要

前項の申請書には、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる書類を添付しなければならない。

事業計画書

申請貯留区域等を表示する図面

申請貯留区域等の全部又は一部が、この法律又は他の法律によって土地を使用し、又は収用することができる事業の用に供されているときは、当該事業の用に供する者の意見書

申請貯留区域等の利用について法令の規定による制限があるときは、当該法令の施行について権限を有する行政機関の長の意見書

その他経済産業省令で定める書類

前項第二号の規定による申請貯留区域等の表示は、当該申請貯留区域等に係る土地又はこれに定着する物件に関して所有権その他の権利を有する者が、自己の権利に係る土地の地下が当該申請貯留区域等に含まれ、又は自己の権利に係る物件が当該申請貯留区域等若しくはその直上の区域にあることを容易に判断できるものでなければならない。

第三項第三号及び第四号に掲げる意見書は、貯留事業等を行おうとする者が意見を求めた日から三週間を経過してもこれを得ることができなかったときは、添付することを要しない。 この場合においては、意見書を得ることができなかった事情を疎明する書類を添付しなければならない。

(特定事業者の選定等)

第五条 経済産業大臣は、前条第二項の申請書を受理したときは、その申請に係る募集の期間の終了後遅滞なく、その申請が次に掲げる基準に適合しているかどうかを審査しなければならない。

申請者が、申請貯留区域等における貯留事業等を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。

申請者が次のいずれにも該当しないこと。

  この法律に規定する罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

  第十九条第三項の規定により貯留事業等の許可(前条第一項、第十条第一項又は第十二条第一項の許可をいう。以下同じ。)を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者

  貯留事業等の許可を受けた者(以下「貯留事業者等」という。)で法人であるものが第十九条第三項の規定により貯留事業等の許可を取り消された場合において、その取消しの日前三十日以内に当該貯留事業者等の役員であった者で、その取消しの日から五年を経過しないもの

  貯留事業者等で法人であるものが第十九条第三項の規定により貯留事業等の許可を取り消された場合において、その取消しの原因となった事実が発生した当時現に当該貯留事業者等の親会社等(その法人の経営を実質的に支配することが可能となる関係にある法人として政令で定めるものをいう。チ並びに第百八条第二号ニ及びチにおいて同じ。)であった法人で、その取消しの日から五年を経過しないもの

  暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第二条第六号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者(ト並びに第百八条第二号ホ及びトにおいて「暴力団員等」という。)

  法人であって、その業務を行う役員のうちにイからハまで又はホのいずれかに該当する者があるもの

  暴力団員等がその事業活動を支配する者

  法人であって、その者の親会社等がイ、ロ、ニ、ヘ又はトのいずれかに該当するもの

貯留事業に係る申請にあっては、その申請に係る貯留区域内の貯留層において、二酸化炭素の安定的な貯蔵が行われることが見込まれること。

申請貯留区域等が他人の許可貯留区域等(貯留事業等の許可に係る貯留区域又は試掘区域をいう。以下同じ。)と隣接する場合においては、当該申請貯留区域等における貯留事業等を行うことが当該他人の許可貯留区域等における貯留事業等の実施を著しく妨害するものでないこと。

申請貯留区域等の直上の区域が、他人の鉱区(鉱業法(昭和二十五年法律第二百八十九号)第五条に規定する鉱区をいう。以下同じ。)と重複し、又は隣接する場合においては、当該申請貯留区域等における貯留事業等を行うことが当該他人の鉱区における鉱業(同法第四条に規定する鉱業をいう。以下同じ。)の実施を著しく妨害するものでないこと。

申請貯留区域等における貯留事業等を行うことが、農業、漁業その他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反するものでないこと。

前各号に掲げるもののほか、申請貯留区域等における貯留事業等を行うことが内外の社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり、公共の利益の増進に支障を及ぼすおそれがあるものでないこと。

経済産業大臣は、前項の規定により審査した結果、その申請が同項各号に掲げる基準に適合していると認められるときは、第三条第五項第五号に規定する評価の基準に従って、その適合していると認められた全ての申請について評価を行うものとする。

経済産業大臣は、前条第一項の規定による申請(海域の貯留層における貯留事業に係るものに限る。)について前項の評価を行おうとするときは、その申請が第一項第一号(経理的基礎及び技術的能力に係る部分に限る。)及び第三号に掲げる基準に適合していることについて、あらかじめ、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。

経済産業大臣は、第二項の評価に従い、特定区域における貯留事業等を最も適切に行うことができると認められる者を選定し、その者に対し、前条第一項の許可をするものとする。

経済産業大臣は、前条第一項の許可をしたときは、当該許可を受けた者以外の者がした申請については、同項の許可を与えないこととし、遅滞なく、その旨及びその理由を、その者に通知するものとする。

(関係都道府県知事への協議等)

第六条 経済産業大臣は、第四条第一項の許可をしようとするときは、その申請に係る貯留事業等について関係のある都道府県知事に協議しなければならない。

経済産業大臣は、第四条第一項の許可をしようとする場合において、同条第五項の規定により意見書の添付がなかったときその他必要があると認めるときは、同条第三項第三号の事業の用に供する者又はその申請に係る貯留事業等について関係のある行政機関の長(前項に規定する都道府県知事を除く。)の意見を求めなければならない。 ただし、同号の事業の用に供する者については、その者を確知することができないときその他その意見を求めることができないときは、この限りでない。

第一項に規定する都道府県知事又は前項に規定する行政機関の長は、第四条第一項の許可について、経済産業大臣に対して意見を述べることができる。

(公告及び縦覧)

第七条 経済産業大臣は、第四条第一項の許可をしようとするときは、その申請に係る次に掲げる事項を公告し、公告の日から一月間これらの事項を公衆の縦覧に供しなければならない。

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

申請貯留区域等を表示する図面

貯留事業等の概要

その他経済産業省令で定める事項

(利害関係人の意見書の提出)

第八条 前条の規定による公告があったときは、第四条第一項の許可について利害関係を有する者は、前条の縦覧期間内に、経済産業大臣に意見書を提出することができる。

(試掘の許可の有効期間及び更新)

第九条 第四条第一項の許可(試掘に係るものに限る。)の有効期間は、当該許可の日から起算して四年とする。

前項に規定する許可の有効期間の満了後引き続き当該許可に係る試掘を行おうとする者は、有効期間の満了前に、経済産業省令で定めるところにより、当該許可の更新を受けなければならない。

前項の更新の申請をしようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を、経済産業大臣に提出しなければならない。

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

第一項に規定する許可に係る試掘区域

試掘を開始した年月日

試掘の概要

経済産業大臣は、第二項の更新の申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、その更新をしてはならない。

誠実に試掘をした事実又はやむを得ない理由により試掘の事業に着手していない場合には当該事業の準備をした事実が明らかであると認めるとき。

試掘区域内の地下の地層が貯留層に該当するかどうかを調査するため更に試掘を継続する必要があると認めるとき。

第四条第三項から第五項までの規定は第三項の申請書並びに当該申請書に係る試掘及び試掘区域について、第六条から前条までの規定は第二項の更新並びに当該更新に係る試掘及び試掘区域について、それぞれ準用する。

第二項の規定によりその更新を受けた場合における第一項に規定する許可の有効期間は、当該更新前の許可の有効期間が満了する日の翌日から起算して二年を経過する日までの期間とする。

(試掘の許可を受けた者による貯留事業の許可の申請)

第十条 第四条第一項の許可(試掘に係るものに限る。)を受けた者は、その試掘区域における試掘の状況を踏まえ、当該試掘区域内の貯留層における貯留事業を行おうとするときは、経済産業大臣に申請して、貯留区域ごとに、その許可を受けなければならない。

前項の規定による申請をしようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を、経済産業大臣に提出しなければならない。

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

当該申請に係る貯留区域(次項及び第五項において「申請貯留区域」という。)

貯留事業の開始の予定年月日

貯留事業の概要

経済産業大臣は、第一項の規定による申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、その申請を許可してはならない。

申請者が、申請貯留区域内の貯留層における貯留事業を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。

申請者が第五条第一項第二号イからチまでのいずれにも該当しないこと。

申請貯留区域がなお試掘を要するものでないこと。

申請貯留区域内の貯留層において、二酸化炭素の安定的な貯蔵が行われることが見込まれること。

申請貯留区域が他人の許可貯留区域等と隣接する場合においては、当該申請貯留区域内の貯留層における貯留事業を行うことが当該他人の許可貯留区域等における貯留事業等の実施を著しく妨害するものでないこと。

申請貯留区域の直上の区域が、他人の鉱区と重複し、又は隣接する場合においては、当該申請貯留区域内の貯留層における貯留事業を行うことが当該他人の鉱区における鉱業の実施を著しく妨害するものでないこと。

申請貯留区域内の貯留層における貯留事業を行うことが、農業、漁業その他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反するものでないこと。

前各号に掲げるもののほか、申請貯留区域内の貯留層における貯留事業を行うことが内外の社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり、公共の利益の増進に支障を及ぼすおそれがあるものでないこと。

経済産業大臣は、第一項の規定による申請(海域の貯留層における貯留事業に係るものに限る。)について同項の許可をしようとするときは、その申請が前項第一号(経理的基礎及び技術的能力に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる基準に適合していることについて、あらかじめ、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。

第四条第三項から第五項までの規定は第二項の申請書並びに当該申請書に係る貯留事業及び申請貯留区域について、第六条から第八条までの規定は第一項の許可並びに当該許可に係る貯留事業及び申請貯留区域について、それぞれ準用する。

(特定区域の指定及び変更の提案)

第十一条 特定区域以外の区域において貯留事業等を行おうとする者は、当該区域に貯留層が存在し、又は存在する可能性があると思料するときは、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣に対し、当該区域を特定区域として指定し、又は特定区域を変更することを提案することができる。

