刑法(法令ID:140AC0000000045)は、犯罪と刑罰に共通する原則と、殺人、窃盗、詐欺などの個別の罪を定める法律です。法令全集の条文とe-Gov法令検索で閲覧できます。刑事法を学ぶ人や、報道・行政資料に登場する犯罪名と条文を確かめたい人が、罰則の仕組みを調べる際の基本資料となります。本記事は2026年9月15日時点の条文に基づき、総則と各犯罪類型の構造を説明し、具体的な出来事への犯罪の当てはめや量刑予測は扱いません。
総則と個別の罪を組み合わせる構造
刑法は、第1編の「総則」と第2編の「罪」に分かれています。総則には適用範囲、刑の種類、刑の執行や猶予、犯罪の成立に関係する一般的な規定、未遂、共犯、刑の加重・減軽などが置かれています。第2編では、それぞれの犯罪について対象となる行為や刑が定められます。個別の犯罪名が書かれた一条だけで、刑法上の扱いのすべてが完結する構造ではありません。
第8条は、総則について、他の法令の罪にも適用することを原則とし、その法令に特別の規定がある場合を除外しています。このため、刑法典に直接置かれていない罰則についても、故意、共犯、刑の種類などの一般原則が関係します。「刑法に書かれた罪」と「日本の法令に置かれた刑罰付きの規定」は、範囲が同じではありません。
総則から個別の罪へ読む順番には、共通事項と犯罪ごとの違いを分ける意味があります。たとえば、個別の条文で行為と刑を確認した後、未遂を処罰する規定があるか、共犯についてどの総則が関係するかを別に確認する構成です。また、刑法が定める犯罪・刑罰の規定と、捜査や裁判の進行を定める手続とは、この記事では区別して扱います。まずは第1編・第2編の目次と第8条で全体像を確認できます。
適用される場所と法律が変更された場合
第1条は、日本国内において罪を犯したすべての者に刑法を適用することを定めています。また、日本国外にある日本船舶や日本航空機内での犯罪についても規定しています。国内の犯罪に対する適用を国籍だけで区別する条文ではなく、行為の場所を基本とする構造が冒頭に置かれています。その後の条文では、国外で行われた一定の犯罪などについて別の適用範囲が定められています。
この適用範囲の章が示すのは、「犯罪の条文に書かれた行為か」という問題に加え、どの場所や主体について刑法を適用するかという問題があることです。国外に関係する事案の扱いを、国内の原則だけから一律に説明することはできません。第1条に続く規定は、対象犯罪や行為者との関係を区別しているため、条文で指定される範囲を確認する必要があります。
時点に関しては、第6条が、犯罪後の法律によって刑の変更があったときは軽い刑によると定めています。法令検索に表示される最新条文と、過去の行為について参照する規定の関係を考える際に重要な条文です。もっとも、改正法の附則にも施行日や経過措置が置かれるため、条文の更新日だけをもって適用関係がすべて決まるという説明にはなりません。本記事の基準日と個別の行為時点は別の情報として扱っています。第1条から第6条が適用範囲を定めます。
拘禁刑・罰金などの刑の種類
第9条は、死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料を主刑とし、没収を付加刑としています。2026年9月15日時点の第12条に置かれているのは拘禁刑です。古い資料にある刑の名称を、そのまま現行条文の名称として説明しないことが重要です。また、罰金と科料、拘禁刑と拘留は条文上別の種類として列挙されています。名称が似ていても、同じ刑を言い換えたものではありません。
第12条は、拘禁刑を無期と有期に分け、有期を1月以上20年以下としています。同条は刑事施設に拘置することに加え、改善更生のため必要な作業や指導を行うことができる旨を定めています。ただし、刑の期間については、加重・減軽を定める第14条などもあるため、第12条の期間だけを全場面に通じる絶対的な上限・下限として示すことはできません。
個別の罪に書かれる刑と、ある事件で実際に言い渡される刑も区別されます。刑法には、刑の執行猶予、複数の罪の扱い、加重や減軽などに関する総則があります。各犯罪の条文は、その犯罪に定められた刑の種類や範囲を示すものであり、条文上の上限をそのまま通常の処分や判決の予測として扱うものではありません。刑の体系を調べるときには、第9条・第12条・第14条と総則の各章を組み合わせて読む構成になります。
