地方自治法施行令(法令ID:322CO0000000016)の第167条の2は、自治体が随意契約によることのできる場合と、その一部に適用する契約条件の制限を定めています。e-Gov法令検索の条文では、第1項に九つの類型、第2項から第4項に入札後の随意契約に関する規定が置かれています。自治体の契約担当者や受注を検討する事業者が、随意契約の根拠となる号や金額基準を確認するときに参照する条文です。この記事では各号の違い、別表第五、自治体規則との関係を扱い、個別案件の契約方式の適否や理由書の作成は扱いません。
第1項の九つの号は、随意契約とする理由を分けている
第167条の2第1項は、地方自治法第234条第2項を受けて、随意契約によることのできる場合を列挙しています。各号は同じ条件を言い換えたものではなく、契約の金額、性質、相手方、緊急性、入札の結果など、異なる事情を扱っています。
条文を読む出発点は、「随意契約」という呼び方だけでまとめず、どの号を根拠とする説明なのかを区別することです。たとえば第1号は予定価格と規則上の基準額の関係を扱うのに対し、第2号は契約の性質や目的を問題にしています。第8号と第9号は、競争入札を経た後の状況を分けています。金額の表だけを見ても、これらすべての類型を説明することはできません。
| 第1項の号 | 条文が着目する事情 |
|---|---|
| 第1号 | 予定価格が自治体規則で定める額を超えない契約 |
| 第2号 | 性質または目的が競争入札に適しない契約 |
| 第3号 | 条文所定の施設・団体等からの物品購入や役務の調達 |
| 第4号 | 認定を受けた者からの新商品・新役務の調達 |
| 第5号 | 緊急の必要により競争入札に付せない場合 |
| 第6号 | 競争入札に付することが不利と認められる場合 |
| 第7号 | 時価より著しく有利な価格で契約できる見込みがある場合 |
| 第8号 | 入札者がいない場合、または再度の入札でも落札者がいない場合 |
| 第9号 | 落札者が契約を締結しない場合 |
この表は、第167条の2第1項の読む場所を整理したものです。第3号・第4号の対象者や手続など、表では省略している要件は各号の本文で確認します。施行令全体の扱う分野は、地方自治法施行令の解説で整理しています。
第1号の少額随意契約は、別表第五と自治体規則を組み合わせる
第1号は、契約の予定価格が一定の額を超えない場合の規定です。金額の確認先は二段階になっており、施行令の別表第五が範囲を示し、その範囲内で普通地方公共団体の規則が額を定めます。
2026年9月15日に取得したe-Govの地方自治法施行令の別表第五では、次の金額が定められています。これは各自治体の規則の額を調べるための上限の表であり、すべての自治体が同額を採用しているという意味ではありません。
| 契約の種類 | 都道府県・指定都市 | 市町村(指定都市を除く) |
|---|---|---|
| 工事または製造の請負 | 400万円 | 200万円 |
| 財産の買入れ | 300万円 | 150万円 |
| 物件の借入れ | 150万円 | 80万円 |
| 財産の売払い | 100万円 | 50万円 |
| 物件の貸付け | 50万円 | 30万円 |
| 上記以外のもの | 200万円 | 100万円 |
第1号の比較対象は予定価格です。貸借については予定賃貸借料の年額または総額と条文に記載されているため、月額の見積金額だけを表の額と比べる読み方にはなりません。また、契約の種類によって表の欄が分かれているので、発注する内容がどの区分に当たるかも確認対象になります。
別表第五の基準額には2025年4月1日施行の改正があり、福井県の案内でも、この改正を踏まえた県の基準額の引上げを説明しています。過去の契約資料に書かれた額と現行の額が違う場合は、施行令だけでなく、その自治体の規則の改正日と適用時点を分けて確認する必要があります。
第2号は金額ではなく、契約の性質・目的に着目する
第2号は、不動産の買入れ・借入れなどを挙げたうえで、性質または目的が競争入札に適しない契約を対象としています。第1号のように、予定価格が一定額以下であることをこの号の判断軸としているわけではありません。
したがって、第2号を読むときは、契約金額の大小だけでなく、調達する内容と競争入札に適しないとする説明との対応が中心になります。第1号の金額表と第2号の理由を混ぜてしまうと、どの要件を確認しているのかが分かりにくくなります。条文に例示された契約と、自治体が公表する具体的な運用例も分けて読むことが大切です。
堺市の建設工事等に関するガイドラインでは、特殊な技術や設備を必要とする場合などを第2号の運用例として整理しています。同時に、個々の工事等について技術の特殊性、経済的合理性、緊急性等を踏まえて契約方式を決め、随意契約の理由を明らかにする扱いを示しています。これは堺市の工事等を対象とする資料であり、例示された言葉だけを全国共通の判断基準として転用するものではありません。
第3号・第4号は、調達相手と自治体の手続まで確認する
