第一条 この法律は、重要影響事態(重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成十一年法律第六十号。以下「重要影響事態安全確保法」という。)第一条に規定する重要影響事態をいう。以下同じ。)又は国際平和共同対処事態(国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律(平成二十七年法律第七十七号。以下「国際平和協力支援活動法」という。)第一条に規定する国際平和共同対処事態をいう。以下同じ。)に対応して我が国が実施する船舶検査活動に関し、その実施の態様、手続その他の必要な事項を定め、重要影響事態安全確保法及び国際平和協力支援活動法と相まって、我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資することを目的とする。
(定義)第二条 この法律において「船舶検査活動」とは、重要影響事態又は国際平和共同対処事態に際し、貿易その他の経済活動に係る規制措置であって我が国が参加するものの厳格な実施を確保する目的で、当該厳格な実施を確保するために必要な措置を執ることを要請する国際連合安全保障理事会の決議に基づいて、又は旗国(海洋法に関する国際連合条約第九十一条に規定するその旗を掲げる権利を有する国をいう。)の同意を得て、船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であって非商業的目的のみに使用されるもの(以下「軍艦等」という。)を除く。)の積荷及び目的地を検査し、確認する活動並びに必要に応じ当該船舶の航路又は目的港若しくは目的地の変更を要請する活動であって、我が国が実施するものをいう。
(船舶検査活動の実施)第三条 重要影響事態における船舶検査活動は、自衛隊の部隊等(自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)第八条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)が実施するものとする。
2 国際平和共同対処事態における船舶検査活動は、自衛隊の部隊等が実施するものとする。 (基本計画に定める事項)第四条 重要影響事態における船舶検査活動の実施に際しては、次に掲げる事項を重要影響事態安全確保法第四条第一項に規定する基本計画に定めるものとする。
一 当該船舶検査活動に係る基本的事項
二 当該船舶検査活動を行う自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに当該船舶検査活動又はその実施に伴う前条第一項後段の後方支援活動を外国の領域で実施する場合には、これらの活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の装備及び派遣期間
三 当該船舶検査活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項
四 第二条に規定する規制措置の対象物品の範囲
五 当該船舶検査活動の実施に伴う前条第一項後段の後方支援活動の実施に関する重要事項(当該後方支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項を含む。)
六 その他当該船舶検査活動の実施に関する重要事項
2 国際平和共同対処事態における船舶検査活動の実施に際しては、次に掲げる事項を国際平和協力支援活動法第四条第一項に規定する基本計画に定めるものとする。一 当該船舶検査活動に係る基本的事項
二 当該船舶検査活動を行う自衛隊の部隊等の規模及び構成並びに当該船舶検査活動又はその実施に伴う前条第二項後段の協力支援活動を外国の領域で実施する場合には、これらの活動を外国の領域で実施する自衛隊の部隊等の装備及び派遣期間
三 当該船舶検査活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項
四 第二条に規定する規制措置の対象物品の範囲
五 当該船舶検査活動の実施に伴う前条第二項後段の協力支援活動の実施に関する重要事項(当該協力支援活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項を含む。)
六 その他当該船舶検査活動の実施に関する重要事項
3 船舶検査活動又は重要影響事態における船舶検査活動の実施に伴う前条第一項後段の後方支援活動若しくは国際平和共同対処事態における船舶検査活動の実施に伴う同条第二項後段の協力支援活動を外国の領域で実施する場合には、当該外国(重要影響事態安全確保法第二条第四項又は国際平和協力支援活動法第二条第四項に規定する機関がある場合にあっては、当該機関)と協議して、実施する区域の範囲を定めるものとする。 (船舶検査活動の実施の態様等)第五条 防衛大臣は、前条第一項又は第二項の基本計画(第五項において単に「基本計画」という。)に従い、船舶検査活動について、実施要項を定め、これについて内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊等にその実施を命ずるものとする。