経済産業大臣は、前項の規定による提案が行われた場合において、当該提案に係る区域について特定区域として指定をしないこととしたとき、又は当該提案に係る特定区域の変更をしないこととしたときは、遅滞なく、その旨及びその理由を、当該提案をした者に通知するものとする。

第二款 特定区域以外の区域における貯留事業及び試掘の許可

第十二条 鉱物(鉱業法第三条第一項に規定する鉱物をいう。次条第一項において同じ。)のうち石油、可燃性天然ガスその他の政令で定めるものについて同法第二十一条第一項、第四十条第三項若しくは第七項又は第四十一条第一項の規定により採掘権の設定を受けた者は、その鉱区であって特定区域以外の区域に存するものにおいて貯留事業等を行おうとするときは、経済産業大臣に申請して、貯留事業については貯留区域ごとに、試掘については試掘区域ごとに、それぞれその許可を受けることができる。

前項の規定による申請をしようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を、経済産業大臣に提出しなければならない。

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

当該申請に係る貯留区域又は試掘区域(以下この条において「申請貯留区域等」という。)

申請貯留区域等において行おうとする貯留事業又は試掘の別

貯留事業等の開始の予定年月日

貯留事業等の概要

経済産業大臣は、第一項の規定による申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、その申請を許可してはならない。

申請貯留区域等において貯留層が存在し、又は存在する可能性があり、かつ、公共の利益の増進を図るためには、当該申請貯留区域等における貯留事業等を行わせる必要があると認められること。

申請者が、申請貯留区域等における貯留事業等を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。

申請者が第五条第一項第二号イからチまでのいずれにも該当しないこと。

貯留事業に係る申請にあっては、その申請に係る貯留区域内の貯留層において、二酸化炭素の安定的な貯蔵が行われることが見込まれること。

申請貯留区域等が他人の許可貯留区域等と隣接する場合においては、当該申請貯留区域等における貯留事業等を行うことが当該他人の許可貯留区域等における貯留事業等の実施を著しく妨害するものでないこと。

申請貯留区域等の直上の区域が、他人の鉱区と重複し、又は隣接する場合においては、当該申請貯留区域等における貯留事業等を行うことが当該他人の鉱区における鉱業の実施を著しく妨害するものでないこと。

申請貯留区域等における貯留事業等を行うことが、農業、漁業その他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反するものでないこと。

前各号に掲げるもののほか、申請貯留区域等における貯留事業等を行うことが内外の社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり、公共の利益の増進に支障を及ぼすおそれがあるものでないこと。

経済産業大臣は、第一項の規定による申請(海域の貯留層における貯留事業に係るものに限る。)について同項の許可をしようとするときは、その申請が前項第二号(経理的基礎及び技術的能力に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる基準に適合していることについて、あらかじめ、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。

第四条第三項から第五項までの規定は第二項の申請書及び当該申請書に係る申請貯留区域等について、第六条から第八条までの規定は第一項の許可及び当該許可に係る申請貯留区域等について、それぞれ準用する。

第九条(第五項を除く。)の規定は第一項の許可(試掘に係るものに限る。)について、第四条第三項から第五項までの規定はこの項において準用する第九条第三項の申請書並びに当該申請書に係る試掘及び試掘区域について、第六条から第八条までの規定はこの項において準用する第九条第二項の更新並びに当該更新に係る試掘及び試掘区域について、それぞれ準用する。

第三款 禁止規定

第十三条 貯留事業の許可(第四条第一項若しくは前条第一項の許可(貯留事業に係るものに限る。)又は第十条第一項の許可をいう。以下同じ。)を受けた者(以下「貯留事業者」という。)でなければ、貯留層における二酸化炭素の貯蔵を行ってはならない。 ただし、鉱物の掘採に伴うものその他の経済産業省令で定める二酸化炭素の貯蔵については、この限りでない。

試掘の許可(第四条第一項又は前条第一項の許可(試掘に係るものに限る。)をいう。以下同じ。)を受けた者(以下「試掘者」という。)でなければ、試掘を行ってはならない。

第四款 許可貯留区域等の増減等

(許可貯留区域等の増減の許可の申請)

第十四条 貯留事業者等は、その許可貯留区域等の増減をしようとするときは、経済産業大臣に申請して、その許可を受けなければならない。

前項の規定による申請をしようとする貯留事業者等は、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を、経済産業大臣に提出しなければならない。

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

当該申請に係る増減をしようとする許可貯留区域(貯留事業の許可に係る貯留区域をいう。以下同じ。)又は許可試掘区域(試掘の許可に係る試掘区域をいう。以下同じ。)

当該申請に係る増減後の貯留区域又は試掘区域(次項において「申請貯留区域等」という。)

貯留事業等の概要

第四条第三項から第五項まで(許可貯留区域等の減少に係る申請にあっては、第三項第三号及び第四号並びに第五項を除く。)の規定は前項の申請書並びに当該申請書に係る許可貯留区域等の増減及び申請貯留区域等について、第六条から第八条までの規定は第一項の許可(許可貯留区域等の増加に係るものに限る。)及び当該許可に係る申請貯留区域等について、第十二条第三項(第一号及び第三号を除き、許可貯留区域等の減少に係る申請にあっては、第二号及び第四号に限る。)の規定は第一項の規定による申請及び当該申請に係る申請貯留区域等について、それぞれ準用する。

経済産業大臣は、第一項の規定による申請(海域の貯留層における貯留事業に係るものに限る。)について同項の許可をしようとするときは、その申請が前項において準用する第十二条第三項第二号(経理的基礎及び技術的能力に係る部分に限る。)及び第四号に掲げる基準に適合していることについて、あらかじめ、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。

第一項の規定による申請(抵当権の設定が登録されている貯留権に係る許可貯留区域の減少に係るものに限る。)は、あらかじめ抵当権者の承諾を得なければすることができない。

(許可貯留区域の増減命令)

第十五条 経済産業大臣は、二酸化炭素の貯蔵の状況その他の事情を勘案して、貯留事業者の許可貯留区域を変更しなければ当該許可貯留区域内の貯留層における二酸化炭素の安定的な貯蔵ができないと認めるときその他貯留事業の適切な実施を確保するため必要があると認めるときは、当該貯留事業者に対し、前条第一項の規定による許可貯留区域の増減の申請をすべきことを命ずることができる。

(許可貯留区域の分割及び合併の許可の申請)

第十六条 貯留事業者は、その許可貯留区域の分割又は合併をしようとするときは、経済産業大臣に申請して、その許可を受けなければならない。

前項の規定による申請をしようとする貯留事業者は、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書を、経済産業大臣に提出しなければならない。

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

当該申請に係る分割又は合併をしようとする許可貯留区域

当該申請に係る分割後又は合併後の貯留区域

貯留事業の概要

前項の申請書には、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる書類を添付しなければならない。

事業計画書

前項第三号に掲げる貯留区域を表示する図面

その他経済産業省令で定める書類

経済産業大臣は、第一項の規定による申請に係る分割後又は合併後の貯留区域内の貯留層における貯留事業が安定的に遂行されると見込まれるときでなければ、その申請を許可してはならない。

第一項の規定による申請(抵当権の設定が登録されている貯留権に係る許可貯留区域に係るものに限る。)は、あらかじめ抵当権者の承諾及び抵当権の順位に関する協定を経なければすることができない。

(貯留事業等の譲渡及び譲受けの認可等)

第十七条 貯留事業者等が一の許可貯留区域等における貯留事業等の全部の譲渡を行う場合において、譲渡人及び譲受人があらかじめ当該譲渡及び譲受けについて経済産業省令で定めるところにより経済産業大臣の認可を受けたときは、譲受人は、貯留事業者等の地位を承継する。

貯留事業者等である法人の合併の場合(貯留事業者等である法人と貯留事業者等でない法人が合併する場合において、貯留事業者等である法人が存続するときを除く。)又は分割の場合(当該一の許可貯留区域等における貯留事業等の全部を承継させる場合に限る。)において、あらかじめ当該合併又は分割について経済産業省令で定めるところにより経済産業大臣の認可を受けたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該一の許可貯留区域等における貯留事業等の全部を承継した法人は、貯留事業者等の地位を承継する。

経済産業大臣は、前二項の認可の申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、これらの認可をしてはならない。

当該一の許可貯留区域等における貯留事業等の全部を譲り受ける者又は合併後存続する法人若しくは合併により設立される法人若しくは分割により当該一の許可貯留区域等における貯留事業等の全部を承継する法人(以下この条において「譲受人等」という。)が、当該一の許可貯留区域等における貯留事業等を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。

譲受人等が第五条第一項第二号イからチまでのいずれにも該当しないこと。

貯留事業の譲渡又は貯留事業者である法人の合併若しくは分割に係る申請にあっては、当該一の許可貯留区域内の貯留層において、二酸化炭素の安定的な貯蔵が行われることが見込まれること。

前三号に掲げるもののほか、譲受人等が当該一の許可貯留区域等における貯留事業等を行うことが内外の社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり、公共の利益の増進に支障を及ぼすおそれがあるものでないこと。

経済産業大臣は、第一項又は第二項の認可(海域の貯留層における貯留事業に係るものに限る。)をしようとするときは、その申請が前項第一号(経理的基礎及び技術的能力に係る部分に限る。)及び第三号に掲げる基準に適合していることについて、あらかじめ、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。

(貯留事業者等の相続)

第十八条 貯留事業者等について相続があったときは、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により当該貯留事業者等が行っていた貯留事業等を承継すべき相続人を選定したときは、その者。以下この条において同じ。)は、貯留事業者等の地位を承継する。

