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令和元年法律第十九号
食品ロスの削減の推進に関する法律

施行日:

出典:e-Gov 法令検索 [XML]

 我が国においては、まだ食べることができる食品が、生産、製造、販売、消費等の各段階において日常的に廃棄され、大量の食品ロスが発生している。食品ロスの問題については、二千十五年九月二十五日の国際連合総会において採択された持続可能な開発のための二千三十アジェンダにおいて言及されるなど、その削減が国際的にも重要な課題となっており、また、世界には栄養不足の状態にある人々が多数存在する中で、とりわけ、大量の食料を輸入し、食料の多くを輸入に依存している我が国として、真摯に取り組むべき課題である。

 食品ロスを削減していくためには、国民各層がそれぞれの立場において主体的にこの課題に取り組み、社会全体として対応していくよう、食べ物を無駄にしない意識の醸成とその定着を図っていくことが重要である。また、まだ食べることができる食品については、廃棄することなく、貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手することができない人々に提供することを含め、できるだけ食品として活用するようにしていくことが重要である。

 ここに、国、地方公共団体、事業者、消費者等の多様な主体が連携し、国民運動として食品ロスの削減を推進するため、この法律を制定する。

第一章 総則

(目的)

第一条 この法律は、食品ロスの削減に関し、国、地方公共団体等の責務等を明らかにするとともに、基本方針の策定その他食品ロスの削減に関する施策の基本となる事項を定めること等により、食品ロスの削減を総合的に推進することを目的とする。

(定義)

第二条 この法律において「食品」とは、飲食料品のうち医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第二項に規定する医薬部外品及び同条第九項に規定する再生医療等製品以外のものをいう。

2 この法律において「食品ロスの削減」とは、まだ食べることができる食品が廃棄されないようにするための社会的な取組をいう。

(国の責務)

第三条 国は、食品ロスの削減に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。

(地方公共団体の責務)

第四条 地方公共団体は、食品ロスの削減に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その地域の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

(事業者の責務)

第五条 事業者は、その事業活動に関し、国又は地方公共団体が実施する食品ロスの削減に関する施策に協力するよう努めるとともに、食品ロスの削減について積極的に取り組むよう努めるものとする。

(消費者の役割)

第六条 消費者は、食品ロスの削減の重要性についての理解と関心を深めるとともに、食品の購入又は調理の方法を改善すること等により食品ロスの削減について自主的に取り組むよう努めるものとする。

(関係者相互の連携及び協力)

第七条 国、地方公共団体、事業者、消費者、食品ロスの削減に関する活動を行う団体その他の関係者は、食品ロスの削減の総合的かつ効果的な推進を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

(食品廃棄物の発生の抑制等に関する施策における食品ロスの削減の推進)

第八条 国及び地方公共団体は、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(平成十二年法律第百十六号)その他の関係法律に基づく食品廃棄物の発生の抑制等に関する施策を実施するに当たっては、この法律の趣旨及び内容を踏まえ、食品ロスの削減を適切に推進しなければならない。

(食品ロス削減月間)

第九条 国民の間に広く食品ロスの削減に関する理解と関心を深めるため、食品ロス削減月間を設ける。

2 食品ロス削減月間は、十月とし、特に同月三十日を食品ロス削減の日とする。

3 国及び地方公共団体は、食品ロス削減の日をはじめ食品ロス削減月間において、その趣旨にふさわしい事業が実施されるよう努めるものとする。

(財政上の措置等)

第十条 政府は、食品ロスの削減に関する施策を実施するため必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。

第二章 基本方針等

(基本方針)

第十一条 政府は、食品ロスの削減に関する施策の総合的な推進を図るため、食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。

2 基本方針は、次に掲げる事項について定めるものとする。

食品ロスの削減の推進の意義及び基本的な方向に関する事項

食品ロスの削減の推進の内容に関する事項

その他食品ロスの削減の推進に関する重要事項

3 内閣総理大臣は、基本方針の案につき閣議の決定を求めなければならない。

4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。

5 前二項の規定は、基本方針の変更について準用する。

(都道府県食品ロス削減推進計画)

第十二条 都道府県は、基本方針を踏まえ、当該都道府県の区域内における食品ロスの削減の推進に関する計画(以下この条及び次条第一項において「都道府県食品ロス削減推進計画」という。)を定めるよう努めなければならない。

2 都道府県は、都道府県食品ロス削減推進計画を定めるに当たっては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)第五条の五第一項に規定する廃棄物処理計画その他の法律の規定による計画であって食品ロスの削減の推進に関連する事項を定めるものと調和を保つよう努めなければならない。

