第一章 総則
(目的)第一条 この規則は、被疑者取調べの監督に関し必要な事項を定めることにより、被疑者取調べの適正化に資することを目的とする。
(留意事項)第二条 被疑者取調べの監督は、厳正かつ公平を旨として行わなければならない。
2 被疑者取調べの監督に当たっては、被疑者又は被告人(以下単に「被疑者」という。)その他の関係者の人権に配慮しなければならない。 3 被疑者取調べの監督に当たっては、必要な限度を超えて取調べ警察官その他の関係者の業務に支障を及ぼし、又は犯罪捜査の不当な妨げとならないよう注意しなければならない。 (定義)第三条 この規則において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 被疑者取調べ 取調べ室(これに準ずる場所を含む。以下同じ。)において警察官が行う被疑者の取調べをいう。
二 監督対象行為 被疑者取調べに際し、当該被疑者取調べに携わる警察官が、被疑者に対して行う次に掲げる行為をいう。
イ やむを得ない場合を除き、身体に接触すること。
ロ 直接又は間接に有形力を行使すること(イに掲げるものを除く。)。
ハ 殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。
ニ 一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること。
ホ 便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。
ヘ 人の尊厳を著しく害するような言動をすること。
(取調べ監督官)第四条 被疑者取調べに関し次項に規定する職務を行う者(以下「取調べ監督官」という。)は、警視庁、道府県警察本部又は方面本部(以下「警察本部」という。)に置かれる取調べ室に係るものについては警察本部の被疑者取調べの監督業務を担当する課(課に準ずるものを含む。以下「取調べ監督業務担当課」という。)の警察官のうちから警視総監、道府県警察本部長又は方面本部長(以下「警察本部長」という。)が指名する者とし、警察署に置かれる取調べ室に係るものについては警察署の総務課又は警務課(課の置かれていない警察署にあっては、係を含む。)の警察官のうちから警察署長が指名する者とする。
2 取調べ監督官は、警察本部長又は警察署長の指揮を受け、次に掲げる職務を行うものとする。一 第六条第一項の規定に基づき被疑者取調べの状況の確認を行うこと。
二 第六条第三項又は同条第四項の規定に基づき被疑者取調べの中止の要求その他の必要な措置をとること。
三 第八条の規定により巡察官が行う巡察に協力すること。
四 第十条の規定により取調べ調査官が行う調査に協力すること。
五 その他法令の規定によりその権限に属させられ、又は警察本部長若しくは警察署長から特に命ぜられた事項
3 取調べ監督官の職務を行う者及びその職務を補助する者は、その担当する被疑者取調べに係る被疑者に係る犯罪の捜査に従事してはならない。 (連絡)第五条 取調べ監督官と捜査主任官(犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)第二十条(犯罪捜査規範第二百七十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する捜査主任官をいう。以下同じ。)は、被疑者取調べの監督に関し、相互に緊密な連絡を保たなければならない。
第二章 被疑者取調べの監督
(確認等)第六条 取調べ監督官は、事件指揮簿(犯罪捜査規範第十九条第二項に規定する事件指揮簿をいう。)及び取調べ状況報告書(犯罪捜査規範第百八十二条の二第一項に規定する取調べ状況報告書をいう。以下同じ。)の閲覧その他の方法により被疑者取調べの状況の確認を行うものとする。
2 取調べ監督官は、前項の確認を行った場合において、必要があると認めるときは、当該被疑者取調べに係る捜査主任官に対し、当該確認の結果を通知するとともに、当該確認の結果を明らかにしておかなければならない。 3 取調べ監督官は、第一項の確認を行った際現に監督対象行為があると認める場合には、当該被疑者取調べに係る捜査主任官に対し、被疑者取調べの中止その他の措置を求めることができる。 この場合において、捜査主任官は、速やかに、必要な措置を講ずるものとし、その結果を当該取調べ監督官に通知しなければならない。 4 前項の場合において、捜査主任官が現場にいないとき又は捜査主任官から要請があったときは、取調べ監督官は、自ら被疑者取調べの中止その他の措置を講ずることができる。 この場合において、当該措置を講じたときは、速やかに、その旨を捜査主任官に通知しなければならない。 (苦情の通知)第七条 警察職員は、被疑者取調べについて苦情の申出を受けたときは、速やかに、当該被疑者取調べを担当する取調べ監督官にその旨及びその内容を通知しなければならない。
(巡察)第八条 警察本部長は、必要があると認めるときは、取調べ監督業務担当課の警察官のうちから巡察官を指名し、取調べ室を巡察させるものとする。 この場合において、巡察官は、第六条第一項に規定する被疑者取調べの状況の確認を行うものとする。
2 前項に規定するもののほか、第六条第二項から第四項までの規定は、巡察官が行う巡察について準用する。 (被疑者取調べの状況等の報告)第九条 警察本部の犯罪捜査を担当する課(課に準ずるものを含む。)の長又は警察署長(以下「警察署長等」という。)は、その指揮に係る被疑者取調べに関し、取調べ状況報告書の写しの送付その他の方法により、当該被疑者取調べの状況について、取調べ監督業務担当課の長を経由して、警察本部長に報告しなければならない。