故意・責任と罰しない行為の規定
第38条は、罪を犯す意思がない行為を罰しないことを原則とし、法律に特別の規定がある場合を例外としています。行為の結果だけを取り出して犯罪を説明するのではなく、故意や個別の過失処罰規定も関係する構造です。同条には、法律を知らなかったことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできない旨も定められています。行為に関する認識と法律の知識は、同じ問題として扱われていません。
第35条は法令や正当な業務による行為について、第36条は正当防衛について、第37条は緊急避難について規定しています。正当防衛の条文は急迫不正の侵害に対する自己または他人の権利の防衛を扱い、緊急避難の条文は生命、身体、自由、財産に対する現在の危難を扱います。いずれも、条文が掲げる対象、必要性、限度などの要素があり、日常語で「防衛」「避難」と呼ぶ行動を一律に同じ扱いにする規定ではありません。
責任に関しては、第39条が心神喪失者と心神耗弱者の行為の扱いを区別し、第41条が14歳に満たない者の行為を罰しないとしています。これらは、行為の外形や結果とは別の観点から置かれた規定です。条文上の概念を個人の状況へ直ちに当てはめるのではなく、刑法がどのような判断事項を分けているかを理解するための規定として整理できます。第35条から第41条が確認先です。
未遂と共同正犯・教唆・幇助の違い
第43条は、犯罪の実行に着手したものの、これを遂げなかった場合について刑を減軽できることを定めています。また、自己の意思によって犯罪を中止した場合については、刑を減軽し、または免除するとしています。結果が完成しなかったという一点だけではなく、条文が区別する実行への着手や中止の事情が関係する規定です。
ただし、第44条は、未遂を罰する場合を各本条で定めるとしています。すべての犯罪に未遂の処罰規定が当然に存在するわけではありません。個別の罪の規定を読む際は、刑を定めた条文と併せて、その章などに未遂を処罰する規定があるかを確認する必要があります。総則が未遂の共通的な扱いを示し、個別の規定が処罰する範囲を指定するという役割分担です。
複数人の関与については、第60条が共同正犯、第61条が教唆、第62条が幇助による従犯を定めています。二人以上で共同して実行すること、人を教唆して犯罪を実行させること、正犯を幇助することを、それぞれ別の形として規定しています。第63条には従犯の刑を正犯の刑から減軽する規定があります。関与した人数だけで区別する仕組みではなく、どのような関与をしたかという点が条文上分けられています。第43条・第44条・第60条から第63条で確認できます。
個人の利益と社会・国家に関わる犯罪の並び方
第2編には、内乱、外患、公務の執行を妨害する罪、放火、通貨や文書の偽造、殺人、傷害、窃盗、詐欺など、多様な犯罪が章ごとに置かれています。生命・身体や財産に関する罪だけでなく、公共の安全、文書などへの信用、公務に関係する罪も含まれます。章の見出しから、どのような対象や行為を区分しているかを把握できる構造です。
財産に関する規定の例では、第235条が他人の財物を窃取する窃盗を定め、第246条が人を欺いて財物を交付させる詐欺を定めています。第246条には財産上不法の利益を得る場合などについての規定もあります。どちらも財産に関わる犯罪ですが、条文が示す行為や対象の書き方は異なります。「財産に損失が生じた」という説明だけで、各条文の違いを置き換えることはできません。
個別の章には、基本となる罪に続いて、加重された類型、未遂、関連する行為などの規定が置かれる場合があります。そのため、条文を調べる際には、犯罪名に対応する一条だけでなく、同じ章の前後関係を見ることで制度上の区分を確認できます。本記事ではそれぞれの犯罪の成立を網羅的に説明するのではなく、共通原則と各章を往復して条文を読むための構造を示しています。第2編の各章と第235条・第246条が一次資料です。
参考リンク
本文で参照した施行版と、条文データの取得先です。