犯罪による収益の移転防止に関する法律施行規則(法令ID:420M60000F5A001)は、取引時確認の方法、本人確認書類、確認記録・取引記録等の作成方法などを定める共同命令です。顧客管理や記録保存を担当する人が、法律・施行令の委任する細目を確認する際に参照します。この記事では確認から継続的な管理までを扱い、個別取引の届出要否や特定の本人確認サービスの適合性は判断しません。条文は法令全集とe-Gov法令検索に掲載されています。
2026年9月15日時点で、2026年8月6日施行版を参照しています。正式名称は長いため、以下では「施行規則」と表記します。
法律の確認義務を方法別に具体化する
施行規則は、特定事業者の範囲や確認義務を単独で完結させる法令ではありません。第1条は特定事業者、顧客等、本人特定事項、取引時確認などを法律の定義に結びつけています。対象業務や取引の範囲は法律・施行令を出発点とし、施行規則で確認方法をたどる構造です。
第6条は顧客等の本人特定事項の確認方法を、自然人、法人等の区分に応じて規定します。第7条はその方法に用いる本人確認書類を定めています。書類の種類と確認方法は一対一の単純な対応ではなく、提示、送付、電磁的な情報の受信、取引関係文書の送付などを組み合わせる類型があります。
そのため、本人確認書類の画像を保存したという事実だけでは、どの条項の確認方法によったかを説明できません。第6条の該当する号・細分と、第7条の書類区分、追加措置の有無を合わせて読む必要があります。第7条ただし書は、有効期間がある書類の有効性や、一定の書類の作成時期についても条件を置いています。
また、第12条は代表者等の本人特定事項の確認を扱います。法人そのものについての確認と、実際に取引に当たる人についての確認は別の対象です。規則はこの対象の違いを踏まえた準用・読替えを設けており、「法人の書類があるから担当者の確認も終わる」という構成にはなっていません。根拠:第1条、第6条・第7条、第12条
取引目的・職業・実質的支配者の確認
本人特定事項の確認は取引時確認の一部です。第9条は取引を行う目的について、顧客等または代表者等から申告を受ける方法を定めます。第10条は自然人の職業等と法人の事業内容を区分し、自然人等については申告、法人については定款や事業内容を確認できる書類等による方法を規定しています。
第11条は実質的支配者の確認を扱います。法人名や登記上の代表者を把握することと、その法人を実質的に支配する者を把握することは異なります。同条は法人の区分に応じて実質的支配者を定義し、その確認方法を定めています。議決権等の条件を読む際には、定義の本文だけでなく、除外や支配関係の扱いを含む同条全体が関係します。
第14条には、厳格な顧客管理を行う必要性が特に高い取引の確認方法が置かれています。また、第15条は外国政府等で重要な地位を占める者の範囲を具体化しています。通常の確認方法を整備する作業と、特定の取引類型で追加の確認が必要になる仕組みの整理は分けて行う必要があります。
この規則では、取引目的を申告で確認すること、事業内容を書類で確認すること、実質的支配者の定義に従って申告を受けることがそれぞれ独立した項目になっています。すべての事項に同じ書類や同じ確認手法を当てはめるのではなく、法律が挙げる確認項目ごとに方法を対応させるのが条文の構造です。根拠:第9条〜第15条
確認記録と取引記録を結びつけて保存する
第19条は確認記録の作成方法を定め、文書・電磁的記録等による作成と、採用した確認方法に応じた資料の添付を扱います。第20条は確認担当者、記録作成者、書類の提示・送付等の日付などの記録事項を規定しています。確認方法が違えば残す情報も異なるため、書類の写しだけを一律に保管するという説明では不十分です。
第21条は確認記録の保存期間の起算日を定めます。確認を実施した日だけを起点とするのではなく、取引終了日と、取引時確認済みの取引に係る取引終了日のうち後に来る日を用いる構成です。契約の終了日と、個別取引の実施日も取引区分に応じて使い分けています。
一方、第23条・第24条は取引記録等の作成方法と記録事項です。口座番号等の確認記録を検索するための事項、取引日、種類、財産の価額、財産移転に関する情報などを扱います。確認記録が顧客確認の経過を残し、取引記録等が実際の財産移転等を残すという役割分担があり、検索情報によって両者を結びつけます。
第16条には、既に確認した顧客であることを確認する方法と記録に関する規定もあります。初回の確認記録が存在することと、今回の取引相手がその顧客と同一であることを確かめることは別の作業です。記録管理では、初回確認、後続取引、契約の終了を時系列でつなぐ仕組みが重要になります。根拠:第16条、第19条〜第24条
疑わしい点の確認と継続的な顧客管理
第26条は疑わしい点を確認する項目として、他の顧客との通常の取引との比較、その顧客の過去の取引との比較、取引時確認の結果等との整合性を挙げています。単一の金額だけを見る規定ではなく、取引の態様と顧客情報を組み合わせる構成です。事業者の区分に応じて、特定受任行為の代理等についての規定も分けられています。
第27条はその確認方法を定め、既存顧客について確認記録・取引記録等その他の情報を精査することなどを扱います。初回の本人確認に問題がなかったことと、その後の取引に疑わしい点がないことは同じではありません。記録保存は後日調べるためだけでなく、継続的な確認の材料として位置づけられています。
第32条は、取引等の危険性を調査・分析し、その結果を記録した書面等を必要に応じて見直すこと、情報収集、確認記録等の継続的精査、一定の取引の承認、監査などを定めます。新たな技術や新たな取引形態も調査・分析の対象に含まれています。
こうした措置は法律第11条の委任を受けた細目であり、義務の性質は法律本文と合わせて読む必要があります。施行規則だけを抜き出して、すべての事業者に同じ業務フローを強制するような説明にはできません。業態や取引類型に対応する確認方法、記録、継続的な精査を一連の仕組みとして整理する法令です。根拠:第26条・第27条・第32条
外国為替取引では情報の通知も具体化する
施行規則は、本人確認資料を事業者の内部で保管する場面だけでなく、外国為替取引に伴う情報の通知も扱います。第31条は、法律第10条の委任を受け、顧客と支払の相手方について通知する事項を定めています。自然人と法人では氏名・名称や住所等の項目が分かれ、口座を用いる場合の口座番号と、用いない場合の取引参照番号も区別されます。
ここでの取引参照番号は、対象の取引を特定するための番号です。顧客を識別する情報と個々の送金を識別する情報を組み合わせるため、氏名だけを通知すれば完結する構成ではありません。また、第28条には、外国所在為替取引業者との契約締結に際する確認方法として、申告を受ける方法や、公表情報を閲覧して確認する方法が置かれています。顧客の確認、相手方事業者の確認、取引情報の通知は、それぞれ異なる対象を扱う規定です。根拠:第28条・第31条
参考リンク
確認手段の細分や記録事項は、次の公式条文を参照してください。