2 取調べ監督業務担当課の長又は警察署長は、その指揮に係る被疑者取調べの監督に関し、第六条第三項又は同条第四項(前条第二項の規定により準用する場合を含む。)の措置が講じられたときは、当該措置の内容について、警察本部長に(警察署長にあっては、取調べ監督業務担当課の長を経由して警察本部長に)報告しなければならない。 (調査)第十条 警察本部長は、被疑者取調べについての苦情、前条の報告その他の事情から合理的に判断して被疑者取調べにおいて監督対象行為が行われたと疑うに足りる相当な理由のあるときは、取調べ監督業務担当課の警察官のうちから調査を担当する者(以下「取調べ調査官」という。)を指名して、当該被疑者取調べにおける監督対象行為の有無の調査を行わせなければならない。
2 取調べ調査官は、調査を実施するため必要があると認めるときは、当該調査に係る被疑者取調べを指揮する警察署長等に対し、説明若しくは資料の提出を求め、又は指定する日時及び場所に当該被疑者取調べに係る捜査主任官、取調べ警察官その他の警察職員を出頭させ、説明をさせるよう求めることができる。 3 取調べ調査官は、調査が終了した後、速やかに、調査結果報告書(別記様式)を作成し、当該調査結果報告書の内容を警察本部長に報告するとともに、必要があると認めるときは、関係部署に通知しなければならない。 (監督実施状況の報告)第十一条 警視総監及び道府県警察本部長は都道府県公安委員会に対し、方面本部長は方面公安委員会に対し、毎年度少なくとも一回、被疑者取調べの監督の実施状況を報告しなければならない。
(関東管区警察局への適用)第十一条の二 関東管区警察局に置かれる取調べ室に係る取調べ監督官は、関東管区警察局総務監察部警務課の警察官のうちから関東管区警察局長が指名する者とする。
2 前項の取調べ室において行われる被疑者取調べに関する第四条第二項、第八条第一項及び第九条第二項の規定の適用については、第四条第二項中「警察本部長」とあるのは「関東管区警察局長」と、第八条第一項及び第九条第二項中「警察本部長」とあるのは「関東管区警察局長」と、「取調べ監督業務担当課」とあるのは「関東管区警察局総務監察部警務課」とする。 3 関東管区警察局の警察官(警察法(昭和二十九年法律第百六十二号)第六十一条の三第一項の規定による指示により派遣された者を含む。)が行う被疑者取調べに関する第九条第一項及び第十条の規定の適用については、第九条第一項中「警察本部の犯罪捜査を担当する課(課に準ずるものを含む。)の長又は警察署長(以下「警察署長等」という。)」とあるのは「関東管区警察局サイバー特別捜査部企画分析課長又は特別捜査課長」と、「取調べ監督業務担当課」とあるのは「関東管区警察局総務監察部警務課」と、「警察本部長」とあるのは「関東管区警察局長」と、第十条第一項中「警察本部長」とあるのは「関東管区警察局長」と、「取調べ監督業務担当課」とあるのは「関東管区警察局総務監察部警務課」と、同条第二項中「警察署長等」とあるのは「関東管区警察局サイバー特別捜査部企画分析課長又は特別捜査課長」と、同条第三項中「警察本部長」とあるのは「関東管区警察局長」とする。 4 警察庁長官(以下「長官」という。)は国家公安委員会に対し、毎年度少なくとも一回、被疑者取調べの監督の実施状況を報告しなければならない。第三章 雑則
(指導等)第十二条 長官は、この規則の適正な施行を期するため、その指名する職員に、次の各号に掲げる事項に関し、実地にその状況を点検させ、及び必要な指導を行わせることができる。
一 第四条から第十一条までに規定する事項の実施状況に関すること。
二 被疑者取調べの監督業務に関する教養その他の当該業務の円滑な運営に関すること。
2 前項の規定による点検は、関係者からの聴取り、書類の閲覧、実地の視察その他適当な方法により実施するものとする。 3 第一項の規定による点検及び指導(以下「指導等」という。)は、原則として毎年度一回、皇宮警察本部及び関東管区警察局並びに全ての都道府県警察に対して実施するものとする。 4 前三項に定めるもののほか、指導等の実施に関し必要な事項の細目は、長官が定める。 (国家公安委員会への報告)第十三条 長官は、国家公安委員会に対し、毎年度少なくとも一回、この規則の施行状況を報告しなければならない。
(皇宮護衛官への準用)第十四条 第二条から第十一条までの規定は、皇宮護衛官が行う被疑者取調べについて準用する。 この場合において、「取調べ警察官」とあるのは「取調べ皇宮護衛官」と、「警察官」とあるのは「皇宮護衛官」と、「警視庁、道府県警察本部又は方面本部(以下「警察本部」という。)」とあるのは「皇宮警察本部」と、「警視総監、道府県警察本部長又は方面本部長(以下「警察本部長」という。)」とあるのは「皇宮警察本部長」と、「警察署」とあるのは「護衛署」と、「警察署長」とあるのは「護衛署長」と、「犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)第二十条(犯罪捜査規範第二百七十五条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する捜査主任官」とあるのは「皇宮警察本部長が定めるところにより犯罪捜査規範(昭和三十二年国家公安委員会規則第二号)第二十条に規定する捜査主任官に相当する職務を行う者」と、「犯罪捜査規範第十九条第二項に規定する事件指揮簿」とあるのは「皇宮警察本部長が定めるところにより犯罪捜査規範第十九条第二項に規定する事件指揮簿に相当する書類」と、「犯罪捜査規範第百八十二条の二第一項に規定する取調べ状況報告書」とあるのは「皇宮警察本部長が定めるところにより犯罪捜査規範第百八十二条の二第一項に規定する取調べ状況報告書に相当する書類」と、「警察署長等」とあるのは「護衛署長等」と、「警視総監及び道府県警察本部長」とあるのは「警察庁長官」と、「都道府県公安委員会」とあるのは「国家公安委員会」と読み替えるものとする。