前項の規定により貯留事業者等の地位を承継した相続人は、経済産業省令で定めるところにより、被相続人の死亡後三月以内にその旨を経済産業大臣に届け出なければならない。

経済産業大臣は、前項の規定による届出が、次の各号に掲げる基準のいずれにも適合すると認めるときは、その旨をその届出をした者に通知し、いずれかに適合しないと認めるときは、貯留事業者等である相続人が行う全ての許可貯留区域等における貯留事業等(第一号及び第四号並びに次条第三項第五号において「相続貯留事業等」という。)を、その譲渡をするために通常必要と認められる期間として経済産業省令で定める期間内に譲渡すべき旨をその届出をした者に通知しなければならない。

相続人が、相続貯留事業等を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有し、かつ、十分な社会的信用を有すること。

相続人が第五条第一項第二号イからハまで又はホのいずれにも該当しないこと。

相続人が貯留事業者の地位を承継した場合にあっては、その許可貯留区域内の貯留層において、二酸化炭素の安定的な貯蔵が行われることが見込まれること。

前三号に掲げるもののほか、相続人が相続貯留事業等を行うことが内外の社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり、公共の利益の増進に支障を及ぼすおそれがあるものでないこと。

経済産業大臣は、前項各号に掲げる基準のいずれにも適合する旨の通知(海域の貯留層における貯留事業に係るものに限る。)をしようとするときは、第二項の規定による届出が前項第一号(経理的基礎及び技術的能力に係る部分に限る。)及び第三号に掲げる基準に適合していることについて、あらかじめ、環境大臣に協議し、その同意を得なければならない。

(貯留事業等の許可の取消し等)

第十九条 経済産業大臣は、貯留事業者等が行う貯留事業等が、農業、漁業その他の産業の利益を損じ、著しく公共の福祉に反するようになったと認めるときは、当該貯留事業等に係る許可貯留区域等のその部分について減少の処分をし、又は貯留事業等の許可を取り消さなければならない。

経済産業大臣は、貯留事業者等が行う貯留事業等が、他人が行う貯留事業等又は鉱業を著しく妨害するに至った場合において、他にその妨害を排除する方法がないと認めるときは、当該貯留事業者等が行う貯留事業等に係る許可貯留区域等のその部分について減少の処分をし、又は貯留事業等の許可を取り消すことができる。

経済産業大臣は、貯留事業者等が次の各号のいずれかに該当するときは、貯留事業等の許可を取り消すことができる。

偽りその他不正の手段により貯留事業等の許可又は試掘の許可の更新を受けたとき。

第五条第一項第一号、第十条第三項第一号又は第十二条第三項第二号(第十四条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる基準(経理的基礎及び技術的能力に係る部分に限る。)のいずれかに適合しなくなったとき。

第五条第一項第二号イからチまでのいずれかに該当するに至ったとき。

前条第二項の規定による届出をしなかったとき。

前条第三項の経済産業省令で定める期間内に相続貯留事業等の譲渡がされないとき。

第三十七条第一項、同条第二項(第五十八条第三項において準用する場合を含む。)若しくは第五十八条第一項の規定に違反して貯留事業等の事業に着手しないとき、又は第三十七条第五項(第五十八条第三項において準用する場合を含む。)の規定に違反して引き続き一年以上休業したとき。

第四十二条又は第六十三条の規定による命令に違反したとき。

第百三十条第一項の規定により貯留事業等の許可に付された条件に違反したとき。

環境大臣は、海域の貯留層における貯留事業を行う貯留事業者が第五条第一項第一号、第十条第三項第一号若しくは第十二条第三項第二号(第十四条第三項において準用する場合を含む。)に掲げる基準(経理的基礎及び技術的能力に係る部分に限る。)のいずれかに適合しなくなったと認めるとき、又は第四十二条の規定による命令に違反したと認めるときは、経済産業大臣に対し、前項の規定による貯留事業の許可の取消しを求めることができる。

(損失の補償)

第二十条 国は、前条第一項の規定による許可貯留区域等の減少の処分又は貯留事業等の許可の取消しによって損失を受けた貯留事業者等又は貯留事業者等であった者(以下この条において「損失を受けた者」という。)に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

前項の規定による損失の補償については、国と損失を受けた者とが協議しなければならない。

前項の規定による協議が成立しない場合においては、国は、自己の見積もった金額を損失を受けた者に支払わなければならない。

前項の補償金額に不服がある損失を受けた者は、その決定の通知を受けた日から六月以内に、訴えをもって、その増額を請求することができる。

前項の訴えにおいては、国を被告とする。

前条第一項の規定による許可貯留区域の減少の処分又は貯留事業の許可の取消しに係る貯留権の上に抵当権があるときは、当該抵当権に係る抵当権者から供託をしなくてもよい旨の申出がある場合を除き、国は、その補償金を供託しなければならない。

前項の抵当権者は、同項の規定により供託した補償金に対してその権利を行うことができる。

国は、第一項の規定による補償金額の全部又は一部をその理由を生じさせた者に負担させることができる。

(許可貯留区域の減少の処分等と抵当権)

第二十一条 経済産業大臣は、第十九条第一項若しくは第二項の規定により抵当権の設定が登録されている貯留権に係る許可貯留区域の減少の処分をしようとするとき、又は同条第一項から第三項までの規定により抵当権の設定が登録されている貯留権に係る貯留事業の許可を取り消そうとするときは、あらかじめ、その旨を当該抵当権に係る抵当権者に通知しなければならない。

(貯留開始貯留事業の許可の取消し等に伴う措置)

第二十二条 貯留事業者であって、その許可貯留区域内の貯留層への二酸化炭素の注入を開始している貯留事業(以下「貯留開始貯留事業」という。)を行っているもの(以下「貯留開始貯留事業者」という。)が貯留開始貯留事業の許可の取消し(第十九条第一項から第三項までの規定による貯留事業の許可(貯留開始貯留事業に係るものに限る。)の取消しをいう。以下この条において同じ。)を受けたとき、又は貯留開始貯留事業者が解散し、若しくは死亡した場合において第十七条第一項若しくは第二項若しくは第十八条第一項の規定による承継がなかったときは、旧貯留開始貯留事業者(貯留開始貯留事業の許可の取消しを受けた貯留開始貯留事業者であった者又は貯留開始貯留事業者が解散し、若しくは死亡した場合において第十七条第一項若しくは第二項若しくは第十八条第一項の規定による承継がなかったときの清算人若しくは破産管財人若しくは相続人に代わって相続財産を管理する者をいう。以下この条において同じ。)は、その貯留開始貯留事業に対するこの法律の規定(第五十三条第一項から第三項までの規定(これらの規定に係る罰則を含む。)を除く。)の適用については、第五十三条第五項の許可を受けるまでの間は、なお貯留開始貯留事業者とみなす。 この場合において、同条第四項中「閉鎖措置」とあるのは「特定閉鎖措置(第二十二条第三項に規定する特定閉鎖措置をいう。次項において同じ。)」と、同条第五項中「閉鎖措置」とあるのは「特定閉鎖措置」と、「以後」とあるのは「以後、遅滞なく」とする。

貯留開始貯留事業の許可の取消しがあったとき、又は貯留開始貯留事業者が解散し、若しくは死亡した場合において第十七条第一項若しくは第二項若しくは第十八条第一項の規定による承継がなかったときは、旧貯留開始貯留事業者は、直ちに、その取り消された許可又はその解散し、若しくは死亡した貯留開始貯留事業者が行っていた貯留開始貯留事業に係る許可貯留区域内の貯留層への二酸化炭素の注入を停止しなければならない。

旧貯留開始貯留事業者は、前項の規定により同項に規定する許可貯留区域内の貯留層への二酸化炭素の注入を停止したときは、主務省令で定めるところにより、当該許可貯留区域及び当該許可貯留区域に係る貯留事業の用に供する貯留等工作物を設置する場所についての坑口の閉塞その他の主務省令で定める措置(以下この条において「特定閉鎖措置」という。)に関する計画(以下この条において「特定閉鎖措置計画」という。)を定め、貯留開始貯留事業の許可の取消しを受けた日又は貯留開始貯留事業者の解散若しくは死亡の日から主務省令で定める期間内に主務大臣に認可の申請をしなければならない。

旧貯留開始貯留事業者は、前項の認可を受けるまでの間は、特定閉鎖措置を講じてはならない。

旧貯留開始貯留事業者は、第三項の認可を受けた特定閉鎖措置計画を変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、主務大臣の認可を受けなければならない。 ただし、主務省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない。

主務大臣は、第三項又は前項の認可の申請に係る特定閉鎖措置計画が主務省令で定める基準に適合していると認めるときは、第三項又は前項の認可をしなければならない。

旧貯留開始貯留事業者は、第三項の認可を受けた特定閉鎖措置計画について第五項ただし書の主務省令で定める軽微な変更をしたときは、その旨を主務大臣に届け出なければならない。

旧貯留開始貯留事業者は、第三項の認可を受けた特定閉鎖措置計画(第五項又は前項の規定による変更の認可又は届出があったときは、その変更後のもの)に従って特定閉鎖措置を講じなければならない。

主務大臣は、前項の規定に違反して特定閉鎖措置を講じた旧貯留開始貯留事業者に対し、当該特定閉鎖措置に係る許可貯留区域内の貯留層における二酸化炭素の安定的な貯蔵の確保又は公共の安全の維持若しくは災害の発生の防止のために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

(貯留開始貯留事業以外の貯留事業等に係る許可の取消し等に伴う措置)

