裁判所法(法令ID:322AC0000000059)は、最高裁判所と下級裁判所の種類、裁判権、組織などを定める法律です。法令全集e-Gov法令検索に条文があります。裁判制度を学ぶ人や、事件を扱う裁判所の役割を調べる人に向け、裁判所ごとの分担と審理を担う組織を説明します。個別事件の提訴先の判断、訴状の作成方法、不服申立ての可否は扱いません。2026年9月15日時点について、2026年5月21日施行版を確認しています。

法律上の争訟を扱う裁判所の種類

第1条は、日本国憲法に定める最高裁判所と下級裁判所について、この法律が定めることを示しています。第2条に列挙される下級裁判所は、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所、簡易裁判所です。

第3条は、憲法に特別の定めがある場合を除く法律上の争訟を裁判することと、法律が特に定めるその他の権限を掲げています。裁判所の仕事を民事・刑事の判決だけで説明せず、家事審判や調停などの権限にも目を向ける必要があるのは、このような構成によります。また、行政機関が前審として審判することを妨げない旨も同条にあります。

一方、各地の裁判所をどこに設立し、その管轄区域をどう定めるかは、第2条が別の法律に委ねています。裁判所の種類と役割を知ることと、個別の地域について具体的な裁判所を特定することは、確認する規定が異なります。第4条は上級審の判断が「その事件」について下級審を拘束する旨を定めており、審級間の関係を説明する条文です。

最高裁判所の大法廷と小法廷

最高裁判所の裁判権は、第7条で上告と訴訟法が特に定める抗告として規定されています。どの事件でも最初から最高裁判所が事実関係を調べる、という組織ではありません。第5条は最高裁判所長官と14人の最高裁判所判事を定めており、最高裁の裁判官全体の構成と、個々の事件を担当する法廷の構成を区別します。

第9条は大法廷と小法廷を置き、大法廷を全員の裁判官の合議体、小法廷を最高裁判所が定める員数の合議体としています。第10条は、小法廷では裁判できない場合を列挙します。当事者の主張に基づく憲法適合性の判断には条文上の例外があり、法令等が憲法に適合しないと認める場合や、法令の解釈適用について従来の最高裁判所の裁判と異なる意見を採る場合も定められています。

ここでは、事件が重要そうに見えるかという印象ではなく、判断内容が第10条のどの場面に当たるかが規定の軸です。大法廷・小法廷の分担は裁判所内部の審理体制に関する問題で、当事者が上告できる要件や申立期間とは別です。後者は民事訴訟法や刑事訴訟法等の手続法と合わせて確認する関係にあります。

地方裁判所と簡易裁判所の民事・刑事の分担

地方裁判所と簡易裁判所は、ともに第一審を扱いますが、その範囲は同じではありません。第24条と第33条を対応させると、事件の種類や請求の価額による分担が分かります。

第33条第1項第1号は、行政事件訴訟に係る請求を除き、訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求について、簡易裁判所の第一審の裁判権を定めています。第24条には、それ以外の請求の第一審や、不動産に関する訴訟についての規定があります。金額だけであらゆる事件を機械的に振り分ける説明では、条文の除外や別の裁判所の権限を落としてしまいます。

刑事についても、第33条は罰金以下の刑に当たる罪や選択刑として罰金が定められている罪などを掲げ、簡易裁判所が科すことのできる刑には制限と例外を置いています。また、簡易裁判所の判決に対する控訴は、民事では第24条、刑事では第16条との関係が生じます。第一審の裁判所名だけでなく、民事か刑事かによって次の審級が異なる点が、この法律を読む際の具体的な分岐です。

家庭裁判所の専門領域と一人制・合議制

家庭裁判所は、単に地域を小さく区切った地方裁判所ではありません。第31条の3は、家庭に関する審判・調停、人事訴訟の第一審、少年の保護事件の審判をそれぞれ別の法律に結び付けて規定しています。

家事事件手続法、人事訴訟法、少年法という参照先の違いは、対象事件と手続の違いに対応しています。このため、「家庭に関係する話だからすべて同じ手続」という整理はできません。裁判所法は家庭裁判所の権限の入口を示し、その事件の進め方は各手続法が具体化する関係です。

審理を担う人数についても、第26条は地方裁判所の一人制を原則としつつ、合議体で扱う事件を列挙しています。合議体が合議による審理を決定した事件、一定の刑事事件、簡易裁判所からの控訴・抗告事件などが対象です。合議体の裁判官は3人とされています。裁判所の種類という組織の分類と、その事件を一人または合議体で扱うという審理体制の分類を分けることで、同じ地方裁判所でも取扱いが異なる理由を理解できます。

裁判官の任命と身分保障

第39条・第40条は裁判官の任命を定めています。最高裁判所長官は内閣の指名に基づいて天皇が任命し、最高裁判所判事は内閣が任命します。下級裁判所の裁判官は、最高裁判所が指名した者の名簿によって内閣が任命する構成です。

下級裁判所の裁判官には10年の任期と再任の規定があります。一方、第48条は、弾劾、国民審査、心身の故障により職務を執れないと裁判された場合等を除き、意思に反する免官、転官、転所、職務停止、報酬減額を受けないことを定めています。任命の方法、任期、身分保障は別々の規定で支えられており、任命する機関がその後の裁判の結論を自由に指図するという仕組みではありません。

保障とともに服務上の制約も置かれています。第49条は義務違反、職務懈怠等について裁判による懲戒を規定し、第52条は積極的な政治運動、一定の兼職、営利業務等を制限します。裁判官を他の裁判所職員と区別して規定しているのは、裁判を担う地位の保障と職責に対応したルールを設けるためです。

書記官・調査官の事務と司法行政の限界

裁判所の仕事は裁判官だけで行うものではありません。第60条は裁判所書記官を各裁判所に置き、事件記録等の作成・保管、他の法律で定める事務、裁判官の調査の補助を担うことを定めています。

同条は電磁的記録も明示しており、記録の形式が紙か電子かにかかわらず、作成・保管等の事務が制度として位置付けられています。また、書類等の作成・変更に関する裁判官の命令を正当でないと認める場合には、書記官が自己の意見を書き添え、または併せて記録できる規定があります。裁判官の命令に従うことと、記録作成上の職責が併存しています。

第61条の2は家庭裁判所調査官を家庭裁判所・高等裁判所に置き、家事・少年事件等について必要な調査を担うことを定めます。どの事件・審級の調査かは同条の限定に従います。さらに第80条は最高裁、高裁、地裁等の司法行政上の監督を定め、第81条はその監督権が裁判官の裁判権に影響を及ぼし、制限することはないとします。組織運営の監督と、事件の結論を判断する裁判権は明確に分けられています。

参考リンク

組織と裁判権は第1条から第4条、第7条から第10条、第16条、第24条、第26条、第31条の3、第33条、裁判官・職員と司法行政は第39条・第40条、第48条・第49条、第52条、第60条・第61条の2、第80条・第81条を参照しています。