民事訴訟法(法令ID:408AC0000000109)は、法令全集の条文ページe-Gov法令検索で確認できます。2026年5月21日に施行された改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則により、民事訴訟手続では、訴状や証拠のオンライン提出、事件記録の電子化、オンラインでの記録閲覧、システム送達、手数料等の電子納付が本格的に始まりました。訴訟代理人、企業法務、債権管理、本人訴訟を検討する当事者が、申立て前の準備や進行管理で参照する場面があります。この記事では民事訴訟手続のデジタル化の入口を整理し、個別事件でどの提出方法・期日参加方法を選ぶべきかの判断は扱いません。

2026年5月21日に始まった民事訴訟手続のデジタル化

民事訴訟手続のデジタル化は、紙の書面を裁判所に持参・郵送する運用を前提にした手続を、電子情報処理組織を使う手続へ広げる改正です。裁判所は、2026年5月21日に施行された改正民事訴訟法・改正民事訴訟規則の手続概要を公表し、訴状、準備書面、証拠、判決書、調書、訴訟記録の取扱いが電子データを中心に変わることを案内しています。オンラインで提出された書面だけでなく、裁判所が作成する裁判書等も電子的に管理される点が大きな変更です。

項目内容
主な対象民事訴訟手続
施行日2026年5月21日
主な仕組みオンライン提出、記録電子化、システム送達、オンライン閲覧、電子納付
関係システム民事裁判書類電子提出システム mints
根拠法令民事訴訟法、民事訴訟規則、民事訴訟費用等に関する法律・規則など

この改正は、単に提出手段が増えるだけではありません。事件記録の作成・保管・閲覧、裁判所からの送達、手数料や郵便費用に相当する額の納付、期日への参加方法が連動して変わります。紙の訴訟記録を前提にしていた社内手順や弁護士とのやり取りも、電子ファイル名、提出期限、アップロード後の確認、電子納付の証跡、オンライン閲覧権限の管理を含めて見直す必要があります。

mintsとオンライン提出の対象

オンライン提出では、裁判所の民事裁判書類電子提出システムであるmintsを利用します。裁判所の案内では、訴状、準備書面、証拠等をオンラインで提出でき、判決書等をオンラインで受け取ることができると説明されています。利用するには専用システムへの利用者登録が必要で、インターネットに接続できる機器や環境、氏名・住所・電話番号・メールアドレス・生年月日等の登録が関係します。登録により付与されるIDは、以後の民事訴訟手続で使うものとして案内されています。

紙の提出が完全になくなるわけではありません。裁判所資料では、弁護士等ではない人向けに、これまでと同様に紙の書面を提出できる旨が説明されています。一方、弁護士等についてはオンライン提出が義務付けられるため、代理人がいる事件では、訴状、準備書面、証拠、委任状、添付資料の電子化と提出管理が実務上の前提になります。企業側では、紙原本しかない契約書や証憑をどの形式でデータ化するか、秘密情報を含む証拠をどの範囲で共有するか、提出前確認を誰が行うかを決めておくことが重要です。

オンライン提出の対象時期も確認が必要です。裁判所資料では、2026年5月21日以降に訴えが提起された事件がオンライン提出の対象とされ、それより前に訴えが提起された事件は従来どおり紙の書面を提出する扱いが示されています。継続中の事件と新規事件が並行する企業では、事件ごとに手続ルールが異なる可能性があるため、事件番号、提起日、担当代理人、提出方式を台帳で管理すると混乱を避けやすくなります。

訴訟記録の電子化とオンライン閲覧

デジタル化後の民事訴訟では、提出された書面や裁判所が作成する書類が電子データで管理され、当事者等はオンラインで裁判記録を閲覧できるようになります。裁判所の資料では、2026年5月21日以降に訴えが提起された事件について、事件係属中は専用システムへの利用者登録によりオンライン閲覧できることが案内されています。これにより、裁判所へ来庁して紙の記録を閲覧する従来型の作業が、一定の範囲でオンラインに移ります。

もっとも、過去の事件や2026年5月21日より前に訴えが提起された事件については、紙により訴訟記録が作成されるため、オンライン閲覧の対象としては扱われません。社内で複数の訴訟を抱える場合、同じ民事訴訟でも「オンライン閲覧できる事件」と「従来どおり裁判所で閲覧する事件」が混在することになります。閲覧できる人、閲覧方法、記録の保管先、社内共有の範囲を事件ごとに整理する必要があります。

記録が電子化されると、利便性が上がる一方で、ファイル管理の重要性も高まります。提出済み書面と社内ドラフトの取り違え、誤ったファイルのアップロード、閲覧権限の付与漏れ、個人情報や営業秘密を含む資料の社内共有範囲などが問題になり得ます。裁判所は誤アップロード時の対応資料も公表しているため、提出前チェック、ファイル名ルール、電子署名・真正性確認、ダウンロード後の保管手順をあらかじめ整えることが実務上の準備になります。