第二十三条 第十九条第一項から第三項までの規定による貯留事業等の許可の取消し(貯留開始貯留事業に係るものを除く。)があったとき、貯留事業者等(貯留開始貯留事業以外の貯留事業又は試掘を行っている者に限る。以下この項において同じ。)が解散し、若しくは死亡した場合において第十七条第一項若しくは第二項若しくは第十八条第一項の規定による承継がなかったとき、又は試掘の許可の有効期間が満了したときは、その許可の取消しを受けた貯留事業者等であった者、貯留事業者等が解散し、若しくは死亡した場合において第十七条第一項若しくは第二項若しくは第十八条第一項の規定による承継がなかったときの清算人若しくは破産管財人若しくは相続人に代わって相続財産を管理する者又はその有効期間が満了した試掘の許可に係る試掘者であった者は、遅滞なく、その取り消された許可、その解散し、若しくは死亡した貯留事業者等が行っていた貯留開始貯留事業以外の貯留事業若しくは試掘又はその有効期間が満了した試掘の許可に係る許可貯留区域等及び当該許可貯留区域等に係る貯留事業等の用に供する貯留等工作物を設置する場所についての坑口の閉塞その他の経済産業省令で定める措置を講じなければならない。

経済産業大臣は、前項の規定に違反した者に対し、同項に規定する措置の円滑かつ着実な実施又は公共の安全の維持若しくは災害の発生の防止のために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

第二節 貯留権及び試掘権

第一款 貯留権及び試掘権の設定等

(貯留事業等の許可の告示)

第二十四条 経済産業大臣は、貯留事業等の許可をしたときは、遅滞なく、その旨及び次に掲げる事項を当該許可に係る貯留事業者等に通知するとともに、告示しなければならない。

当該貯留事業者等の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

許可貯留区域等

当該許可に係る貯留事業又は試掘の別

貯留事業等の概要

試掘の許可にあっては、当該許可の有効期間が満了する日

(貯留権等の設定とその効果)

第二十五条 前条の規定による告示があったときは、当該告示に係る許可貯留区域等に係る貯留権等(貯留権又は試掘権をいう。以下同じ。)が設定され、当該許可貯留区域等に係る土地に関するその他の権利は、当該貯留権等に係る貯留事業者等が当該許可貯留区域等において行う二酸化炭素の貯蔵若しくは試掘を妨げ、又は当該貯蔵若しくは試掘に支障を及ぼす限度においてその行使を制限される。

前項の規定により試掘権が設定された場合における同項の規定により土地に関するその他の権利がその行使を制限される期間は、前条の規定による告示の日から当該試掘権に係る試掘の許可の有効期間が満了する日までの期間に限るものとする。

(損失の補償)

第二十六条 前条第一項の規定による権利の行使の制限によって具体的な損失が生じたときは、当該損失を受けた者は、第二十四条の規定による告示の日から一年以内に限り、貯留事業者等に対し、その損失の補償を請求することができる。

前項の規定による損失の補償は、貯留事業者等と損失を受けた者とが協議して定めなければならない。

前項の規定による協議が成立しないときは、土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項から第十二項までの規定を準用する。 この場合において、同条第二項中「起業者」とあるのは「貯留事業者等(二酸化炭素の貯留事業に関する法律第五条第一項第二号ハに規定する貯留事業者等をいう。第六項において同じ。)」と、同条第六項中「起業者である者」とあるのは「貯留事業者等である者」と、同条第七項中「この法律」とあるのは「二酸化炭素の貯留事業に関する法律」と読み替えるものとする。

前項において準用する土地収用法第九十四条第二項又は第九項の規定による裁決の申請又は訴えの提起は、貯留事業者等が行う許可貯留区域等における貯留事業等を停止しない。

(図面の縦覧)

第二十七条 経済産業大臣は、第二十四条の規定による告示をしたときは、直ちに、経済産業省令で定めるところにより、許可貯留区域等を表示する図面を公衆の縦覧に供しなければならない。

(試掘権の消滅)

第二十八条 試掘権は、試掘の許可の有効期間が満了した時に消滅する。

(試掘の許可の更新の告示及び試掘権の変更等)

第二十九条 経済産業大臣は、第九条第二項(第十二条第六項において準用する場合を含む。)の規定による試掘の許可の更新をしたときは、遅滞なく、その旨及び次に掲げる事項を当該更新を受けた者に通知するとともに、告示しなければならない。

試掘の許可の更新を受けた者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

許可試掘区域

試掘の概要

試掘の許可の有効期間が満了する日

前項の規定による告示があったときは、当該告示に係る許可試掘区域に係る試掘権が変更され、当該許可試掘区域に係る土地に関するその他の権利は、当該試掘権に係る試掘の許可の更新を受けた者が当該許可試掘区域において行う試掘を妨げ、又は当該試掘に支障を及ぼす限度においてその行使を制限される。

前項の規定により試掘権が変更された場合における同項の規定により土地に関するその他の権利がその行使を制限される期間は、第一項の規定による告示の日から当該試掘権に係る試掘の許可の有効期間が満了する日までの期間に限るものとする。

第二十六条及び第二十七条の規定は、第一項の規定による告示及び当該告示に係る試掘の許可の更新を受けた者について準用する。 この場合において、第二十六条第四項中「許可貯留区域等」とあるのは「許可試掘区域」と、「貯留事業等」とあるのは「試掘」と、第二十七条中「許可貯留区域等」とあるのは「許可試掘区域」と読み替えるものとする。

(許可貯留区域等の増減の許可等の告示及び貯留権等の変更等)

第三十条 経済産業大臣は、第十四条第一項若しくは第十六条第一項の許可をしたとき、又は第十九条第一項若しくは第二項の規定による許可貯留区域等の減少の処分をしたときは、遅滞なく、その旨及び次に掲げる事項を当該許可又は処分を受けた者に通知するとともに、告示しなければならない。

貯留事業者等の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

当該許可又は処分により変更された許可貯留区域等

貯留事業等の概要

当該許可又は処分を受けた者が試掘者である場合にあっては、当該試掘者に係る試掘の許可の有効期間が満了する日

前項の規定による告示があったときは、当該告示に係る許可貯留区域等に係る貯留権等が変更され、当該許可貯留区域等に係る土地に関するその他の権利は、当該貯留権等に係る貯留事業者等が当該許可貯留区域等において行う二酸化炭素の貯蔵若しくは試掘を妨げ、又は当該貯蔵若しくは試掘に支障を及ぼす限度においてその行使を制限される。

前項の規定により試掘権が変更された場合における同項の規定により土地に関するその他の権利がその行使を制限される期間は、第一項の規定による告示の日から当該試掘権に係る試掘の許可の有効期間が満了する日までの期間に限るものとする。

第二十六条の規定は第一項の規定による告示(許可貯留区域等の増加に係るものに限る。)について、第二十七条の規定は同項の規定による告示について、それぞれ準用する。 この場合において、第二十六条第一項中「具体的な損失」とあるのは、「具体的な損失(許可貯留区域等の増加によるものに限る。)」と読み替えるものとする。

(貯留事業等の譲渡及び譲受けの認可等の告示並びに貯留権等の移転等)

第三十一条 経済産業大臣は、第十七条第一項若しくは第二項の認可をしたとき、又は第十八条第三項の規定により同項各号に掲げる基準のいずれにも適合する旨の通知をしたときは、遅滞なく、その旨及び次に掲げる事項を告示しなければならない。

貯留事業者等の地位を承継した者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

承継された許可貯留区域等

承継された貯留事業等の概要

貯留事業者等の地位を承継した者に移転した貯留権等の種類

試掘権が移転した場合にあっては、当該試掘権に係る試掘の許可の有効期間が満了する日

第二十七条の規定は、前項の規定による告示について準用する。

(貯留事業等の許可の取消しの告示及び貯留権等の消滅)

第三十二条 経済産業大臣は、第十九条第一項から第三項までの規定により貯留事業等の許可(貯留開始貯留事業に係るものを除く。)を取り消したときは、遅滞なく、その旨及び次に掲げる事項を当該許可を取り消された者に通知するとともに、告示しなければならない。

当該許可を取り消された者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

当該許可の取消しに係る許可貯留区域等

当該許可の取消しに係る貯留事業等に係る貯留権等が消滅する旨

前項の規定による告示があったときは、当該告示に係る貯留権等は、消滅する。

第二款 貯留権及び試掘権の性質等

(性質)

第三十三条 貯留権等は、物権とみなし、この法律に別段の定めがある場合を除き、不動産に関する規定を準用する。

(権利の目的)

第三十四条 貯留権等は、相続その他の一般承継、譲渡、滞納処分、強制執行、仮差押え及び仮処分の目的となるほか、権利の目的となることができない。 ただし、貯留権にあっては、抵当権の目的となることができる。

(処分の制限等)

第三十五条 貯留権等は、第十七条第一項又は第二項の認可を受けなければ、移転(相続によるものを除く。)をすることができない。

貯留開始貯留事業者は、貯留開始貯留事業に係る貯留権を放棄することができない。

貯留事業者等は、その貯留権等(貯留権にあっては、貯留開始貯留事業以外の貯留事業に係るものに限る。)を放棄したときは、経済産業省令で定めるところにより、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。

経済産業大臣は、前項の規定による届出があったときは、遅滞なく、その旨及び次に掲げる事項を告示しなければならない。

当該届出をした貯留事業者等の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

当該届出に係る貯留権等が消滅する旨

当該届出に係る貯留権等に係る許可貯留区域等

前項の規定による告示があったときは、当該告示に係る貯留権等は、消滅する。

貯留開始貯留事業以外の貯留事業に係る貯留権であって、抵当権の設定が登録されているものについては、その抵当権者の同意がなければ、これを放棄することができない。

第十七条第一項若しくは第二項の認可を受けないでした貯留権等の移転又は前項の同意を得ないでした貯留権の放棄は、その効力を生じない。

第三項の規定による届出があった場合において、当該届出が貯留権に係るものであるときは当該貯留権に係る許可貯留区域における貯留事業について第五十七条第一項の規定による届出があったものと、当該届出が試掘権に係るものであるときは当該試掘権に係る許可試掘区域における試掘について第六十四条第二項において準用する第五十七条第一項の規定による届出があったものとみなす。

(貯留権等の登録)