附則
この規則は、平成二十一年四月一日から施行する。附則(平成二三年三月三一日国家公安委員会規則第四号)
この規則は、平成二十三年四月一日から施行する。附則(平成三一年四月二六日国家公安委員会規則第六号)
この規則は、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成二十八年法律第五十四号)の施行の日(平成三十一年六月一日)から施行する。附則(令和元年六月二一日国家公安委員会規則第三号)
この規則は、令和元年七月一日から施行する。 この規則による改正前の犯罪捜査規範、国際捜査共助等に関する法律に関する書式例、警備員指導教育責任者及び機械警備業務管理者に係る講習等に関する規則、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則、風俗環境浄化協会等に関する規則、遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則、地域交通安全活動推進委員及び地域交通安全活動推進委員協議会に関する規則、自動車の保管場所の確保等に関する法律施行規則、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律施行規則、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に基づく意見聴取の実施に関する規則、審査専門委員に関する規則、暴力追放運動推進センターに関する規則、交通事故調査分析センターに関する規則、盲導犬の訓練を目的とする法人の指定に関する規則、原動機を用いる歩行補助車等の型式認定の手続等に関する規則、届出自動車教習所が行う教習の課程の指定に関する規則、技能検定員審査等に関する規則、運転免許に係る講習等に関する規則、外国等の行政庁等の免許に係る運転免許証の日本語による翻訳文を作成する能力を有する法人の指定に関する規則、自転車の防犯登録を行う者の指定に関する規則、特定物質の運搬の届出等に関する規則、古物営業法施行規則、交通安全活動推進センターに関する規則、不正アクセス行為の再発を防止するための都道府県公安委員会による援助に関する規則、無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律の規定に基づく警察庁長官の意見の陳述等の実施に関する規則、運転免許取得者教育の認定に関する規則、ストーカー行為等の規制等に関する法律施行規則、ストーカー行為等の規制等に関する法律の規定に基づく意見の聴取の実施に関する規則、国家公安委員会関係自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律施行規則、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律施行規則、インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律施行規則、配偶者からの暴力等による被害を自ら防止するための警察本部長等による援助に関する規則、確認事務の委託の手続等に関する規則、携帯音声通信役務提供契約に係る契約者確認に関する規則、警備員等の検定等に関する規則、届出対象病原体等の運搬の届出等に関する規則、遺失物法施行規則、犯罪による収益の移転防止に関する法律の規定に基づく事務の実施に関する規則、少年法第六条の二第三項の規定に基づく警察職員の職務等に関する規則、被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則、猟銃及び空気銃の取扱いに関する講習会及び年少射撃資格の認定のための講習会の開催に関する事務の一部を行わせることができる者の指定に関する規則、行方不明者発見活動に関する規則、国家公安委員会関係警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律施行規則、死体取扱規則、国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法施行規則、国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法の規定に基づく意見の聴取の実施に関する規則及び重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律施行規則に規定する様式による書面については、この規則による改正後のこれらの規則に規定する様式にかかわらず、当分の間、なおこれを使用することができる。附則(令和四年三月三一日国家公安委員会規則第一三号)
この規則は、令和四年四月一日から施行する。 この規則による改正前の様式(次項において「旧様式」という。)により使用されている書類は、当分の間、この規則による改正後の様式によるものとみなす。 旧様式による用紙については、当分の間、これを取り繕って使用することができる。附則(令和六年三月二九日国家公安委員会規則第七号)
この規則は、令和六年四月一日から施行する。別記様式
(第10条関係)[PDF]