公営住宅法(昭和26年法律第193号、法令ID:326AC1000000193)は、低額所得者に低廉な家賃で住宅を供給するため、公営住宅の整備、入居、家賃、管理、建替えを定めます。入居を検討する人や自治体の住宅担当者が、公募や収入申告などの根拠を確認する際に参照する法律です。この記事では制度の基本を扱い、特定の募集への応募資格や世帯ごとの家賃は判定しません。法令全文e-Govの条文に基づき、2026年9月15日時点の内容を説明します。

建設だけでなく買取り・借上げで供給する

第1条は、国と地方公共団体が協力して健康で文化的な生活に足りる住宅を整備し、住宅に困窮する低額所得者へ賃貸・転貸することを目的としています。住宅を整備する方法は、自治体が直接建設することに限られません。

第2条の公営住宅は、地方公共団体が建設、買取り、借上げを行い、低額所得者に賃貸・転貸するための住宅と附帯施設で、法律に基づく国の補助に係るものです。同条は「建設等」「整備」「供給」も分けています。整備には借上げが含まれ、供給は整備と管理を合わせた概念です。

この区分は入居後の制度にもつながります。借上げ住宅は、自治体自身が所有している場合と異なり、借上げ契約の期間が関係します。第25条第2項は、借上げ住宅の入居者を決定した場合、借上げ期間満了時の明渡しについて通知することを求めています。公営住宅という名称だけで建物の所有や供給方法を同じものと考えず、建設・買取り・借上げのどれであるかも把握する制度です。根拠:第1条・第2条・第25条

公募と入居資格、応募超過時の選考

第22条は入居者の公募を原則とします。災害、住宅撤去、借上げ契約の終了、建替事業など、条文や政令が定める特別な理由がある場合は別の扱いが設けられています。

第23条は入居者の条件として、収入に関する条件と、現に住宅に困窮していることが明らかであることを挙げています。収入の基準は、政令上の金額と自治体の条例を組み合わせる構成です。心身の状況、世帯構成、地域の住宅事情等により居住の安定を図る必要がある場合についても、条例で定める仕組みになっています。法律だけから全国共通の一つの月収額を取り出せるわけではありません。

申込者が募集戸数を超える場合は、第25条により住宅困窮の実情を調査し、政令の選考基準に従って条例で定める公正な方法で選考します。「条件を満たすこと」と「実際に入居者として選ばれること」は別の段階です。公募の対象、資格の条件、申込超過時の選考を分けて読むと、自治体が公表する募集要項の各項目が法律のどこにつながるかを整理できます。根拠:第22条・第23条・第25条

収入と住宅の条件に応じて家賃を決める

第16条は、公営住宅の家賃を毎年度、入居者の収入申告に基づいて定めると規定しています。家賃は入居時に一度決めて終わる制度ではなく、収入と住宅の条件に応じて算定します。

考慮する要素には、収入のほか立地条件、規模、建設時からの経過年数などがあります。また、近傍同種の住宅の家賃以下とする枠が置かれ、具体的な算定は政令に委ねられています。近傍同種の家賃自体も、住宅と敷地の時価、修繕費、管理事務費等を踏まえ、事業主体が毎年度定める仕組みです。

同条には、収入申告がなく、さらに報告請求にも応じない場合の家賃や、一定の事情により申告等が困難な入居者への収入把握の制度もあります。したがって、申告がない場合の扱いを一律に説明するのではなく、条文が分ける条件を読む必要があります。公営住宅の家賃は、住宅そのものの条件と世帯の収入を結び付ける制度であり、入居者による情報提供もその運営の一部に組み込まれています。根拠:第16条

入居後の使用と収入超過への対応

第27条は、住宅・共同施設を正常な状態に維持すること、他人への貸付けや入居権の譲渡の禁止、用途変更等の制限を定めています。供給目的に沿って住宅を利用し続けるための規定です。

同居者の追加や、入居者の死亡・退去後に同居者が引き続き住む場合には、事業主体の承認に関する規定があります。家族が住んでいたという事実だけで、契約上の扱いを自動的に引き継ぐ構成ではありません。模様替えや増築にも原則と承認による例外が置かれています。

収入が増えた場合は、第28条の収入超過者と第29条の高額所得者の制度が区別されます。前者は継続3年以上の入居と所定の収入超過を前提とする明渡しの努力義務等、後者は継続5年以上の入居と最近2年間の高額収入等を前提とする明渡し請求等を定めています。収入が基準を超えれば直ちに同じ措置になるという仕組みではありません。入居期間、収入の継続、家賃の扱い、明渡しの手続をそれぞれ条文で区分しています。根拠:第27~29条

建替えに伴う明渡しと再入居

第4章は公営住宅建替事業を扱います。古い建物を除却して新しい住宅を整備するだけでなく、現在の入居者の明渡しと新しい住宅への入居も制度に含めています。

第35条は、公営住宅の整備促進や居住環境の整備に必要な場合、地方公共団体が建替事業を行うよう努めると定めます。第38条は、事業に伴い住宅を除却するため必要なとき、所定の通知後に期限を定めて明渡しを請求できると規定します。入居者の契約違反等を理由とする第32条の明渡しとは別の根拠です。

第40条は、所定の要件を満たす従前の入居者が、事業主体の定める期間内に希望を申し出た場合、新たに整備する住宅へ入居させる制度を置きます。申出期間の通知や入居できる期間の指定も規定されています。建替えでは、通常の新規公募の仕組みだけでなく、従前の居住との連続性を扱う特則があります。公営住宅法が「整備」と「管理」を一つの供給制度として扱うことが、この建替えと再入居の仕組みにも表れています。根拠:第32条・第35条・第38条・第40条

建物の修繕と収入調査を事業主体が担う

公営住宅の管理は、入居者だけに義務を課す制度ではありません。第21条は、壁、基礎、柱、床、屋根、階段などの建物部分と、給水・排水・電気等の附帯施設について、修繕の必要が生じたときに事業主体が遅滞なく修繕する義務を定めています。入居者の責めに帰すべき事由による場合は、同条のただし書で区別されています。

この修繕義務は、第27条の入居者による正常な状態の維持と並ぶ規定です。入居者による日常の使用と、供給した側が建物・設備を維持する仕事を、別の主体の役割として置いています。管理を家賃の徴収だけに限らず、住宅としての状態を保つことまで含めている点が重要です。

収入に応じた制度を動かすため、第34条は必要な調査の仕組みを定めます。家賃の決定や減免、徴収猶予、所定の明渡し請求などに必要がある場合、事業主体の長は入居者や雇主、取引先その他の関係人に収入状況の報告を求め、官公署に必要書類の閲覧等を求めることができます。収入申告の制度を、行政側の確認手段でも支えています。

修繕が建物の状態を維持する仕事であるのに対し、収入調査は家賃等の決定に必要な情報を確かめる仕事です。住宅の管理では、設備の状態と入居世帯の状況という二つの情報が、異なる根拠で扱われています。法令上の事業主体の役割を読むと、入居後の管理が設備面と経済面にまたがることが分かります。根拠:第21条・第27条・第34条

参考リンク

入居・家賃・建替えの制度上の根拠は、次の条文を参照できます。