第三十六条 貯留権等及び貯留権を目的とする抵当権の設定、移転、変更、消滅及び処分の制限は、貯留権等登録簿に登録する。

前項の規定による登録は、登記に代わるものとする。

第一項の規定による登録に関する処分については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二章及び第三章の規定は、適用しない。

貯留権等登録簿については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない。

貯留権等登録簿に記録されている保有個人情報(個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第六十条第一項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第五章第四節の規定は、適用しない。

前各項に規定するもののほか、登録に関し必要な事項は、政令で定める。

第三節 貯留事業及び試掘の実施

第三款 試掘の実施等

(事業着手の義務等)

第五十八条 試掘者は、試掘の事業に着手するために通常必要と認められる期間として経済産業省令で定める期間内に、試掘の事業に着手しなければならない。

試掘者は、試掘の事業に着手したときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。

第三十七条第二項、第五項及び第六項の規定は、試掘者による試掘の事業について準用する。 この場合において、同条第二項中「前項」とあるのは、「第五十八条第一項」と読み替えるものとする。

(試掘実施計画)

第五十九条 試掘者は、許可試掘区域ごとに、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した試掘実施計画を定め、試掘の事業を開始する前に、経済産業大臣の認可を受けなければならない。

許可試掘区域

試掘の方法に関する事項

試掘場(許可試掘区域及び当該許可試掘区域に係る試掘の用に供する貯留等工作物を設置する場所をいう。以下同じ。)における保安を確保するための措置に関する事項

試掘の適切な実施を確保するための措置に関する事項その他の経済産業省令で定める事項

経済産業大臣は、前項の認可の申請に係る試掘実施計画が次に掲げる基準に適合していると認めるときは、同項の認可をしなければならない。

試掘の方法が適切であること。

試掘場における保安を確保するための措置が、公共の安全の維持及び災害の発生の防止の観点から適切であること。

その他試掘が適切に実施されることが見込まれること。

(試掘実施計画の変更の認可等)

第六十条 試掘者は、前条第一項の認可を受けた試掘実施計画を変更しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の認可を受けなければならない。 ただし、経済産業省令で定める軽微な変更をしようとするときは、この限りでない。

試掘者は、前条第一項の認可を受けた試掘実施計画について前項ただし書の経済産業省令で定める軽微な変更をしたときは、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。

前条第二項の規定は、第一項の規定による変更の認可について準用する。

(試掘実施計画の遵守)

第六十一条 試掘者は、第五十九条第一項の認可を受けた試掘実施計画(前条第一項又は第二項の規定による変更の認可又は届出があったときは、その変更後のもの。以下「認可試掘実施計画」という。)によらなければ、試掘を行ってはならない。

(認可試掘実施計画の変更勧告等)

第六十二条 経済産業大臣は、試掘者の認可試掘実施計画を変更しなければその許可試掘区域における試掘の適切な実施又は試掘場における保安を確保することができないと認めるときは、当該試掘者に対し、認可試掘実施計画を変更すべきことを勧告することができる。

経済産業大臣は、前項の規定による勧告を受けた試掘者が、正当な理由がなくてその勧告に従わないときは、当該試掘者に対し、認可試掘実施計画を変更すべきことを命ずることができる。

(試掘停止命令)

第六十三条 経済産業大臣は、試掘者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該試掘者に対し、期間を定めて当該試掘の全部又は一部の停止を命ずることができる。

第六十一条の規定に違反して、認可試掘実施計画によらないで試掘を行ったとき。

前条第二項、第六十六条第三項、第六十七条第二項若しくは第三項、第六十八条第二項、第六十九条第四項、第七十三条、第七十四条第三項若しくは第七十五条第五項の規定による命令又は第六十七条第二項若しくは第三項の規定による制限に違反したとき。

第百三十条第一項の規定により試掘の許可又は第五十九条第一項の認可若しくは第六十条第一項の規定による変更の認可に付された条件に違反したとき。

(定期の報告等に係る規定の準用)

第六十四条 第四十九条の規定は、試掘者の認可試掘実施計画の実施状況について準用する。 この場合において、同条中「主務省令」とあるのは「経済産業省令」と、「主務大臣」とあるのは「経済産業大臣」と読み替えるものとする。

第五十七条第一項から第三項までの規定は、試掘者の許可試掘区域における試掘について準用する。 この場合において、同条第二項第二号及び第三項中「貯留権」とあるのは、「試掘権」と読み替えるものとする。

第二十三条の規定は、試掘者が前項において準用する第五十七条第一項の規定による届出をしたときについて準用する。 この場合において、第二十三条第一項中「その取り消された許可、その解散し、若しくは死亡した貯留事業者等が行っていた貯留開始貯留事業以外の貯留事業若しくは試掘又はその有効期間が満了した試掘の許可」とあるのは「第六十四条第二項において準用する第五十七条第一項の規定による届出」と、「許可貯留区域等」とあるのは「許可試掘区域」と、「貯留事業等の用」とあるのは「試掘の用」と読み替えるものとする。

第四款 機構の協力業務

第六十五条 機構は、貯留事業者等の依頼に応じて、その貯留事業等の適切な実施に資するよう、二酸化炭素の貯蔵の方法又は試掘の方法に関する情報の提供その他必要な協力の業務を行うものとする。

第四節 保安

第一款 貯留事業者等の義務等

(貯留事業者等の義務)

第六十六条 貯留事業者は、次に掲げる事項について、経済産業省令で定めるところにより、公共の安全の維持及び災害の発生の防止のために必要な措置を講じなければならない。

貯留事業のための土地の掘削

貯留層における二酸化炭素の貯蔵

貯留等工作物の工事、維持及び運用並びに火薬類(火薬類取締法(昭和二十五年法律第百四十九号)第二条第一項に規定する火薬類をいう。以下同じ。)及び火気の取扱い

試掘者は、次に掲げる事項について、経済産業省令で定めるところにより、公共の安全の維持及び災害の発生の防止のために必要な措置を講じなければならない。

試掘のための土地の掘削

貯留等工作物の工事、維持及び運用並びに火薬類及び火気の取扱い

経済産業大臣は、貯留事業者等が前二項の規定に違反していると認めるときその他貯留事業場又は試掘場(以下「貯留事業場等」という。)における保安を確保するため必要があると認めるときは、当該貯留事業者等に対し、公共の安全の維持又は災害の発生の防止のために必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(貯留等工作物の維持等)

第六十七条 貯留事業者等は、その貯留等工作物を経済産業省令で定める技術上の基準に適合するように維持しなければならない。

経済産業大臣は、貯留等工作物が前項の経済産業省令で定める技術上の基準に適合していないと認めるときは、貯留事業者等に対し、当該技術上の基準に適合するようにその貯留等工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。

経済産業大臣は、公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があると認めるときは、貯留事業者等に対し、その貯留等工作物を移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、若しくはその使用を制限し、又はその貯留等工作物内における二酸化炭素の廃棄その他の必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。

(災害時の報告)

第六十八条 貯留事業者等は、貯留事業等に係る災害として経済産業省令で定めるものが発生した場合には、経済産業省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に報告しなければならない。

経済産業大臣は、前項の規定による報告があったときは、貯留事業者等に対し、災害発生の日時、場所及び原因、被害の程度その他必要な事項を報告すべきことを命ずることができる。

第二款 自主的な保安

(保安規程)

第六十九条 貯留事業者等は、その貯留事業場等における保安を確保するため、当該貯留事業場等の現況に応じて講ずべき保安上必要な措置について、経済産業省令で定めるところにより、保安規程を定め、貯留事業等(第七十六条第一項の自主検査を伴う貯留等工作物の設置又は変更の工事をする場合にあっては、当該工事)の開始前に、経済産業大臣に届け出なければならない。

貯留事業者等は、保安規程を変更したときは、遅滞なく、変更した事項を経済産業大臣に届け出なければならない。

貯留事業者等は、保安規程を定め、又は変更するに当たっては、第七十四条の規定による調査の結果を踏まえて行わなければならない。

経済産業大臣は、第七十四条の規定による調査の結果に照らして保安規程の内容が貯留事業場等における保安を確保するため適当でないと認めるときその他貯留事業場等における保安を確保するため必要があると認めるときは、貯留事業者等に対し、保安規程を変更すべきことを命ずることができる。

貯留事業者等及びその従業者は、保安規程を守らなければならない。

(保安教育)

第七十条 貯留事業者等は、その従業者に保安教育を施さなければならない。

経済産業大臣は、貯留事業者等がその従業者に施す保安教育が公共の安全の維持又は災害の発生の防止上十分でないと認めるときは、当該貯留事業者等に対し、その従業者に保安教育を施し、又はその内容若しくは方法を改善すべきことを勧告することができる。

(作業監督者)

第七十一条 貯留事業者等は、経済産業省令で定めるところにより、経済産業省令で定める要件を備える者のうちから、作業監督者を選任し、その貯留事業場等における保安の監督をさせなければならない。

貯留事業者等は、前項の規定により作業監督者を選任したときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。 これを解任したときも、同様とする。

(作業監督者の義務等)

第七十二条 作業監督者は、誠実にその職務を行わなければならない。

貯留事業等に従事する者は、作業監督者が貯留事業場等における保安を確保するためにする指示に従わなければならない。

(作業監督者の解任命令)

第七十三条 経済産業大臣は、作業監督者がこの法律若しくはこの法律に基づく命令若しくはこれらに基づく処分に違反したとき、又はその者にその職務を行わせることが貯留事業場等における保安に支障を及ぼすと認めるときは、貯留事業者等に対し、当該作業監督者を解任すべきことを命ずることができる。

(貯留事業者等による現況調査等)

第七十四条 貯留事業者等は、貯留事業等を開始しようとするときその他経済産業省令で定めるときは、その貯留事業場等の現況について、経済産業省令で定める事項を調査し、経済産業省令で定めるところにより、その結果を記録し、これを保存しなければならない。

