資金決済に関する法律(法令ID:421AC0000000059)は、法令全集の条文ページe-Gov法令検索で確認できます。令和7年法律第66号による資金決済法改正は、暗号資産、電子決済手段、資金移動業、クロスボーダー収納代行など、デジタル金融サービスの利用者保護と事業者規制を見直すものです。金融庁は、改正法と関係政令・内閣府令等の施行日を2026年6月1日と公表しています。この記事では、スタートアップ、決済事業者、暗号資産・ステーブルコイン関連事業者が確認したい制度の入口を整理し、個別サービスの登録要否やスキーム適法性の判断は扱いません。

2026年6月1日施行の改正範囲

令和7年資金決済法改正は、金融のデジタル化に対応し、利用者保護を確保しながらイノベーションを促進することを目的に、複数の制度をまとめて見直す改正です。金融庁の説明資料では、暗号資産・電子決済手段関連の規制、資金移動業関連の規制、信託型ステーブルコインの裏付け資産、国境を跨ぐ収納代行、破綻時等の利用者資金返還方法などが主要論点として示されています。単一の業種だけでなく、決済、ウォレット、仲介、暗号資産交換、ステーブルコイン、海外決済サービスにまたがる改正です。

項目内容
改正法資金決済に関する法律の一部を改正する法律
法律番号令和7年法律第66号
施行日2026年6月1日
主な対象暗号資産交換業者、電子決済手段等取引業者、仲介業者、資金移動業者、収納代行関係者
主な論点仲介業創設、国内保有命令、信託型ステーブルコイン、クロスボーダー収納代行、利用者資金返還

この改正を読むときは、資金決済法だけで完結させず、関係政令、内閣府令、事務ガイドライン、金融商品取引法の改正動向も合わせて確認する必要があります。特に暗号資産については、2026年に金融商品取引法と資金決済法の改正法案も国会に提出されており、暗号資産取引に関する規律が段階的に変わる局面にあります。この記事では、まず2026年6月1日施行の令和7年資金決済法改正に絞って整理します。

暗号資産等取引の仲介業創設

改正の一つは、暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者と、暗号資産等の売買・交換を行いたい利用者を引き合わせる行為、すなわち媒介のみを行う仲介業の創設です。金融庁資料では、暗号資産等取引に係る仲介業を登録制として設け、利用者への説明義務や広告規制について、暗号資産交換業者等と同様の規制を設けることが説明されています。取引そのものを行わなくても、利用者獲得や導線提供に関わる事業者が制度上の対象になり得る点が重要です。

スタートアップやWebサービス事業者にとっては、暗号資産交換所やステーブルコインサービスへの紹介、アプリ内導線、アフィリエイト、API連携、キャンペーン、ウォレット連携がどのような位置づけになるかを確認する必要があります。単なる情報提供なのか、特定の取引業者への媒介なのか、申込み・契約締結への関与があるのかによって、整理すべき論点が変わります。広告表示、リスク説明、手数料表示、利益相反、苦情対応の体制も確認対象になります。

仲介業規制は、利用者が実際に契約する相手と、利用者にサービスを紹介する相手が異なる場面を前提にしています。決済・暗号資産サービスでは、UI上は一つのアプリに見えても、裏側では交換業者、電子決済手段等取引業者、資金移動業者、収納代行事業者、システム提供者が分かれることがあります。利用者に誰がどの役割を担うのかを明示し、契約・説明・問い合わせ窓口を分けて設計することが制度対応の入口になります。

国内保有命令と利用者資産の保護

令和7年改正では、暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者に対する資産の国内保有命令も導入されます。金融庁資料では、暗号資産の現物のみを取り扱う暗号資産交換業者や電子決済手段等取引業者が破綻した場合等に、国内利用者への資産返還を担保するため、当局が資産の国内保有を命じることができる仕組みとして説明されています。これは、利用者資産が国外に流出するおそれがある場面を念頭に置いた制度です。

この論点は、暗号資産の管理場所、秘密鍵管理、カストディ、グループ会社間の資金移動、海外関連会社への委託、クラウド・ウォレット基盤の利用と関係します。国内利用者の資産がどこで、誰により、どのように管理されているかを説明できなければ、破綻時や行政対応時に迅速な対応が難しくなります。利用者資産の分別管理、コールドウォレット運用、委託先管理、障害・流出時の補償原資など、既存の内部管理体制と合わせて確認する必要があります。

また、資金移動業者の破綻時等における利用者資金の返還方法の多様化も改正事項に含まれます。金融庁資料では、供託を経由する返還手続に加え、銀行等の保証機関や信託会社等による資産保全について、利用者に直接返還する方法を認める方向が説明されています。利用者保護の制度は、登録時の形式だけでなく、破綻・停止・不正流出・業務終了時に資金や暗号資産をどのように返すかまで含めて設計する必要があります。

