行政書士法(法令ID:326AC1000000004)は、行政書士の使命、業務、資格・登録、法人、監督等を定めます。法令全集とe-Gov法令検索に条文があります。依頼する業務の制度上の区分を調べる人や、資格取得後の登録を学ぶ人が参照します。本記事は業務と資格制度の基本を扱い、個別の受任可否や報酬額は判断しません。2026年9月15日時点について、2026年5月21日施行版を確認しています。
書類作成と代理を分けて業務範囲を読む
第1条は、行政手続の円滑な実施と国民の利便を通じた権利利益の実現を使命としています。具体的な業務は、現行法では第1条の3と第1条の4に規定されています。
第1条の3は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署への提出書類、権利義務または事実証明に関する書類等を作成する業務を定めます。紙に代わる電磁的記録や、実地調査に基づく図面類も含まれます。ただし、他の法律が制限する業務は行えない旨が明示されています。「書類であれば種類を問わず作成できる」という意味ではありません。
第1条の4は提出手続等の代理、一定の契約書類等の代理作成、書類作成に関する相談などを掲げます。ここでも他法令による制限があり、代理の対象となる手続や行為が限定されています。書類の作成、提出の代理、相談を別々に規定しているため、依頼の内容を整理する際は、どの業務類型の説明なのかを明らかにすることが基本になります。
特定行政書士の不服申立て業務
第1条の4第1項第2号は、行政書士が作成できる官公署提出書類に係る許認可等について、審査請求等の不服申立て手続の代理と書類作成を規定します。通常の書類提出とは別の業務区分です。
同条第2項は、この業務を、日本行政書士会連合会が会則に基づいて実施する研修課程を修了した「特定行政書士」に限っています。行政書士の登録があることと、不服申立て業務に必要な研修を修了していることは、別の確認事項です。また、現行条文は「作成することができる」書類との関係で対象を定めており、旧条文の表現をそのまま用いないことが必要です。
この規定を、あらゆる紛争や訴訟の代理を認めるものと広げて説明することはできません。対象は条文が定める行政庁への不服申立てで、他法令の制限も残ります。許認可申請の準備、処分後の行政上の不服申立て、裁判所での訴訟という段階は区別し、行政書士法がどの段階の業務を定めているかを確認する関係です。
資格を有することと登録を受けること
第2条は行政書士となる資格を有する者を列挙しています。行政書士試験合格者のほか、他の資格を有する者や一定の行政事務経験を有する者等についても規定があります。
一方、第6条は、行政書士となるには日本行政書士会連合会の行政書士名簿への登録が必要としています。名簿には氏名等だけでなく、事務所の名称・所在地その他の事項を登録します。試験の合格等によって資格を有する段階と、実際に行政書士として登録する段階を分けている点が重要です。
第6条の2は、事務所所在地の都道府県の行政書士会を経由して登録申請をする手続を定めます。資格を証する書類を添え、連合会が登録の可否を判断します。登録を拒否する場合の資格審査会の議決や弁明機会の規定もあり、単なる名簿入力ではありません。資格の入口、事務所を基準にする申請経路、登録審査という順で読むと、試験制度だけでは分からない職業制度の全体が見えてきます。
守秘義務と公正な業務遂行
第1条の2は品位の保持、法令・実務への精通、公正・誠実な業務遂行を職責として定めます。情報通信技術の活用等を通じた利便向上と業務の改善進歩に努める規定もあります。
第10条は信用や品位を害する行為の禁止、第12条は業務上知り得た秘密を正当な理由なく漏らしてはならないことを定めます。守秘義務は行政書士でなくなった後も続きます。書類を作成する過程で知る事情を、その後の立場の変化だけで自由に扱えるという仕組みではありません。
これらの規定は、業務の範囲を広げるものではなく、認められた業務をどのように遂行するかを規律します。作成できる書類かという業務範囲の確認と、秘密の取扱い・公正な遂行という職責の確認は別です。特に電子的な手続でも、媒体が変わったことによって業務上の責務が消えるわけではなく、現行法は技術活用と専門職としての職責を併せて位置付けています。
行政書士法人と監督の仕組み
第13条の3は、行政書士が行政書士法人を設立できることを定めます。法人になれば、個人の行政書士に認められない業務が無制限にできるという制度ではありません。
第13条の6は法人の業務範囲を規定し、特定業務については、その業務を行うことのできる行政書士が社員の中にいる法人に限るとしています。法人の定款と、社員が有する業務上の資格を対応させる必要があります。法人として受任することと、担当する専門職の要件を確認することは両立する仕組みです。
第14条は行政書士に対する都道府県知事の懲戒として戒告、一定期間の業務停止、業務禁止を定めます。第19条は行政書士または行政書士法人でない者の業務を制限し、他法令等による例外も置きます。登録・法人制度、業務の制限、職責、監督を組み合わせることで、誰がどの業務を担う制度なのかが明確になります。
事務所・帳簿・報酬の掲示で業務を記録する
第8条は、行政書士が業務を行う事務所を設けることを定めています。ただし、他の行政書士の使用人や行政書士法人の社員・使用人である行政書士は別に扱われ、個人の行政書士が二つ以上の事務所を設けることにも制限があります。個人の事務所と法人の事務所を、同じ設置ルールとして説明する条文ではありません。
第9条では、事件の名称、年月日、受けた報酬額、依頼者の住所・氏名などを帳簿に記載します。帳簿と関係書類は、帳簿を閉鎖した時から2年間保存することとされ、行政書士でなくなった後にも適用されます。業務を受けたことだけでなく、どの案件をいつ扱い、どの程度の報酬を受けたかを確認できる記録を残す制度です。
第10条の2は、事務所の見やすい場所に報酬額を掲示することを求めています。行政書士会と連合会による報酬統計の作成・公表の努力義務もあります。法律が全案件について一律の報酬額を直接定めるのではなく、利用者が選択するための情報提供と、受任した業務の記録を組み合わせています。業務範囲や守秘義務とともに、事務所運営の透明性に関係する規定です。
登録と行政書士会への入会は結び付いている
第15条は、都道府県の区域ごとに一つの行政書士会を設立することを定めています。会員の品位保持や業務の改善進歩のため、指導と連絡に関する事務を行うことが目的です。単に同じ地域の行政書士が任意で集まる親睦団体ではなく、法律によって組織と役割が定められた団体です。
第16条の5では、登録を受けた行政書士が、その事務所所在地の都道府県の行政書士会の会員となることを規定しています。他の都道府県へ事務所を移転した場合は、従前の会から退会し、移転先の会の会員となる仕組みです。資格の取得、名簿への登録、地域の会への所属は別の概念ですが、登録や事務所移転を通して相互に結び付いています。
第18条の日本行政書士会連合会は、全国の行政書士会によって設立され、会と会員への指導・連絡に加え、行政書士の登録事務を行います。都道府県の行政書士会、全国の連合会、懲戒を行う行政庁は、それぞれの条項で役割が分かれています。依頼先の登録や業務の監督を調べる際には、これらを一つの機関として扱わず、登録・会務・行政上の監督の別から確認できます。
参考リンク
本文は第1条から第2条、第6条・第6条の2、第10条・第12条、第13条の3・第13条の6、第14条・第19条を参照しています。