第3号・第4号では、契約の相手方や調達する物品・役務に関する要件に加え、自治体規則で定める手続が条文に組み込まれています。「福祉関係の団体」「新しい商品」という大まかな呼び方だけで対象を整理することはできません。
第3号には、障害者支援施設等で製作された物品の購入、シルバー人材センター等からの役務の提供、母子・父子福祉団体等や認定生活困窮者就労訓練事業を行う施設に関する契約などが規定されています。ただし、物品を購入する場合と役務の提供を受ける場合では、列挙される対象や認定に関する条件が同一ではありません。条文を読む際は、調達するものが物品か役務かを分け、その部分に接続する対象者の記載を追います。
第4号は、新たな事業分野の開拓を図る者として認定を受けた者から、新商品を買い入れ・借り入れる契約や、新役務の提供を受ける契約を扱います。一般的な新商品すべてではなく、認定と自治体の調達手続が含まれた制度です。第167条の2第1項第3号・第4号の対象を確認した後に、認定に関する総務省令と対象自治体の規則をたどる順序になります。
たとえば滋賀県財務規則第219条第2項は、両号に関する手続として、調達内容や相手方の選定基準などの事前公表と、決定後の公表を定めています。こうした公表の項目・時期は、契約する自治体の規則で確認します。
第5号・第6号・第7号は、緊急性・不利・価格の有利さを区別する
第5号から第7号は、いずれも金額表だけでは説明できない類型ですが、着目する事情は別です。条文の短さに反して、何についての事情を述べているかを区別することが重要になります。
第5号は、緊急の必要があり、競争入札に付することができない場合を定めています。第6号は競争入札に付することが不利と認められる場合、第7号は時価に比べて著しく有利な価格で契約を締結できる見込みがある場合です。第5号では緊急の必要と入札に付せないこと、第7号では時価との価格関係が条文に現れています。
この違いから、資料を読む際にも、「急いでいる」という説明、「競争入札に付すと不利になる」という説明、「時価と比べて価格が有利」という説明を一つにまとめず、どの号のどの文言に対応するのかを確認します。単に価格が安いという説明と、第7号にある時価との比較や著しい有利さの説明は同じではありません。
根拠は第167条の2第1項第5号から第7号です。具体的な運用例を探す場合も、対象自治体の資料がどの種類の契約に向けたものかを確かめることで、工事についての例示を別の契約へそのまま当てはめる混同を避けられます。
第8号・第9号は入札後の状況と変更できる条件が異なる
第8号と第9号は、競争入札に関係する経過を受けた規定です。入札者がいないこと、再度の入札でも落札者がいないこと、落札者が契約を締結しないことは、同じ出来事ではありません。
第8号が扱うのは、競争入札に付したが入札者がいない場合、または再度の入札に付しても落札者がいない場合です。これに対して第9号では、落札者はいるものの契約を締結しない状況が前提になります。経過を確認した後は、第1項の号だけで読み終えず、第2項・第3項の条件制限へ進みます。
| 適用する類型 | 後続の規定で確認する制限 |
|---|---|
| 第1項第8号 | 第2項により、契約保証金・履行期限を除き、当初の予定価格その他の条件を変更できない |
| 第1項第9号 | 第3項により、落札金額の範囲内で行い、履行期限を除き当初の条件を変更できない |
両者では、金額についての規定と、変更できる条件の範囲に違いがあります。第9号の場合に、第8号と同様に契約保証金も変更できると読み替えることは、条文に書かれた例外の範囲を混同することになります。
さらに第4項は、この二つの場合に、予定価格または落札金額を分割して計算できるときに限り、その制限内で数人に分割して契約を締結できると定めています。これは第2項・第3項を受けた規定であり、少額随意契約の基準額以下にするための一般的な分割方法を示したものではありません。ここまでを一体として読むのが、第167条の2の入札後の契約規定の確認手順です。
見積書の徴取と公表は、契約する自治体の規則につなげる
第167条の2で随意契約の類型を確認しても、見積書を何者から徴取するか、どのような審査を行うか、公表の対象をどうするかまでは、この条だけで一律に決まりません。契約の根拠となる号の確認と、自治体内の手続の確認は別の段階です。
たとえば前掲の堺市のガイドラインは、見積書を二人以上の者から徴する扱いと、一人のみで足りる場合があることを示しています。随意契約という名称から、必ず一者の見積りだけで進むと理解するのではなく、その自治体の規則と例外条件を確認する必要があります。
契約資料を調べる際は、最初に第167条の2の該当号を確認し、第1号なら別表第五と規則上の基準額、第3号・第4号なら対象者・認定・公表手続、第8号・第9号なら第2項以下の条件制限へ進みます。そのうえで、見積徴取や契約書、公表に関する自治体の定めを対応させると、全国共通の法令と個々の自治体の運用を区別できます。予算・決算も含めた確認先は、自治体の財務担当が確認する法令に整理しています。
参考リンク
条文と自治体の公式資料を参照しています。自治体の資料は、全国共通の制度ではなく、その自治体における基準や手続の例として使用しています。