3 都道府県は、都道府県食品ロス削減推進計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるものとする。

4 前二項の規定は、都道府県食品ロス削減推進計画の変更について準用する。

(市町村食品ロス削減推進計画)

第十三条 市町村は、基本方針(都道府県食品ロス削減推進計画が定められているときは、基本方針及び都道府県食品ロス削減推進計画)を踏まえ、当該市町村の区域内における食品ロスの削減の推進に関する計画(次項において「市町村食品ロス削減推進計画」という。)を定めるよう努めなければならない。

2 前条第二項から第四項までの規定は、市町村食品ロス削減推進計画について準用する。 この場合において、同条第二項(同条第四項において準用する場合を含む。)中「第五条の五第一項に規定する廃棄物処理計画」とあるのは、「第六条第一項に規定する一般廃棄物処理計画」と読み替えるものとする。

第三章 基本的施策

(教育及び学習の振興、普及啓発等)

第十四条 国及び地方公共団体は、消費者、事業者等が、食品ロスの削減について、理解と関心を深めるとともに、それぞれの立場から取り組むことを促進するよう、教育及び学習の振興、啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 前項の施策には、必要量に応じた食品の販売及び購入、販売及び購入をした食品を無駄にしないための取組その他の消費者と事業者との連携協力による食品ロスの削減の重要性についての理解を深めるための啓発が含まれるものとする。

(食品関連事業者等の取組に対する支援)

第十五条 国及び地方公共団体は、食品の生産、製造、販売等の各段階における食品ロスの削減についての食品関連事業者(食品の製造、加工、卸売若しくは小売又は食事の提供を行う事業者をいう。第十九条第一項において同じ。)及び農林漁業者並びにこれらの者がそれぞれ組織する団体(次項において「食品関連事業者等」という。)の取組に対する支援に関し必要な施策を講ずるものとする。

2 国及び地方公共団体は、食品の生産から消費に至る一連の過程における食品ロスの削減の効果的な推進を図るため、食品関連事業者等の相互の連携の強化のための取組に対する支援に関し必要な施策を講ずるものとする。

(表彰)

第十六条 国及び地方公共団体は、食品ロスの削減に関し顕著な功績があると認められる者に対し、表彰を行うよう努めるものとする。

(実態調査等)

第十七条 国及び地方公共団体は、食品ロスの削減に関する施策の効果的な実施に資するよう、まだ食べることができる食品の廃棄の実態に関する調査並びにその効果的な削減方法等に関する調査及び研究を推進するものとする。

(情報の収集及び提供)

第十八条 国及び地方公共団体は、食品ロスの削減について、先進的な取組に関する情報その他の情報を収集し、及び提供するよう努めるものとする。

(未利用食品等を提供するための活動の支援等)

第十九条 国及び地方公共団体は、食品関連事業者その他の者から未利用食品等まだ食べることができる食品の提供を受けて貧困、災害等により必要な食べ物を十分に入手することができない者にこれを提供するための活動が円滑に行われるよう、当該活動に係る関係者相互の連携の強化等を図るために必要な施策を講ずるものとする。

2 前項に定めるもののほか、国及び地方公共団体は、民間の団体が行う同項の活動を支援するために必要な施策を講ずるものとする。

3 国は、第一項の活動のための食品の提供等に伴って生ずる責任の在り方に関する調査及び検討を行うよう努めるものとする。

第四章 食品ロス削減推進会議

(設置及び所掌事務)

第二十条 内閣府に、特別の機関として、食品ロス削減推進会議(以下「会議」という。)を置く。

2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。

基本方針の案を作成すること。

前号に掲げるもののほか、食品ロスの削減の推進に関する重要事項について審議し、及び食品ロスの削減に関する施策の実施を推進すること。

(組織)

第二十一条 会議は、会長及び委員二十人以内をもって組織する。

(会長)

第二十二条 会長は、内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第十一条の二の特命担当大臣をもって充てる。

2 会長は、会務を総理する。

3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代理する。

(委員)

第二十三条 委員は、次に掲げる者をもって充てる。

農林水産大臣

環境大臣

前二号に掲げる者のほか、会長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者

食品ロスの削減に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者

2 前項第四号の委員は、非常勤とする。

(委員の任期)

第二十四条 前条第一項第四号の委員の任期は、二年とする。 ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

2 前条第一項第四号の委員は、再任されることができる。

(政令への委任)

第二十五条 この章に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。

附則

(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。