第一章 総則
(目的)第一条 この法律は、経済連携協定の適確な実施を確保するため、締約国の税関当局に対する申告原産品に係る情報の提供等を適正かつ確実に行うための措置を講じ、もって我が国の輸出貿易の健全な発展に寄与することを目的とする。
(定義)第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一 経済連携協定 世界貿易機関を設立するマラケシュ協定附属書一Aの千九百九十四年の関税及び貿易に関する一般協定第二十四条8(b)に規定する自由貿易地域を設定するための措置その他貿易の自由化、投資の円滑化等の措置を総合的に講ずることにより我が国と我が国以外の締約国との間の経済上の連携を強化する条約その他の国際約束であって、その適確な実施を確保するためこの法律に基づく措置を講ずることが必要なものとして政令で定めるものをいう。
二 締約国 経済連携協定の締約国(固有の関税及び貿易に関する制度を有する地域を含む。)をいう。
三 締約国の税関当局 関税法(昭和二十九年法律第六十一号)、関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)その他の関税に関する法律に相当する締約国(我が国を除く。以下同じ。)の法令を執行する当局をいう。
四 特定原産品 本邦から締約国に輸出される物品であって、経済連携協定の規定に基づき原産品とされるものをいう。
五 特定原産品申告書 本邦から締約国に輸出される物品が特定原産品であることを当該締約国の税関当局に対し申告する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。次号において同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)であって、当該物品を輸入する者、輸出する者又は生産する者が経済連携協定の規定に基づき作成するものをいう。
六 特定原産品誓約書 本邦から政令で定める経済連携協定の締約国に輸出される物品が特定原産品であることを誓約する書面(その作成に代えて電磁的記録を作成する場合における当該電磁的記録を含む。)であって、当該物品に係る特定原産品申告書の作成の用に供するため、当該物品を輸出する者又は生産する者が当該特定原産品申告書を作成する者に交付し、又は提供するものをいう。
七 申告原産品 本邦から締約国に輸出された物品であって、特定原産品申告書により当該物品が特定原産品であることを当該締約国の税関当局に対し申告されたものをいう。
第二章 申告原産品に係る情報の提供等
(情報提供等)第三条 財務大臣は、政令で定める経済連携協定の締約国の税関当局から申告原産品が特定原産品であるか否かについての確認に資すると認められる情報の提供を求められたときは、政令で定める期間内に、その求めに応じなければならない。 ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 当該締約国の税関当局が、我が国が行う当該情報の提供に相当する情報の提供を我が国に対して行うことができないと認められるとき。
二 我が国がこの項の規定により提供する情報について当該締約国において秘密の保持が担保されていないと認められるとき。
三 我が国がこの項の規定により提供する情報が当該確認に資する目的以外の目的で使用されるおそれがあると認められるとき。
四 当該情報の提供を行うことが我が国の利益を害することとなるおそれがあると認められるとき。
五 当該情報に特定原産品申告書又は特定原産品誓約書を作成した者その他の関係者の秘密を害するおそれのある情報が含まれている場合において、当該情報を当該締約国の税関当局に提供することについてその者の同意がないとき。
2 財務大臣は、前項の求めがあったときは、速やかに、その旨を経済産業大臣に通知するものとする。 3 財務大臣は、第一項本文の規定により同項の求めに応じようとするとき、又は同項ただし書の規定により同項の求めに応じないこととするときは、あらかじめ、経済産業大臣に協議し、その同意を得なければならない。 (情報の収集及び提供等による協力)第四条 財務大臣は、政令で定める経済連携協定の規定に基づき、当該経済連携協定の締約国の税関当局から申告原産品が特定原産品であるか否かについての確認をするために当該申告原産品に係る特定原産品申告書を作成した者その他の関係者からの情報の収集及び提供その他の必要な協力を求められた場合において、当該協力をすることが適当と認めるときは、その求めに応ずることができる。
2 財務大臣は、前項の求めがあったときは、速やかに、その旨を農林水産大臣及び経済産業大臣に通知するものとする。 (書類の保存)第五条 本邦から締約国に輸出される物品を輸出する者又は生産する者で当該物品に係る特定原産品申告書を作成した者は、当該物品に関する書類で政令で定めるものを、当該特定原産品申告書の作成の日から政令で定める期間、保存しなければならない。 ただし、当該特定原産品申告書を当該締約国の関税の譲許の便益の適用を受けるための申告の用に供しないこととなったときは、この限りでない。
