高次脳機能障害者支援法(令和7年法律第96号、法令ID:507AC1000000096)は、高次脳機能障害者の生活全般にわたる支援について、基本理念、国等の責務、生活・教育・就労の施策と相談体制を定めています。法令全集e-Gov法令検索で確認できます。当事者や家族、医療・福祉・教育・雇用の支援関係者が、制度上の役割を調べる際に参照します。この記事は支援施策の構成を扱い、医学的な診断、治療法、個別サービスの受給判定は扱いません。

法律は2026年4月1日施行です。以下は2026年9月15日時点の施行済み条文を参照しています。

障害の状態と社会的障壁を併せて捉える

第2条は、高次脳機能障害について、疾病や事故による脳の器質的病変に起因すると認められる認知機能の障害として、政令で定めるものとしています。記憶、注意、遂行機能、社会的行動等の障害が条文に挙げられていますが、定義の具体的な範囲は施行令と併せて確認する制度です。

同条は、高次脳機能障害者を、障害と社会的障壁によって日常生活又は社会生活に制限を受ける者として定義します。本人の認知機能の状態だけでなく、制度、慣行、考え方その他の環境上の障壁も含めて捉えています。診断名の一覧だけで支援の全体を説明する法律ではありません。

第3条は本人の意思の尊重、自立・社会参加の機会、尊厳、社会的障壁の除去を基本理念に置いています。支援は年齢や生活の実態等に応じ、意思決定の支援に配慮して行うこととされています。医療から地域生活、社会参加までを切れ目なくつなぐことと、居住する地域にかかわらず適切な支援を受けられることが、この法律を読む中心になります。根拠:第2条・第3条

地域生活・教育・就労を連続した支援として扱う

第11条は地域生活について、社会生活への適応のための訓練機会、住居の確保、社会的活動への参加等の支援に努めることを定めています。医療機関を退院した後の暮らしや生活の質も対象です。支援を医療の提供だけに限定せず、希望する地域生活へつなぐ規定になっています。

第12条の教育的支援には、対象となる児童生徒等への支援、個別の教育支援計画と指導計画、いじめ防止等の体制整備が含まれます。大学・高等専門学校にも、特性に応じた教育上の配慮を定めています。年齢と在籍先に応じた規定があり、学校での支援と医療・福祉等の連携も組み込まれています。

第13条は就労機会の確保と就労定着の支援を扱います。公共職業安定所、地域障害者職業センター等の関係機関の連携に加え、事業主による能力の適正な評価や特性に応じた雇用管理の努力を定めています。就職の入口だけでなく、働き続ける段階も対象です。生活、学習、就労を別々の窓口の問題として終わらせない構成に、この法律の特徴があります。根拠:第11条から第13条

家族の相談と権利利益の擁護を支援に含める

第16条は、家族その他の関係者に対する相談、情報提供、助言、家族が互いに支え合う活動等への支援に努めることを定めています。支援の対象を本人へのサービス提供に限らず、周囲の人が適切に対応するための支援まで広げています。

第17条は、本人・家族等の相談に総合的に応じる体制を、医療、保健、福祉、教育、労働の関係機関・民間団体の連携の下に整備する規定です。第18条は、個人情報保護へ十分に配慮しながら支援に資する情報共有を進めることを定めます。連携を進めることと、情報を無制限に共有することは同じではありません。

第14条は差別、いじめ、虐待、消費生活上の被害等からの権利利益の擁護、第15条は司法手続での意思疎通手段等への配慮を扱います。生活訓練や就労支援だけでは対応しきれない社会生活上の場面にも規定があります。本人の意思を尊重する基本理念が、相談や権利行使の支援にもつながっていることを確認できます。根拠:第14条から第18条

支援センターは専門相談と関係機関の調整を担う

第19条は、都道府県知事が、適正・確実に業務を行えると認めて指定した者に支援センターの業務を行わせ、又は自ら行えると定めています。すべての都道府県が同じ名称・形態の新施設を必ず一つ建設するという規定ではなく、業務とその担い方を定める制度です。

業務には、本人・家族等への専門相談、情報提供・助言、特性に応じた専門支援、関係者への情報提供と研修、関係機関との連絡調整が含まれます。本人に直接対応する機能と、地域の支援者を支える機能が同じ条文に置かれています。可能な限り身近な場所で必要な支援を受けられるよう配慮する規定もあります。

第20条はセンターの役職員等の秘密保持、第21条から第23条は報告徴収、改善命令、指定取消しを定めます。指定して業務を任せるだけでなく、適正な運営を確認する仕組みがあります。第24条の専門的医療機関の確保とは別の制度であり、支援センターへの相談と診断・治療を行う医療機関の機能は区別されています。根拠:第19条から第24条

地域協議会と人材育成で支援体制を整える

第25条は、都道府県が高次脳機能障害者支援地域協議会を置くよう努めると定めています。本人・家族、学識経験者、医療・福祉・教育・労働等の関係機関や民間団体などで構成し、地域の支援体制の課題を共有して、連携と体制整備を協議する仕組みです。

支援センターが専門相談や調整等の業務を担うのに対し、地域協議会は地域全体の課題や体制を話し合う場です。第29条には専門人材の確保・養成・資質向上、第30条には実態把握や調査研究等も規定されています。一つの窓口を置くだけでなく、支援者の知識や地域の連携を継続的に整える構成です。

条文は「責務」「必要な措置」「努める」などを使い分けています。例えばセンター業務は知事が行わせ又は自ら行うことができる規定、地域協議会は設置の努力義務です。これらを一律の給付請求権や施設設置義務として読み替えず、主体と行為を区別すると、国・自治体・事業主・支援機関の役割を把握できます。制度の具体化については厚生労働省の関係通知も確認先になります。根拠:第4条から第10条・第25条・第29条・第30条

参考リンク

施行済みの法制度と通知は、次の一次資料で確認できます。