貯留事業者等は、第六十八条第一項の規定による報告をしたときは、当該報告に係る災害の原因その他の経済産業省令で定める事項を調査し、経済産業省令で定めるところにより、その結果を記録し、これを保存しなければならない。

経済産業大臣は、貯留事業場等における保安を確保するため必要があると認めるときは、貯留事業者等に対し、当該貯留事業場等における保安に関する事項を調査し、経済産業省令で定めるところにより、その結果を記録し、これを保存すべきことを命ずることができる。

前三項に定めるもののほか、貯留事業者等は、貯留事業等の実施に際し、必要に応じ、その貯留事業場等における保安に関する事項を調査するよう努めなければならない。

第三款 工事計画及び検査

(工事計画)

第七十五条 貯留事業者等は、その貯留等工作物の設置又は変更の工事であって経済産業省令で定めるものをしようとするときは、その工事の計画を経済産業大臣に届け出なければならない。 ただし、その貯留等工作物が滅失し、若しくは損壊した場合又は災害その他非常の場合において、やむを得ない一時的な工事としてするときは、この限りでない。

貯留事業者等は、前項の規定による届出に係る工事の計画を変更しようとするときは、経済産業大臣に届け出なければならない。 ただし、その変更が経済産業省令で定める軽微なものであるときは、この限りでない。

前二項の規定による届出をした者は、その届出が受理された日から三十日を経過した後でなければ、当該届出に係る工事を開始してはならない。

経済産業大臣は、第一項又は第二項の規定による届出のあった工事の計画が次に掲げる基準に適合していると認めるときは、前項に規定する期間を短縮することができる。

その貯留等工作物が第六十七条第一項の経済産業省令で定める技術上の基準に適合するものであること。

その貯留等工作物の設置又は変更の工事が公共の安全の維持及び災害の発生の防止に支障を及ぼすおそれがないものであること。

経済産業大臣は、第一項又は第二項の規定による届出のあった工事の計画が前項各号に掲げる基準のいずれかに適合していないと認めるときは、貯留事業者等に対し、その届出を受理した日から三十日(次項の規定により第三項に規定する期間が延長された場合にあっては、その延長後の期間)以内に限り、当該工事の計画を変更し、又は廃止すべきことを命ずることができる。

経済産業大臣は、第一項又は第二項の規定による届出のあった工事の計画が第四項各号に掲げる基準に適合するかどうかについて審査するため相当の期間を要し、その審査が第三項に規定する期間内に終了しないと認める相当の理由があるときは、当該期間を相当と認める期間に延長することができる。 この場合において、経済産業大臣は、当該届出をした者に対し、遅滞なく、その延長後の期間及びその延長の理由を通知しなければならない。

貯留事業者等は、第一項ただし書の規定によりやむを得ない一時的な工事をする場合は、当該工事の開始の後、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。

貯留事業者等は、第二項ただし書の経済産業省令で定める軽微な変更をする場合は、その工事の計画を変更した後、遅滞なく、その変更した工事の計画を経済産業大臣に届け出なければならない。 ただし、経済産業省令で定める場合は、この限りでない。

(使用前自主検査)

第七十六条 貯留事業者等は、前条第一項又は第二項の規定による届出をして設置又は変更の工事をする貯留等工作物(その工事の計画について同条第五項の規定による命令があった場合において同条第一項又は第二項の規定による届出をしていないものを除く。)であって経済産業省令で定めるものの設置又は変更の工事を完成したときは、経済産業省令で定めるところにより、その使用の開始前に、当該貯留等工作物について自主検査を行い、その記録を作成し、これを保存しなければならない。

前項の自主検査においては、その貯留等工作物が次に掲げる基準に適合していることを確認しなければならない。

その工事が前条第一項又は第二項の規定による届出をした工事の計画(同項ただし書の経済産業省令で定める軽微な変更をしたものを含む。)に従って行われたものであること。

第六十七条第一項の経済産業省令で定める技術上の基準に適合するものであること。

(定期自主検査)

第七十七条 貯留事業者等は、その貯留等工作物であって経済産業省令で定めるものについては、経済産業省令で定めるところにより、定期に、自主検査を行い、その記録を作成し、これを保存しなければならない。

第四章 貯留層の探査

(貯留層の探査の許可)

第百七条 貯留層の探査(地下の地層が貯留層に該当するかどうかを調査するために行う地質構造の調査であって、貯留層の掘削を伴わず、かつ、地震探査法その他一定の区域を継続して使用するものとして経済産業省令で定める方法によるものをいう。以下単に「探査」という。)を行おうとする者は、経済産業大臣に申請して、その許可を受けなければならない。

2 前項の規定による申請をしようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書に探査を行おうとする区域を表示する図面を添えて、経済産業大臣に提出しなければならない。

氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

申請の区域の所在地

探査の期間

探査の方法

その他経済産業省令で定める事項

3 経済産業大臣は、第一項の許可をしたときは、許可証を交付しなければならない。

4 前項の規定により許可証の交付を受けた者は、当該許可に係る探査を行うときは、当該許可証を携帯していなければならない。

5 第三項の許可証の再交付及び返納その他許可証に関する手続的事項は、経済産業省令で定める。

(探査の許可の基準)

第百八条 経済産業大臣は、前条第一項の規定による申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、その申請を許可してはならない。

その申請に係る探査の方法が経済産業省令で定める基準に適合するものであること。

申請者が次のいずれにも該当しないこと。

この法律に規定する罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者

第百十条(第四号を除く。ハ及びニにおいて同じ。)の規定により前条第一項の許可を取り消され、その取消しの日から五年を経過しない者

前条第一項の許可を受けた者で法人であるものが第百十条の規定によりその許可を取り消された場合において、その取消しの日前三十日以内に当該法人の役員であった者で、その取消しの日から五年を経過しないもの

前条第一項の許可を受けた者で法人であるものが第百十条の規定によりその許可を取り消された場合において、その取消しの原因となった事実が発生した当時現に当該法人の親会社等であった法人で、その取消しの日から五年を経過しないもの

暴力団員等

法人であって、その業務を行う役員のうちにイからハまで又はホのいずれかに該当する者があるもの

暴力団員等がその事業活動を支配する者

法人であって、その者の親会社等がイ、ロ、ニ、ヘ又はトのいずれかに該当するもの

その申請に係る探査が他人の許可貯留区域等の直上の区域で行われる場合においては、当該探査を行うことが当該他人の許可貯留区域等における貯留事業等の実施を著しく妨害するものでないこと。

その申請に係る探査が他人の鉱区で行われる場合においては、当該探査を行うことが当該他人の鉱区における鉱業の実施を著しく妨害するものでないこと。

その申請に係る探査を行うことが、農業、漁業その他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反するものでないこと。

前各号に掲げるもののほか、その申請に係る探査を行うことが内外の社会的経済的事情に照らして著しく不適切であり、公共の利益の増進に支障を及ぼすおそれがあるものでないこと。

(変更の許可等)

第百九条 第百七条第一項の許可を受けた者は、当該許可に係る同条第二項各号(第一号を除く。)に掲げる事項の変更をしようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。 ただし、経済産業省令で定める軽微な変更については、この限りでない。

2 前条の規定は、前項の規定による変更の許可について準用する。

3 第百七条第一項の許可を受けた者は、同条第二項第一号に掲げる事項に変更があったとき、又は第一項ただし書の経済産業省令で定める軽微な変更をしたときは、遅滞なく、その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。

(探査の許可の取消し)

第百十条 経済産業大臣は、第百七条第一項の許可を受けた者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該許可を取り消すことができる。

偽りその他不正の手段により第百七条第一項の許可又は前条第一項の規定による変更の許可を受けたとき。

その者が行う探査の方法が第百八条第一号の経済産業省令で定める基準に適合しなくなったとき。

第百八条第二号イからチまでのいずれかに該当するに至ったとき。

その者が行う探査が第百八条第三号から第五号までに掲げる基準のいずれかに適合しなくなったとき。

第百三十条第一項の規定により第百七条第一項の許可又は前条第一項の規定による変更の許可に付された条件に違反したとき。

(違反行為に対する措置)

第百十一条 経済産業大臣は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、当該違反行為に係る作業の中止、当該違反行為に係る探査に使用した装置若しくは物件の除去又は原状の回復を命ずることができる。

第百七条第一項又は第百九条第一項の規定に違反して探査を行った者

第百三十条第一項の規定により第百七条第一項の許可又は第百九条第一項の規定による変更の許可に付された条件に違反した者

(探査の許可を受けた者である法人の合併及び分割)

第百十二条 第百七条第一項の許可を受けた者である法人の合併の場合(同項の許可を受けた者である法人と同項の許可を受けた者でない法人が合併する場合において、同項の許可を受けた者である法人が存続するときを除く。)又は分割の場合(当該許可に係る探査の事業の全部を承継させる場合に限る。)において、あらかじめ当該合併又は分割について経済産業省令で定めるところにより経済産業大臣の承認を受けたときは、合併後存続する法人若しくは合併により設立された法人又は分割により当該事業の全部を承継した法人は、同項の許可を受けた者の地位を承継する。

2 第百八条(第二号(ハ及びホを除く。)及び第六号に係る部分に限る。)の規定は、前項の承認について準用する。 この場合において、同条第二号中「申請者」とあるのは、「合併後存続する法人若しくは合併により設立される法人又は分割により当該許可に係る探査の事業の全部を承継する法人」と読み替えるものとする。

(探査の許可を受けた者の相続)

第百十三条 第百七条第一項の許可を受けた者が死亡した場合においては、相続人(相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により当該許可に係る探査の事業を承継すべき相続人を選定したときは、その者。以下この条において同じ。)が当該許可に係る探査の事業を引き続き行おうとするときは、その相続人は、被相続人の死亡後六十日以内に経済産業大臣に申請して、その承認を受けなければならない。

