日本国憲法(法令ID:321CONSTITUTION)は、基本的人権と国の統治機構、財政、地方自治、改正手続などを定める国の最高法規です。1946年11月3日に公布され、1947年5月3日に施行されました。権利の保障や国会・内閣・裁判所の役割を調べる人が、個別の法律の前提を確認する際に参照します。この記事は条文の基本構造を扱い、個別の政策・事件の合憲性や争点の法的評価は扱いません。法令全文とe-Govの条文、衆議院の憲法掲載資料を基に、2026年9月15日時点の現行条文を説明します。
国民主権と天皇の地位、戦争の放棄
前文は主権が国民に存することを宣言しています。第1条も、天皇の地位が主権の存する日本国民の総意に基づくとし、象徴としての地位を定めています。
第3条は天皇の国事に関する行為に内閣の助言と承認が必要で、内閣が責任を負うと定めます。第4条は憲法に定める国事行為のみを行い、国政に関する権能を有しないとしています。象徴としての地位と、国の政治を決定・実施する機関の権限を分ける規定です。天皇に関する章を、内閣や国会の章とは別に置くことにも、この役割の区分が表れています。
第2章の第9条は、国際紛争を解決する手段としての戦争と武力による威嚇・行使の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を定めています。条文が置く原則を確認することと、個々の安全保障政策に対する憲法解釈を論じることは別です。ここでは、前文と第1章・第2章が、主権、象徴、国際平和に関する基本事項を扱うという構成を押さえます。根拠:前文・第1条・第3条・第4条・第9条
個人の尊重と自由・平等の保障
第3章は国民の権利と義務を定めています。第11条は基本的人権の保障、第13条は個人の尊重と生命・自由・幸福追求に対する権利、第14条は法の下の平等を規定します。
自由に関する条文は、思想・良心、信教、表現など、対象に応じて分かれています。第19条は思想・良心の自由、第20条は信教の自由等、第21条は集会・結社・言論・出版等の表現の自由と検閲禁止、通信の秘密を定めます。同じ自由という言葉で一括りにせず、保障する対象と国の機関に求めることを条文ごとに読む構成です。
身体の自由や刑事手続についても複数の条文があり、第31条は法律の定める手続なしに生命・自由を奪い、刑罰を科すことを認めないとしています。権利保障は日常の言論や信仰だけでなく、国が強制力を用いる場面の手続にも及びます。具体的な制約との関係を判断するには個別の条文と問題の事情が必要であり、権利名だけからすべての結論が決まるわけではありません。根拠:第11条・第13条・第14条・第19~21条・第31条
生活・教育・勤労を支える条文
人権の章は、国の介入を制限する自由だけでなく、生活や教育、勤労に関する規定も置いています。これらは、社会保障や教育、労働に関する法律を読む際の基礎になります。
第25条は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利と、国による社会福祉・社会保障・公衆衛生の向上増進への努力を定めます。第26条は能力に応じて等しく教育を受ける権利、保護する子女に普通教育を受けさせる義務、義務教育の無償を規定しています。権利と国の役割、保護者の義務が、条文の中で分けられています。
第27条は勤労の権利・義務、勤労条件の基準を法律で定めること、児童の酷使禁止を掲げています。憲法はここで個々の給付額や学校制度、具体的な労働時間をすべて定めるのではなく、権利や制度形成の基本を示しています。具体的な制度は関連する法律によって形づくられます。憲法の原則と個別法の条件を区別することで、基本的な保障と実施制度の関係を整理できます。根拠:第25~27条
国会・内閣・裁判所の権限と関係
第4章から第6章は、国会、内閣、司法をそれぞれ扱います。第41条は国会を唯一の立法機関、第65条は行政権を内閣に、第76条は司法権を最高裁判所と下級裁判所に属させています。
第59条は法律案の成立について両議院の可決を原則とし、一定の場合の衆議院の再可決等を定めます。第66条は、内閣が行政権の行使について国会に連帯して責任を負うと規定しています。機関の役割を分けるだけでなく、法律の成立や行政の責任を通じて機関同士の関係を定める構造です。
司法では、第76条が裁判官の独立と憲法・法律への拘束を定め、第81条が最高裁判所を違憲審査権を有する終審裁判所としています。法律を作る機関と、その法律等が憲法に適合するかを審査する裁判所の役割は異なります。三つの章を並べて読むと、立法・行政・司法が別々に存在するだけでなく、憲法上の権限と責任によって関係づけられていることが分かります。根拠:第41条・第59条・第65条・第66条・第76条・第81条
財政・地方自治と憲法改正の手続
統治機構の後には、財政と地方自治に独立した章が置かれています。第83条は国の財政処理を国会の議決に基づかせ、第90条は決算の会計検査院による検査と国会への提出を定めます。
地方自治では第92条が地方自治の本旨に基づく法律による制度化、第93条が議会の設置と住民による長・議員等の直接選挙を規定しています。国の機関の編成だけでなく、地方公共団体の組織と住民の関係も憲法上の事項です。
第96条の改正手続は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と、国民の承認を必要とし、通常の法律案の成立とは区別されます。第98条は憲法の最高法規性と条約・確立された国際法規の誠実な遵守、第99条は公務員等の憲法尊重擁護義務を定めます。権利や機関の規定に加え、憲法自体の効力と変更方法まで定めることで、法制度全体の基礎を構成しています。根拠:第83条・第90条・第92条・第93条・第96条・第98条・第99条
首相の指名と内閣の総辞職をつなぐ
国会と内閣の関係は、権限の分担だけでなく、内閣の成立と交代の手続にも表れます。第67条は、内閣総理大臣を国会議員の中から国会の議決で指名すると定め、この指名を他の案件に先立って行うこととしています。一般の有権者が首相を直接選ぶ手続を定めた条文ではありません。
両議院が異なる指名をした場合には、両院協議会で意見が一致しないときや、参議院が所定の期間内に指名しないときに、衆議院の議決を国会の議決とする仕組みがあります。国会内部の二つの議院の判断が異なる場合についても、憲法が一定の処理方法を用意しています。
第69条は、衆議院で不信任決議案が可決され、または信任決議案が否決されたとき、10日以内に衆議院が解散されない限り内閣が総辞職すると定めます。第70条は、首相が欠けたときと、衆議院議員総選挙後に初めて国会が召集されたときにも総辞職を求めています。内閣の交代は任意の人事だけではなく、国会との関係に基づく手続でもあります。
第71条は、これらの場合に新しい首相が任命されるまで従前の内閣が引き続き職務を行うと規定します。また、第54条は衆議院解散後の総選挙と国会召集の期限を定めています。解散、選挙、国会の召集、首相の指名、内閣の職務継続という一連の手続を置くことで、政治上の判断と行政の継続を制度として結び付けています。根拠:第54条・第67条・第69~71条
参考リンク
条文の原文と公布・施行日は、次の一次資料を参照できます。