2 防衛大臣は、前項の実施要項において、実施される必要のある船舶検査活動の具体的内容を考慮し、自衛隊の部隊等がこれを円滑かつ安全に実施することができるように当該船舶検査活動を実施する区域(以下この条において「実施区域」という。)を指定するものとする。 3 船舶検査活動の実施の態様は、別表に掲げるものとする。 4 防衛大臣は、実施区域の全部又は一部において、自衛隊の部隊等が船舶検査活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合又は重要影響事態において外国の領域で実施する船舶検査活動についての重要影響事態安全確保法第二条第四項の同意若しくは国際平和共同対処事態において外国の領域で実施する船舶検査活動についての国際平和協力支援活動法第二条第四項の同意が存在しなくなったと認める場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。 5 前項に定めるもののほか、防衛大臣は、実施区域の全部又は一部がこの法律又は基本計画に定められた要件を満たさないものとなった場合には、速やかに、その指定を変更し、又はそこで実施されている活動の中断を命じなければならない。 6 第一項の規定は、同項の実施要項の変更(前二項の規定により実施区域を縮小する変更を除く。)について準用する。 7 重要影響事態安全確保法第六条の規定は重要影響事態における船舶検査活動の実施に伴う第三条第一項後段の後方支援活動について、国際平和協力支援活動法第七条の規定は国際平和共同対処事態における船舶検査活動の実施に伴う第三条第二項後段の協力支援活動について、それぞれ準用する。 (武器の使用)第六条 前条第一項の規定により船舶検査活動の実施を命ぜられ、又は同条第七項において準用する重要影響事態安全確保法第六条第二項の規定により重要影響事態における船舶検査活動の実施に伴う第三条第一項後段の後方支援活動としての自衛隊の役務の提供の実施を命ぜられ、若しくは前条第七項において準用する国際平和協力支援活動法第七条第二項の規定により国際平和共同対処事態における船舶検査活動の実施に伴う第三条第二項後段の協力支援活動としての自衛隊の役務の提供の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官は、自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員(自衛隊法第二条第五項に規定する隊員をいう。第五項において同じ。)若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器(自衛隊が外国の領域で当該船舶検査活動又は当該後方支援活動若しくは当該協力支援活動を実施している場合については、第四条第一項第二号又は第二項第二号の規定により基本計画に定める装備に該当するものに限る。以下この条において同じ。)を使用することができる。
2 前項の規定による武器の使用は、当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。 3 第一項の場合において、当該現場に在る上官は、統制を欠いた武器の使用によりかえって生命若しくは身体に対する危険又は事態の混乱を招くこととなることを未然に防止し、当該武器の使用が同項及び次項の規定に従いその目的の範囲内において適正に行われることを確保する見地から必要な命令をするものとする。 4 第一項の規定による武器の使用に際しては、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。 5 自衛隊法第九十六条第三項の規定は、前条第一項の規定により船舶検査活動(我が国の領域外におけるものに限る。)の実施を命ぜられ、又は同条第七項において準用する重要影響事態安全確保法第六条第二項の規定により重要影響事態における船舶検査活動の実施に伴う第三条第一項後段の後方支援活動としての自衛隊の役務の提供(我が国の領域外におけるものに限る。)の実施を命ぜられ、若しくは前条第七項において準用する国際平和協力支援活動法第七条第二項の規定により国際平和共同対処事態における船舶検査活動の実施に伴う第三条第二項後段の協力支援活動としての自衛隊の役務の提供(我が国の領域外におけるものに限る。)の実施を命ぜられた自衛隊の部隊等の自衛官については、自衛隊員以外の者の犯した犯罪に関しては適用しない。 (政令への委任)第七条 この法律に特別の定めがあるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、政令で定める。
附則
この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。附則(平成一八年一二月二二日法律第一一八号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則(平成二七年九月三〇日法律第七六号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
別表 (第五条関係)
番号 | 区分 | 実施の態様 |
一 | 航行状況の監視 | 船舶の航行状況を監視すること。 |
二 | 自己の存在の顕示 | 航行する船舶に対し、必要に応じて、呼びかけ、信号弾及び照明弾の使用その他の適当な手段(実弾の使用を除く。)により自己の存在を示すこと。 |
三 | 船舶の名称等の照会 | 無線その他の通信手段を用いて、船舶の名称、船籍港、船長の氏名、直前の出発港又は出発地、目的港又は目的地、積荷その他の必要な事項を照会すること。 |
四 | 乗船しての検査、確認 | 船舶(軍艦等を除く。以下同じ。)の船長又は船長に代わって船舶を指揮する者(以下「船長等」という。)に対し当該船舶の停止を求め、船長等の承諾を得て、停止した当該船舶に乗船して書類及び積荷を検査し、確認すること。 |
五 | 航路等の変更の要請 | 船舶に第二条に規定する規制措置の対象物品が積載されていないことが確認できない場合において、当該船舶の船長等に対しその航路又は目的港若しくは目的地の変更を要請すること。 |
六 | 船長等に対する説得 | 四の項の求め又は五の項の変更の要請に応じない船舶の船長等に対し、これに応じるよう説得を行うこと。 |
七 | 接近、追尾等 | 六の項の説得を行うため必要な限度において、当該船舶に対し、接近、追尾、伴走及び進路前方における待機を行うこと。 |