2 相続人が前項の承認の申請をした場合においては、被相続人の死亡の日からその承認を受ける日又は承認をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした第百七条第一項又は第百九条第一項の許可は、その相続人に対してしたものとみなす。

3 第百八条(第二号イからハまで及びホ並びに第六号に係る部分に限る。)の規定は、第一項の承認について準用する。

4 第一項の承認を受けた相続人は、被相続人に係る第百七条第一項の許可を受けた者の地位を承継する。

(国に関する特例)

第百十四条 国の機関が行う探査(国の機関が他の者に委託して行う場合を含む。)については、第百七条第一項の許可を受けることを要しない。 この場合において、当該国の機関は、その探査を行おうとするときは、あらかじめ、経済産業大臣に協議しなければならない。

(探査の結果の報告)

第百十五条 経済産業大臣は、貯留層の存在状況を把握し、又は探査の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、経済産業省令で定めるところにより、第百七条第一項の許可を受けた者に対し、その探査の結果を報告すべきことを命ずることができる。

第五章 土地の使用及び収用

(土地の立入り)

第百十六条 貯留事業等を行おうとする者、貯留事業等の許可の申請をした者若しくは貯留事業者等又は導管輸送事業を行おうとする者若しくは導管輸送事業者は、その貯留等工作物又は導管輸送工作物の設置に関する測量、実地調査又は工事のため必要があるときは、経済産業大臣の許可を受けて、他人の土地に立ち入ることができる。

2 経済産業大臣は、前項の許可の申請があったときは、土地の所有者及び占有者にその旨を通知し、意見書を提出する機会を与えなければならない。

3 第一項の許可を受けた者は、他人の土地に立ち入るときは、あらかじめ、土地の占有者に通知しなければならない。

4 第一項の許可を受けた者は、他人の土地に立ち入るときは、経済産業大臣の許可を受けたことを証する書面を携帯し、関係人に提示しなければならない。

(損失の補償)

第百十七条 前条第一項の許可を受けた者は、同項の規定による行為により他人に損失を与えたときは、その損失を受けた者に対して、通常生ずべき損失を補償しなければならない。

2 前項の規定による損失の補償については、損失を与えた者と損失を受けた者とが協議しなければならない。

3 前項の規定による協議が成立しないときは、損失を与えた者又は損失を受けた者は、政令で定めるところにより、収用委員会に土地収用法第九十四条第二項の規定による裁決を申請することができる。

(土地の使用)

第百十八条 貯留事業者等は、許可貯留区域等又はその付近において他人の土地をその貯留事業等に係る次に掲げる目的のために利用することが必要かつ適当であって、他の土地をもって代えることが著しく困難なときは、これを使用することができる。

坑井の開設その他貯留等工作物の設置

火薬類、燃料その他の重要資材又は土石の置場の設置

道路の開設又は電気工作物の設置

貯留事業等のための事務所又は貯留事業等に従事する者の宿舎の設置

2 導管輸送事業者は、その導管輸送事業の用に供するため、他人の土地に導管輸送工作物を設置することが必要かつ適当であって、他の土地をもって代えることが著しく困難なときは、これを使用することができる。

(土地の収用)

第百十九条 貯留事業者は、許可貯留区域又はその付近において他人の土地をその貯留事業に係る前条第一項各号に掲げる目的に供した結果、その土地の形質を変更し、これを原状に回復することが著しく困難となった場合において、なおその土地をその目的に利用することが必要かつ適当であって、他の土地をもって代えることが著しく困難なときは、他人の土地を収用することができる。

2 導管輸送事業者は、その導管輸送事業の用に供するため、他人の土地に導管輸送工作物を設置した結果、その土地の形質を変更し、これを原状に回復することが著しく困難となった場合において、なおその土地をその目的に利用することが必要かつ適当であって、他の土地をもって代えることが著しく困難なときは、他人の土地を収用することができる。

(許可及び公告)

第百二十条 貯留事業者等又は導管輸送事業者は、前二条の規定により他人の土地を使用し、又は収用しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣に申請して、その許可を受けなければならない。

2 経済産業大臣は、前項の規定による申請があったときは、その申請に係る貯留事業等又は導管輸送事業について関係のある都道府県知事に協議するとともに、貯留事業者等又は導管輸送事業者並びに土地の所有者及び土地に関して権利を有する者の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。

3 経済産業大臣は、前項の意見の聴取をしようとするときは、その期日の一週間前までに、事案の要旨並びに意見の聴取の期日及び場所を当事者に通知し、かつ、これを公示しなければならない。

4 第二項の意見の聴取に際しては、当事者に対して、当該事案について、証拠を提示し、意見を述べる機会を与えなければならない。

5 経済産業大臣は、第一項の許可をしたときは、次に掲げる事項を公告しなければならない。

土地を使用し、又は収用しようとする者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名

使用又は収用の目的

使用し、又は収用しようとする土地の所在地及び区域

使用し、又は収用しようとする土地を表示する図面の縦覧場所

6 経済産業大臣は、第一項の許可をしたときは、直ちに、第二項に規定する都道府県知事を経由して、使用し、又は収用しようとする土地が所在する市町村の長にその旨を通知するとともに、その土地を表示する図面を送付しなければならない。

(使用又は収用の手続の保留)

第百二十一条 貯留事業者等又は導管輸送事業者は、第百十八条又は第百十九条の規定により使用し、又は収用しようとする土地の全部又は一部について、前条第一項の許可後の使用又は収用の手続を保留することができる。

2 貯留事業者等又は導管輸送事業者は、前項の規定によって使用又は収用の手続を保留しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、前条第一項の規定による申請と同時に、その旨を記載した申立書を提出しなければならない。

3 経済産業大臣は、前項の規定による申立てがあったときは、前条第五項又は第六項の規定による公告又は通知の際、併せて同条第一項の許可後の使用又は収用の手続が保留される旨及び手続が保留される土地の区域を公告し、又は通知しなければならない。

(土地収用法の適用)

第百二十二条 第百十八条又は第百十九条の規定による土地の使用又は収用に関しては、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、第百二十条第一項又は第五項の規定による許可又は公告があったときは、土地収用法第二十条の規定による事業の認定又は同法第二十六条第一項の規定による事業の認定の告示があったものとみなし、第百二十条第六項の規定による通知は同法第二十六条の二第一項の規定による通知と、第百二十条第六項の規定により市町村長が送付を受けた図面は同法第二十六条の二第二項の規定により公衆の縦覧に供すべき図面と、前条第三項の規定による公告は同法第三十三条の規定による告示とみなして、同法の規定を適用する。

2 前項の規定による土地収用法の適用については、同法第百二十九条及び第百三十一条第一項中「国土交通大臣」とあり、同条第二項中「国土交通大臣又は都道府県知事」とあり、並びに同法第百三十一条の二中「国土交通大臣若しくは都道府県知事」とあるのは、「経済産業大臣」とする。

3 経済産業大臣は、第百二十条第五項の規定による公告をしたときは、土地収用法第二十六条第二項及び第三項の規定にかかわらず、収用委員会の要求があった場合においては、土地の使用又は収用の許可に関する書類の写しを、収用委員会に送付しなければならない。

(水の使用)

第百二十三条 土地の使用及び収用に関する規定は、貯留事業者等の水の使用に関する権利について準用する。

第六章 損害の賠償

(賠償義務)

第百二十四条 貯留層における二酸化炭素の貯蔵若しくは試掘のための土地の掘削、坑水の放流又は貯留層に貯蔵した二酸化炭素の漏えいによって他人に損害を与えたときは、当該損害の発生の時における当該許可貯留区域等の貯留事業者等が、当該損害の発生の時既に第五十五条第一項の規定により機構に貯留権が移転しているときは当該移転の時に当該貯留権を有していた貯留事業者が、当該損害の発生の時既に貯留権等(貯留権にあっては、貯留開始貯留事業以外の貯留事業に係るものに限る。)が消滅しているときは当該貯留権等の消滅の時における当該許可貯留区域等の貯留事業者等が、当該損害を賠償する責任を負う。

2 前項の場合において、損害が二以上の許可貯留区域等の貯留事業者等の行為によって生じたときは、各貯留事業者等は、連帯して損害を賠償する義務を負う。 損害が二以上の許可貯留区域等の貯留事業者等の行為のいずれによって生じたかを知ることができないときも、同様とする。

3 前二項の場合において、損害の発生の後に貯留権等の譲渡があったときは、損害の発生の時の貯留事業者等及びその後の貯留事業者等が、連帯して損害を賠償する義務を負う。

4 前三項の規定による賠償については、貯留権等を共有する者の義務は、連帯とする。

(負担部分と償還請求)

第百二十五条 前条第二項に規定する連帯債務者相互の間においては、その各自の負担部分は、等しいものと推定する。

2 前条第三項の場合において、貯留権等を譲り受けた者が賠償の義務を履行したときは、同条第一項又は第二項の規定により損害を賠償すべき者に対し、償還を請求することができる。

(賠償)

第百二十六条 損害は、公正かつ適切に賠償されなければならない。

2 損害の賠償は、金銭をもってする。 ただし、賠償金額に比して著しく多額の費用を要しないで原状の回復をすることができるときは、被害者は、原状の回復を請求することができる。

3 賠償義務者の申立てがあった場合において、裁判所が適当であると認めるときは、前項の規定にかかわらず、金銭をもってする賠償に代えて原状の回復を命ずることができる。

(賠償についてのしん酌)

第百二十七条 損害の発生又は拡大に関して被害者の責めに帰すべき事由があったときは、裁判所は、損害賠償の責任及び範囲を定めるについて、これをしん酌することができる。 天災その他の不可抗力が競合したときも、同様とする。

(消滅時効)

第百二十八条 損害賠償請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

被害者が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行使しないとき。

損害の発生の時から二十年間行使しないとき。

2 人の生命又は身体を害した場合における損害賠償請求権の消滅時効についての前項第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

