気象業務法(昭和27年法律第165号、法令ID:327AC0000000165)は、気象等の観測、予報・警報、気象予報士、気象測器の検定を定める法律です。自治体の観測担当者、気象情報の提供事業者、情報を利用する防災担当者が制度の分担を調べる際に参照します。この記事は観測と予報業務の制度を扱い、個別の災害予測や避難判断、特定サービスの許可要否は扱いません。条文は法令全集とe-Gov法令検索で確認できます。
2026年9月15日時点の2026年5月29日施行版を参照しています。
観測・予報・警報は何が違うか
第2条は、観測を自然科学的方法による現象の観察・測定、予報を観測成果に基づく現象の予想の発表と定義します。警報は、重大な災害が起こるおそれがある旨を警告して行う予報です。測った数値を公表すること、将来の現象を予想して発表すること、災害のおそれを警告することは、法律上区別されています。
対象も天気だけではありません。気象は大気の諸現象、地象は地震・火山現象等、水象はそれらに密接に関連する陸水・海洋の諸現象として定義されています。予報・警報の条文では地震を地震動に限るなどの限定があるため、すべての自然現象の予測が一律に同じ制度に属するわけではありません。
第13条は気象庁が行う一般の利用に適合する予報・警報、第14条は航空機・船舶等の利用に適合する予報・警報を定めます。第14条の2には水防活動向けの予報・警報があり、指定された河川や海岸について、国土交通大臣や都道府県知事と共同で行う仕組みが置かれています。
気象情報の名称だけでなく、一般向け、航空・船舶向け、水防活動向けという利用目的と、発表主体の組合せを見れば、条文が分かれている理由を理解できます。同じ洪水や高潮を扱っていても、提供する水位等の情報と関係機関の役割が異なります。根拠:第2条、第13条〜第14条の2
気象庁以外の観測と測器の検定
第6条は、気象庁以外の政府機関や地方公共団体による気象観測について、国土交通省令の技術基準に従うことを定めています。ただし研究・教育目的等の例外があります。民間についても、成果を発表するため、または災害防止に利用するための気象観測などを対象とし、すべての私的な測定を一律に規制する規定ではありません。
同条により技術基準に従う必要のある観測では、施設の設置・廃止について届出を行う仕組みがあります。また、気象庁長官が観測網の確立に必要と認める場合には、観測成果の報告を求めることができます。測定の実施方法と、観測網としての情報収集が結びついています。
第9条は対象となる気象測器について検定合格を求め、第28条は構造と器差についての検査基準を定めます。検定は登録検定機関が担い、測定器なら何でも一律に対象になるのではなく、用途と別表に掲げる機器の範囲に応じて制度が適用されます。
さらに、第9条第2項には予報業務のための補完観測の仕組みがあります。本観測の正確な実施に支障がなく、予報業務の適確な遂行に資することについて気象庁長官の確認を受けた場合には、検定未合格の測器を補完観測に使える構成です。検定の原則と、確認を伴う補完観測の例外を区別することが必要です。根拠:第6条・第9条・第28条
民間の予報業務と気象予報士
第17条は、気象庁以外の者が気象、地象、津波、高潮、波浪、洪水の予報業務を行う場合の許可を定めています。許可は業務の目的と範囲を定めて行うもので、単に「気象情報を扱う事業者」という名称に対して包括的に与えられるものではありません。
第18条では、予報資料を収集・解析する施設と要員、気象庁の警報事項を迅速に受ける体制などが審査対象です。対象現象によって、技術上の基準や気象予報士に関する要件も分かれています。業務の種類と、どの現象の予想を自ら行うかが重要になります。
第19条の2は、対象となる予想を行う事業所ごとの気象予報士の配置と、その予想を気象予報士に行わせることを定めます。気象予報士試験は第24条の2、気象予報士となるための登録は第24条の20に規定されています。試験合格、登録、事業所での配置、事業者の予報業務許可は、それぞれ異なる制度上の段階です。
また、噴火、土砂崩れ、津波等を対象とする特定予報業務では、第17条が利用者の範囲を限定し、第19条の3が利用に際しての説明を定めます。第18条には説明を受けた者以外への伝達を防ぐ措置も規定されています。民間予報を一律に不特定多数向けの天気予報と捉えず、現象と利用者に応じた許可の構造を読む必要があります。根拠:第17条〜第19条の3、第24条の2・第24条の20
警報の発表と関係機関への伝達
第23条は、政令で定める場合を除き、気象庁以外の者が気象等の警報を行うことを制限しています。民間の予報業務許可を受けることと、気象庁と同じ立場で警報を発表できることは同義ではありません。法律は予報の提供と警報の発表を分けて制度化しています。
第13条の2は、予想される現象が特に異常で重大な災害のおそれが著しく大きい場合について、基準に該当するときの警報を定めています。特別警報の基準は気象庁が定め、公表する構成です。法律本文はその制度と手続を規定しており、具体的な発表基準の数値すべてを直接列挙しているわけではありません。
第15条は警報の関係機関への通知と、その後の伝達・周知を規定します。第15条の2は特別警報について、都道府県から市町村長への通知や、市町村長による公衆等への周知措置を定めています。通常の警報と特別警報では、通知・周知についての条文の表現も異なります。
ここで扱われるのは気象情報の発表と伝達の制度であり、市町村が発する避難情報そのものを定義する条文ではありません。気象庁の発表、関係機関への通知、地域への周知という情報の流れを確認すると、観測と予測の成果が防災の情報網につながる仕組みを理解できます。根拠:第13条の2、第15条・第15条の2、第23条
予報業務を始めた後の伝達・休廃止
許可を受けた事業者について、第20条は、その予報業務の目的・範囲に係る気象庁の警報事項を、利用者へ迅速に伝達するよう努めることを定めています。独自の予報を提供することと、気象庁の警報を利用者へ届けることは別の役割です。予報業務の許可制度には、事業者が独自の情報を作るための能力だけでなく、公的な警報の情報網との接続も組み込まれています。
第21条は、法律や命令、処分、許可等に付された条件への違反などについて、業務停止や許可取消しを行うことができる制度を定めます。許可の審査時に基準を満たしていることだけでなく、許可後も法令や条件に沿って業務を続けることが問題になります。一方、第22条は、予報業務の全部または一部を休止・廃止した場合に、その日から30日以内に届け出ることを求めています。
許可を得る段階、利用者へ予報や警報事項を伝える段階、業務を休止・終了する段階で、適用する規定が変わります。気象予報士の登録だけを確認して事業者の制度を説明するのではなく、業務の開始から終了までの手続きを通して見ると、気象情報の継続的な提供を支える構造が分かります。根拠:第20条〜第22条
参考リンク
現象ごとの対象範囲と、許可・警報の規定は次の条文によります。