2 本邦から第二条第六号の政令で定める経済連携協定の締約国に輸出される物品を輸出する者又は生産する者で当該物品に係る特定原産品誓約書を作成した者は、当該物品に関する書類で政令で定めるものを、当該特定原産品誓約書の作成の日から政令で定める期間、保存しなければならない。 ただし、当該特定原産品誓約書を特定原産品申告書の作成の用に供しないこととなったとき、又は当該特定原産品誓約書に基づき作成された特定原産品申告書を当該締約国の関税の譲許の便益の適用を受けるための申告の用に供しないこととなったときは、この限りでない。 (特定原産品でなかったこと等の通知)第六条 本邦から政令で定める経済連携協定の締約国に輸出される物品を輸出する者又は生産する者で当該物品に係る特定原産品申告書を作成した者は、当該特定原産品申告書を作成した日以後政令で定める期間内において、次の各号に掲げる事実を知ったときは、当該特定原産品申告書を交付し、又は提供した相手方及び当該締約国の税関当局に対し、遅滞なく、当該各号に掲げる事実の区分に応じ当該各号に定める事項を書面により通知しなければならない。 ただし、当該特定原産品申告書を当該締約国の関税の譲許の便益の適用を受けるための申告の用に供しないこととなったときは、この限りでない。
一 当該特定原産品申告書に係る申告原産品が特定原産品でなかったこと その旨及び特定原産品でなかったとする理由
二 前号に掲げるもののほか、当該特定原産品申告書の記載に誤り(誤記その他これに類する明白な誤りであって当該特定原産品申告書の内容の正確性に影響を及ぼすおそれがないと認めるものを除く。)があったこと その旨及び修正後の記載内容
三 当該特定原産品申告書に記載された事項に変更があったこと その旨及び当該変更の内容
第三章 雑則
(資料の提出及び立入検査等)第七条 財務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、特定原産品申告書若しくは特定原産品誓約書を作成した者その他の関係者に対し、資料の提出を求め、又はその職員に、これらの者の事務所その他の必要な場所に立ち入らせ、質問させ、若しくは書類その他の物件を検査させることができる。
2 経済産業大臣は、必要があると認めるときは、その職員に、前項の規定による質問又は検査に立ち会わせることができる。 3 第一項の規定により職員が立ち入るとき、又は前項の規定により職員が立ち会うときは、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。 4 第一項及び第二項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。 (農林水産大臣及び経済産業大臣との協力)第八条 財務大臣は、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、農林水産大臣及び経済産業大臣に対し、必要な資料又は情報の提供、意見の開陳その他の協力を求めることができる。
2 農林水産大臣及び経済産業大臣は、必要があると認めるときは、この法律の施行に関し、財務大臣に対し、意見を述べることができる。 (権限の委任)第九条 この法律に規定する財務大臣の権限は、政令で定めるところにより、税関長に委任することができる。
2 税関長は、政令で定めるところにより、前項の規定により委任された権限を税関の支署その他の税関官署の長に委任することができる。 3 この法律に規定する経済産業大臣の権限は、政令で定めるところにより、経済産業局長に委任することができる。 (政令への委任)第十条 この法律に定めるもののほか、この法律を実施するため必要な事項は、政令で定める。
第四章 罰則
第十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 虚偽の記載又は記録をした特定原産品申告書を交付し、又は提供した者
二 虚偽の記載又は記録をした特定原産品誓約書を交付し、又は提供した者
第十二条 第七条第一項の規定による資料の提出の求めに対し、正当な理由がなくこれに応じず、若しくは虚偽の資料を提出し、又は同項の規定による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をし、若しくは正当な理由がなく検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、三十万円以下の罰金に処する。
第十三条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の刑を科する。
附則
この法律は、オーストラリア協定の効力発生の日から施行する。附則(平成二八年一二月一六日法律第一〇八号)
(施行期日)
第一条 この法律は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定が日本国について効力を生ずる日(第三号において「発効日」という。)から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
第八条 施行日前にした行為及び附則第五条の規定によりなお従前の例によることとされる場合における施行日以後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(政令への委任)
第九条 この附則に規定するもののほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。
附則(平成三〇年七月六日法律第七〇号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から施行する。