3 前二項の期間は、進行中の損害については、その進行のやんだ時から起算する。

(適用除外)

第百二十九条 この章の規定は、貯留事業等に従事する者の業務上の負傷、疾病及び死亡に関しては、適用しない。

第七章 雑則

(許可等の条件)

第百三十条 この法律の規定による許可、認可又は承認(次項において「許可等」という。)には、条件を付し、及びこれを変更することができる。

2 前項の条件は、許可等の趣旨に照らして、又は許可等に係る事項の確実な実施を図るため必要な最小限度のものに限り、かつ、当該許可等を受ける者に不当な義務を課することとなるものであってはならない。

(手数料)

第百三十一条 次に掲げる者は、政令で定めるところにより、実費を勘案して政令で定める額の手数料を国に納付しなければならない。

第四条第一項、第十条第一項、第十二条第一項、第十四条第一項、第十六条第一項、第五十三条第五項(第二十二条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は第百二十条第一項の許可を申請する者

第九条第二項(第十二条第六項において準用する場合を含む。)の更新を申請する者

第二十二条第三項、同条第五項(第五十三条第三項において準用する場合を含む。)又は第五十三条第二項の認可を申請する者

第五十三条第四項(第二十二条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の確認を受けようとする者

第百六条第一項の規定により経済産業大臣の行う検査を受けようとする者

(報告徴収及び立入検査)

第百三十二条

2 経済産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、試掘者又は導管輸送事業者に対し、その業務に関し必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、試掘者又は導管輸送事業者の事業所、事務所その他の事業場に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

3 経済産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、探査を行う者に対し、その行為に関し必要な報告若しくは資料の提出を求め、又はその職員に、探査を行う者の事業所、事務所若しくは自動車若しくは船舶(以下この項において「自動車等」という。)に立ち入り、その行為の状況、自動車等若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させ、若しくは関係者に質問させることができる。

5 前各項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。

6 第一項から第四項までの規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

(公害等調整委員会の裁定)

第百三十三条 第四条第一項、第十条第一項、第十二条第一項、第十四条第一項、第十九条第一項若しくは第二項、第百七条第一項、第百九条第一項又は第百十条の規定による経済産業大臣の処分(第十四条第一項の規定による処分にあっては、許可貯留区域等の増加に係るものに限る。)に不服がある者は、その不服の理由が鉱業、採石業又は砂利採取業との調整に関するものであるときは、公害等調整委員会に裁定を申請することができる。 この場合には、審査請求をすることができない。

2 行政不服審査法(平成二十六年法律第六十八号)第二十二条の規定は、前項の処分につき、処分をした行政庁が誤って審査請求又は再調査の請求をすることができる旨を教示した場合について準用する。

(火薬類取締法等の適用除外)

第百三十四条 貯留事業者等が行う貯留事業等の用に供する火薬類については、火薬類取締法第十七条第一項及び第五項並びに第二十一条(経済産業省令で定める数量以下の火薬類の譲渡又は譲受けの場合に限る。)、第二十五条第一項、第二十六条、第二十九条第四項及び第六項(消費者に係る部分に限る。)、第三十条第二項(同項の経済産業省令で定める数量以上の火薬類を消費する者に係る部分に限る。)、第四十一条及び第四十二条(消費者に係る部分に限る。)、第四十三条第一項(消費者又は火薬類を保管する者の消費場所又は保管場所に係る部分に限る。)並びに第四十五条第二号(消費者その他火薬類を取り扱う者に係る部分に限る。)及び第三号の規定は、適用しない。

2 貯留事業者等が行う貯留事業等及びその用に供する貯留等工作物並びに導管輸送事業者が行う導管輸送事業及びその用に供する導管輸送工作物については、高圧ガス保安法(昭和二十六年法律第二百四号)第五条、第十三条、第十五条第一項、第十六条第一項及び第三項、第十七条の二、第二十三条第三項、第二十五条、第三十九条第二号及び第三号、第六十二条第一項並びに第六十三条の規定は、適用しない。

(権限の委任)

第百三十七条 この法律に規定する経済産業大臣の権限は、経済産業省令で定めるところにより、経済産業局長又は産業保安監督部長に委任することができる。

2 この法律に規定する環境大臣の権限は、環境省令で定めるところにより、地方環境事務所長に委任することができる。

(経済産業省令等への委任)

第百三十八条 この法律に規定するもののほか、この法律の実施のため必要な手続その他の事項は、経済産業省令、環境省令又は主務省令で定める。

(経過措置)

第百三十九条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

第八章 罰則

第百四十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五年以下の拘禁刑若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第十三条第一項の規定に違反して、貯留事業の許可を受けないで貯留層における二酸化炭素の貯蔵を行ったとき。

第十三条第二項の規定に違反して、試掘の許可を受けないで試掘を行ったとき。

第百四十一条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五年以下の拘禁刑若しくは二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第九条第二項(第十二条第六項において準用する場合を含む。)の規定による試掘の許可の更新を受けないで当該試掘の許可の有効期間の満了後に試掘を行ったとき。

第二十二条第二項の規定に違反したとき。

第五十三条第五項(第二十二条第一項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の許可を受けないで貯留開始貯留事業を廃止したとき。

第百七条第一項の許可又は第百九条第一項の規定による変更の許可を受けないで探査を行ったとき。

第百十一条の規定による命令に違反したとき。

第百四十二条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第二十二条第三項若しくは第四項又は第五十三条第二項の規定に違反したとき。

第二十二条第九項(第五十三条第三項において準用する場合を含む。)又は第二十三条第二項(第五十七条第五項及び第六十四条第三項において準用する場合を含む。)の規定による命令に違反したとき。

第百四十三条 第五十二条、第六十六条第三項若しくは第八十四条の規定による命令又は第六十七条第二項若しくは第三項若しくは第八十六条第二項若しくは第三項の規定による命令若しくは制限に違反したときは、当該違反行為をした者は、三百万円以下の罰金に処する。

第百四十四条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。

第十五条、第四十一条第二項、第四十三条第三項、第四十八条第二項、第五十条第三項若しくは第五項、第五十一条第二項、第六十二条第二項、第六十八条第二項(第八十七条において準用する場合を含む。)、第六十九条第四項、第七十三条(第八十九条において準用する場合を含む。)、第七十四条第三項、第八十二条第三項若しくは第五項、第八十三条第二項又は第八十八条第三項の規定による命令に違反したとき。

第五十条第二項、第六十七条第一項、第八十二条第二項又は第八十六条第一項の規定に違反したとき。

第六十六条第一項又は第二項の規定による措置を講じなかったとき。

第七十一条第一項(第八十九条において準用する場合を含む。)の規定に違反して作業監督者を選任しなかったとき。

第七十五条第一項から第三項まで又は第九十条第一項から第三項までの規定に違反して貯留等工作物又は導管輸送工作物の設置又は変更の工事をしたとき。

第七十五条第五項又は第九十条第五項の規定による命令に違反して貯留等工作物又は導管輸送工作物の設置又は変更の工事をしたとき。

第百四十五条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

第三十五条第三項、第三十七条第三項、同条第六項(第五十八条第三項において準用する場合を含む。)、第四十五条第三項、第五十条第一項、第五十七条第一項(第六十四条第二項において準用する場合を含む。)、第五十八条第二項、第六十九条第一項若しくは第二項、第七十一条第二項(第八十九条において準用する場合を含む。)、第七十五条第七項若しくは第八項、第七十九条第二項、第八十条第一項、第八十二条第一項、第八十八条第一項若しくは第二項、第九十条第七項若しくは第八項又は第九十九条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をしたとき。

第四十三条第二項、第四十八条第一項、第四十九条(第六十四条第一項において準用する場合を含む。)又は第六十八条第一項(第八十七条において準用する場合を含む。)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。

第七十四条第一項若しくは第二項、第七十六条第一項、第七十七条(第九十二条において準用する場合を含む。)、第八十一条又は第九十一条第三項の規定に違反して記録を作成せず、若しくは虚偽の記録を作成し、又は記録を保存しなかったとき。

第百七条第四項の規定に違反して許可証を携帯しないで探査を行ったとき。

第百十五条の規定による命令に違反したとき。

第百十六条第四項の規定に違反して、同項の書面を携帯せず、又はこれを提示しないで他人の土地に立ち入ったとき。

第百三十条第一項の規定により付された条件(貯留事業等の許可又は第百七条第一項の許可若しくは第百九条第一項の規定による変更の許可に係るものに限る。)に違反したとき。

第百三十二条第一項から第四項までの規定による報告若しくは資料の提出をせず、若しくは虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出し、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、若しくはこれらの規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をしたとき。

第百四十六条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第百四十条から前条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。

第百四十八条 第二十二条第七項(第五十三条第三項において準用する場合を含む。)、第三十九条第二項、第六十条第二項、第七十八条第三項、第八十条第二項又は第百九条第三項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、十万円以下の過料に処する。

附則

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

(探査に関する経過措置)
第五条 附則第一条第二号に掲げる規定の施行の際現に第百七条第一項に規定する探査を行っている者は、同号に掲げる規定の施行の日から起算して一月間(当該期間内に同項の許可の申請をした場合には、当該申請について処分がある日まで)は、同項の規定にかかわらず、引き続き当該探査を行うことができる。

(調整規定)
第六条 刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)の施行の日(以下この条において「刑法施行日」という。)の前日までの間における第百四十条から第百四十二条までの規定の適用については、これらの規定中「拘禁刑」とあるのは、「懲役」とする。 刑法施行日以後における刑法施行日前にした行為に対するこれらの規定の適用についても、同様とする。

(罰則に関する経過措置)
第二十一条 この法律(附則第一条第三号に掲げる規定にあっては、当該規定)の施行前にした行為及び附則第十五条第一項の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。

(政令への委任)
第二十二条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。