信託型ステーブルコインの裏付け資産

電子決済手段のうち、信託型ステーブルコインに関する裏付け資産の管理・運用も見直されます。金融庁資料では、特定信託受益権の裏付け資産について、従来は全額を要求払預貯金のみで管理することを求めていたところ、国際的な動向を踏まえ、発行額の50パーセントを上限に、元本を毀損しない形で国債および定期預金による運用を認めることが説明されています。ステーブルコインの安定性と資産運用の柔軟性を両立させるための改正です。

この仕組みは、発行者、信託会社、電子決済手段等取引業者、ウォレット提供者、加盟店サービスに関係します。利用者から見ると「1円に連動するデジタルな支払手段」と見える場合でも、法制度上は発行者、裏付け資産、償還、取引、移転、保管の各レイヤーを分けて読む必要があります。裏付け資産の種類、運用上限、償還可能性、監査、情報開示、利用者への説明が制度理解の中心になります。

事業者が新しいステーブルコイン関連サービスを検討する場合、単にトークンを発行できるかだけでなく、誰が発行者になるのか、誰が取引を媒介・管理するのか、加盟店精算や送金機能を持つのか、外国発行の電子決済手段を扱うのかを整理する必要があります。金融庁のパブリックコメント結果や内閣府令・告示では、細かい要件や用語の整理が示されるため、サービス設計時には法律本文とあわせて確認することが重要です。

クロスボーダー収納代行と資金移動業

改正では、国境を跨ぐ収納代行への規制適用も重要な論点です。金融庁資料では、商品・サービスの取引成立に関与しない者が行うクロスボーダー収納代行について、国際的な要請も踏まえ、利用者保護やマネー・ローンダリング等のリスクへの対応の観点から、基本的には資金移動業の規制を適用することが説明されています。一方で、リスクが低いと考えられるものについては、内閣府令で規制対象外とする考え方も示されています。

収納代行は、債権者からの委託を受けて債務者から資金を受領するサービスとして、EC、越境決済、旅行、プラットフォーム、サブスクリプション、加盟店精算などで使われます。国内だけで完結する場合と、海外通販サイト、海外サービス、インバウンド旅行者、国外の決済手段の発行者が関係する場合とでは、規制上の見方が変わります。特に、海外オンラインカジノや出資金詐欺等に資金移動が使われるリスクが問題意識として挙げられています。

企業側では、自社が商品・サービスの取引成立にどの程度関与しているか、資金を誰のために受領しているか、受取人が国内か国外か、支払人が国内か国外か、資金の流れが送金に当たるかを整理します。プラットフォーマー、エスクロー、グループ会社内精算、他法令で規律される支払手段など、例外や対象外になり得る類型もあるため、最新の府令・ガイドラインで線引きを確認する必要があります。

決済・FinTech事業者が確認する資料

令和7年資金決済法改正は、法律本文だけで全体を把握するのが難しい改正です。金融庁は、改正法に係る政令・内閣府令、告示、パブリックコメント結果、事務ガイドラインを公表しており、施行日である2026年6月1日から関係する政令・内閣府令等も施行・適用されるとしています。事業者は、資金決済法、資金決済法施行令、暗号資産交換業者に関する内閣府令、電子決済手段等取引業者に関する内閣府令、仲介業府令、事務ガイドラインを合わせて確認する必要があります。

確認の順序としては、まず自社サービスが前払式支払手段、資金移動、暗号資産、電子決済手段、収納代行、仲介のどこに近いかを整理します。次に、利用者から資金や暗号資産を預かるか、売買・交換や媒介に関与するか、海外送金や外国発行の支払手段に関わるかを確認します。その上で、登録・届出、広告表示、利用者説明、資産保全、委託先管理、AML/CFT、苦情対応、システムリスク管理の担当部門を決めます。

暗号資産については、2026年に金融商品取引法及び資金決済法の一部を改正する法律案も提出され、投資性を踏まえた金商法上の規制へ移る論点が示されています。令和7年資金決済法改正と、令和8年の金商法等改正案は対象・施行時期・制度趣旨が異なるため、混同せずに確認することが大切です。サービス開発や資金調達資料では、制度名と施行日を正確に分けて記載する必要があります。

参考リンク

資金決済法改正を確認するときは、まず金融庁の公布・パブリックコメント結果ページで施行日と関係府令を確認し、次に改正法案説明資料で制度趣旨をつかむ流れが読みやすいです。暗号資産関連サービスでは、金融庁の暗号資産・電子決済手段関係ページも継続的に確認してください。