食品表示法(平成25年法律第70号、法令ID:425AC0000000070)は、食品を安全に摂取し、合理的に選ぶための表示基準と、その遵守・監督の仕組みを定めます。食品の製造・輸入・販売に関わる担当者や表示を調べる消費者が、基準の根拠や不適正表示への対応を確認する際に参照する法律です。この記事では法律と食品表示基準の分担、指示・命令、回収の届出等を扱い、個別商品の表示案の適否は判断しません。法令全文e-Govの条文に基づき、2026年9月15日時点の内容を説明します。

安全性と商品選択のための表示を一緒に扱う

第1条は、食品表示が安全性の確保と自主的・合理的な選択の両方で重要な役割を果たすことを示しています。危険を避ける情報だけでなく、消費者が商品を比較し選ぶための情報も制度の対象です。

第3条の基本理念も、消費者の安全、選択の機会、必要な情報の提供を重視しています。他方、施策を講ずる際には、生産・取引・消費の状況、小規模事業者への影響、公正な競争にも配慮すると定めています。表示の項目を増やすことだけではなく、消費者の情報と事業活動を踏まえて制度を設計する構成です。

第2条の食品の定義は添加物を含み、医薬品等を除いています。また、第1条の販売には、不特定または多数への販売以外の譲渡も含まれます。さらに「食品関連事業者等」は、製造・加工・輸入・販売を業とする一定の者だけでなく、それ以外で食品を販売する者も含む定義です。対象を「食品メーカーの有料販売だけ」と狭く理解せず、食品、販売、事業者等という用語を条文で確認することが出発点になります。根拠:第1~3条

法律が委任し、食品表示基準が細目を定める

第4条は、内閣総理大臣が内閣府令で食品表示基準を定めると規定しています。法律がすべての商品の表示方法を直接列挙するのではなく、食品と事業者等の区分ごとに必要な事項を具体化する仕組みです。

同条が掲げる表示事項には、名称、アレルゲン、保存方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分・熱量、原産地などがあります。併せて、表示の方法その他の遵守事項も基準の対象となります。つまり「何を表示するか」と「どのように表示するか」が区別されており、項目名を並べるだけでは基準の確認は完了しません。

基準の策定時には、厚生労働大臣、農林水産大臣、財務大臣との協議と、消費者委員会の意見聴取が定められています。第5条は、その食品表示基準に従った表示のない食品を販売してはならないと規定します。具体的な対象品目、表示順序、例外、改正時の経過措置は、法律とは別に基準やその附則で調べることになります。消費者庁の法令・食品表示基準のページでは、法律、政令、内閣府令を分けて掲載しています。根拠:第4条・第5条

不適正な表示への指示・命令と公表

第6条は、表示事項がない場合や遵守事項に従わない場合の指示等を規定しています。食品の種類や表示事項に応じて、内閣総理大臣、農林水産大臣、財務大臣の役割を分けています。

酒類以外の食品と酒類では関係する大臣が異なり、一定の表示事項については内閣総理大臣が担当する構成です。第6条は指示に加えて命令の制度も設けており、表示上の問題がどの事項に関するものか、どのような段階の措置かを区別して読みます。第7条は、指示または命令を行った場合に、その旨を公表することを定めています。

第8条には報告徴収、帳簿・書類等の提出、立入検査などがあります。表示の印刷面だけでなく、食品や原材料、帳簿等を調べる仕組みを置くことで、記載内容と取扱いの実態を確認する構成です。権限は条文上主体ごとに分けられており、すべての機関が同じ範囲の検査を行うという説明にはなりません。法律の監督規定は、基準の設定、事業者の遵守、確認、是正、公表をつなげています。根拠:第6~8条

自主回収を行うときの届出制度

第10条の2は、一定の表示違反がある食品を回収する場合の届出を定めています。食品の自主回収をすべて同じ条件で届け出る規定ではなく、対象となる表示事項と除外事由があります。

対象は、第6条第8項の内閣府令で定める事項について、食品表示基準に従った表示のない食品を販売した場合です。その食品を回収するときには、回収に着手した旨と回収状況を、内閣府令に従って遅滞なく届け出ることになります。第6条第8項の命令を受けて行う回収や、危害のおそれがないとして内閣府令で定める場合は、同条の届出対象から除かれています。

届出を受けた内閣総理大臣には、その旨の公表が求められます。第7条による行政の指示・命令の公表とは、根拠もきっかけも異なります。回収の届出制度を読むときは、まず問題となる表示事項を特定し、回収に関する条項と対応する府令へ進む必要があります。単なる包装の変更や販売中止と、法定の回収届出を混同しないことが、制度の範囲を理解するポイントです。根拠:第10条の2

消費者団体の差止請求と行政への申出

食品表示法は、行政の検査・命令だけでなく、適格消費者団体による差止請求と、何人も行える申出を設けています。二つは主体と請求先、対象となる行為が異なります。

第11条は、不特定多数に対し、食品表示基準に違反して一定の事項について著しく事実に相違する表示を行い、または行うおそれがある場合を対象とします。適格消費者団体は、停止・予防や必要な周知等を求めることができます。一般の消費者すべてに同じ差止請求権を与えるという条文ではありません。

第12条は、表示が適正でないため一般消費者の利益が害されていると認める場合、何人も所定の手続で行政に申し出て適切な措置を求められると定めます。酒類かどうか、表示事項が何かによって申出先の大臣が分かれます。行政は必要な調査を行い、内容が事実と認めるときは適切な措置を講じる構成です。商品表示の是正を促す制度として、事業者への差止請求と行政に調査・措置を求める申出を、法律が別々に用意しています。根拠:第11条・第12条

安全に重要な表示には緊急命令の規定がある

表示への行政対応の中でも、第6条第8項は、消費者の生命や身体への危害を防ぐための緊急の措置を定めています。対象として条文が挙げるのは、アレルゲン、消費期限、安全に食べるために加熱が必要かどうかなど、安全性に重要な影響を及ぼす事項です。具体的な範囲は内閣府令と接続しています。

これらの事項について基準に従った表示がない食品を販売し、または販売しようとする場合で、危害の発生や拡大を防ぐため緊急の必要があると認められるとき、内閣総理大臣は回収その他の必要な措置を命じることができます。期間を定めた業務の全部または一部の停止も規定されています。商品を選ぶ情報の誤りと、直ちに安全性へ関わる情報の問題について、同じ対応だけを用意しているわけではありません。

同条第5項は、正当な理由なく指示に係る措置を取らなかった場合の命令を扱います。これに対し第8項は、生命・身体への危害と緊急の必要性を要件とする命令です。さらに第10条の2の自主回収届出では、第8項の命令に基づく回収を対象から除いています。行政が命じる回収と事業者が自ら行う回収は関連しますが、同じ手続として重ねるのではなく、それぞれの根拠と発動条件を分けています。根拠:第6条第5項・第8項、第10条の2

参考リンク

法律と表示の細目は、次の資料を分けて確認できます。