ウェブ会議による期日参加と法廷での傍聴

民事訴訟の期日では、裁判所の判断によりウェブ会議の方法で参加できる場面があります。裁判所資料では、ウェブ会議への参加には、インターネットに接続できる機器や環境に加え、カメラ、マイク、スピーカーが必要であり、Teamsを利用する旨が案内されています。裁判所から送信される招待メールや会議ID・パスコードにより、口頭弁論等の期日に参加する流れが想定されています。

期日のデジタル化は、移動時間の削減や遠隔地からの参加に役立つ一方、当日の通信環境、本人確認、発言順序、資料提示、録音・録画の扱いなど、運用面の確認が重要になります。企業の担当者が期日に同席する場合は、どの端末を使うか、誰が接続するか、社内会議室で参加するか、自宅等から参加するか、周囲に第三者がいない環境を確保できるかを事前に調整する必要があります。代理人との事前打合せも、紙の期日出頭とは異なる段取りになります。

なお、当事者ではない人の口頭弁論期日の傍聴は、従来どおり裁判所の法廷で行う扱いが案内されています。ウェブ会議による参加は、手続に関与する当事者等の期日参加方法として理解し、一般傍聴がインターネットでできる制度と混同しないことが大切です。公開法廷の原則、当事者の手続参加、オンライン会議の運用は、それぞれ目的と制度上の位置づけが異なります。

手数料・郵便費用相当額の電子納付

民事訴訟のデジタル化では、提出方法だけでなく費用の納付方法も変わります。裁判所資料では、従来は訴え提起の手数料を収入印紙で納付し、訴状や判決等を郵送する費用を郵便切手で予納していたところ、2026年5月21日以降は、訴え提起の手数料と郵便費用に相当する額を合算した額をペイジーで電子納付することが案内されています。インターネットバンキングやATMを利用する納付方法が前提になります。

企業実務では、電子納付に対応できる経理・法務の分担が必要です。訴訟代理人が納付するのか、会社が直接納付するのか、立替精算をどう処理するのか、納付番号や領収に相当する記録をどのように保存するのかを確認します。従来の収入印紙や郵便切手の管理から、電子納付記録と事件台帳をひも付ける管理へ変わるため、社内の支払申請、証憑保存、予算管理の手順にも影響します。

また、オンラインで訴えを提起する場合と書面で訴えを提起する場合で、郵便費用に相当する額が異なる旨も裁判所資料で示されています。金額は裁判所の手数料早見表や関係規則で確認する必要があります。訴訟費用は事件類型、請求額、当事者数、提出方法によって確認事項が変わるため、実際の納付額は最新の裁判所資料と事件担当者の案内で確認する流れになります。

対象外手続と今後確認する資料

2026年5月21日に始まったデジタル化の対象は、民事訴訟手続が中心です。裁判所は、民事執行、倒産、労働審判等の非訟手続、人事訴訟手続、家事事件手続については、この時点の民事訴訟手続のデジタル化によるオンライン申立て等の対象外であり、これらの手続は2028年6月までにオンライン申立て等の対象となる予定であると案内しています。訴訟以外の手続を扱う場合は、民事訴訟と同じ前提で進めないように注意が必要です。

法務省は、民事執行手続、倒産手続、家事事件手続等の民事関係手続のデジタル化を図る改正法についても資料を公表しています。民事訴訟法の全面IT化を理解するときは、民事訴訟だけでなく、民事執行、保全、倒産、家事、人事訴訟のデジタル化が段階的に進む流れの中で見ると整理しやすくなります。企業法務では、判決取得後の強制執行、仮差押え、破産手続、労働審判、家事関連事件など、周辺手続の施行時期も別途確認する必要があります。

実務で参照する資料は、法律本文だけでは足りません。裁判所の「民事裁判手続のデジタル化」ページには、改正民訴法等の概要、mints、本人サポート態勢、フェーズ3準備の手引、手数料早見表、書式、関係規則がまとめられています。手続の進行中は、裁判所からの個別案内、システムの稼働状況、最高裁判所規則・告示、法務省資料を確認し、提出期限や提出形式を取り違えないように管理することが重要です。

参考リンク

民事訴訟手続のデジタル化を確認するときは、まず裁判所の特設ページで運用資料を確認し、次に民事訴訟法・民事訴訟規則・費用関係規則を確認する流れが実務的です。民事執行、倒産、家事事件など周辺手続については、法務省の民事関係手続IT化資料も合わせて確認してください。