行政不服審査法(法令ID:426AC0000000068)は、行政庁の処分や不作為について、不服申立てをするための制度を定める法律です。条文全文は法令全集の行政不服審査法ページまたはe-Gov法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/)で無料で閲覧できます。

許認可の拒否、行政処分による営業停止・免許取消など、行政庁の処分に不服がある場合の手続として、審査請求を定めているのがこの法律です。行政訴訟(行政事件訴訟法による取消訴訟等)との選択・組み合わせも含めて確認が必要になります。

この記事では、行政不服審査法の基本情報、条文の章別構成、審査請求の流れと主要条文の確認ポイントを整理します。個別の処分に対する審査請求の可否や期限を判断するものではありません。

基本情報

行政不服審査法は、平成26年(2014年)法律第68号として制定され、昭和37年法律第160号の行政不服審査法を全部改正した法律です。第1条は、簡易迅速かつ公正な手続の下で広く行政庁に対する不服申立てをすることができる制度を定め、国民の権利利益の救済と行政の適正な運営の確保を目的としています。

項目内容
正式名称行政不服審査法
法令番号平成二十六年法律第六十八号
法令ID426AC0000000068
制定年2014年
主な分野審査請求、不作為、審理員、執行停止、裁決、再調査、再審査

総務省は、行政不服審査法の概要や事務取扱ガイドライン、運用状況調査結果などを公開しています。

平成26年(2014年)の全部改正の主な変更点は、審理員制度の創設(公正な第三者による審理の担保)、行政不服審査会への諮問制度の新設、審査請求期間の延長(従来の60日から3か月)、不服申立ての一元化(異議申立制度の原則廃止)などです。旧法(昭和37年)の制度と比較して読む場合は、これらの変更を念頭に置きます。

行政不服審査法の審査請求は、処分を行った行政庁に対してではなく、原則として審査庁(処分庁の上級行政庁等)に対して行います。どの機関が審査庁になるかは、根拠法令・処分の種類・行政組織によって変わります。

条文構成

行政不服審査法は、総則、審査請求、再調査の請求、再審査請求、行政不服審査会等、補則、罰則で構成されています。以下は主要な章の概要です(出典:e-Gov法令検索 掲載の条文)。

主な内容
第一章 総則目的、処分・不作為についての審査請求、適用除外
第二章 審査請求審査庁、審理関係人、審査請求期間、審理手続、裁決
第三章 再調査の請求処分庁に対する再調査の請求
第四章 再審査請求法律に定めがある場合の再審査請求
第五章 行政不服審査会等行政不服審査会、地方公共団体に置かれる機関
第六章 補則教示、情報提供、標準審理期間等
第七章 罰則秘密保持等に関する罰則

まず第一章で制度の対象範囲を確認し、次に第二章で審査請求の流れを追うと、全体像をつかみやすくなります。

条文を読むときは、第1条(目的)と第2条・第3条(審査請求の対象)で大枠を確認し、第4条(審査庁)で誰に対して請求するかを確認します。第5条で審査請求と再調査の請求の関係、第6条で再審査請求の要件を確認します。その後、第二章の審理手続の流れを追うと、申立てから裁決までの手順を把握できます。

第二章は審査請求の最も詳細な手続を定めており、条文数が多い章です。審査請求書の記載から裁決・裁決書の送達まで、順を追って読むと手続全体の流れが見えやすくなります。

審査請求の対象

第一章は、処分と不作為に関する審査請求を定めています。条文上は、処分に不服がある場合と、申請に対する不作為がある場合が区別されています。

第2条は、行政庁の処分に不服がある者が審査請求をすることができると定めています。第3条は、法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者が、相当の期間が経過しても行政庁の不作為がある場合に、不作為について審査請求をすることができると定めています。

一方で、第7条には適用除外が置かれています。刑事事件に関する処分、学校等における教育目的の処分、外国人の出入国または帰化に関する処分など、一定の処分については、この法律の規定が適用されないものがあります。

審査請求の対象となる処分かどうかを確認するときは、まず当該処分の根拠法令を特定し、その法令に個別の不服申立て手続が定められているかを確認します。個別法に特別の規定がある場合は、その規定が行政不服審査法の規定に優先することがあります。処分通知書(決定書・命令書等)には、不服申立ての方法・期間・審査庁を教示する義務(第82条)が課されているため、処分通知書の記載を最初に確認します。

なお、処分に対する審査請求は「行政庁の処分に対する不服申立て」であるため、処分ではなく行政指導に対して審査請求を行うことは原則としてできません。行政指導に対する対応と処分への対応は、制度上区別されています。

審理員と審理手続

第二章は、審査請求の手続を詳しく定めています。審理員制度、審査請求書、補正、執行停止、口頭意見陳述、証拠書類等の提出などが含まれます。

第9条は、審査庁が審理手続を行う者として審理員を指名することを定めています。ただし、審査庁が一定の委員会等である場合や、却下する場合などには例外があります。

第25条は、審査請求が処分の効力、処分の執行、手続の続行を妨げないことを定めたうえで、一定の場合に執行停止をすることができると定めています。

審査請求の流れを確認するときは、次の主要条文を順番に参照します。第19条(審査請求書の記載事項)、第23条(審査請求書の補正)、第24条(審査請求の却下)、第25条(執行停止)、第29条(弁明書の提出)、第30条〜32条(口頭意見陳述・証拠書類・参考人)、第42条(審理員意見書)、第43条(行政不服審査会等への諮問)、第44条〜51条(裁決の種類・方式・効力)が確認のポイントです。

審理員意見書(第42条)と行政不服審査会等の答申(第43条)は、裁決の前に行われる手続です。審査庁は答申を尊重しつつ裁決を行いますが、答申の内容に法的拘束力があるわけではありません。

裁決・再調査・再審査

審査請求の審理が終わると、審査庁は裁決を行います。裁決には、却下、棄却、認容などの類型が置かれています。

第二章第五節は、裁決について定めています。審査請求が不適法である場合の却下、理由がない場合の棄却、理由がある場合の認容などが規定されています。

第三章は再調査の請求、第四章は再審査請求を扱います。再調査の請求や再審査請求は、どの処分でも当然に使えるものではなく、法律に定めがある場合などに問題となります。

裁決には、申請を不適法として却下する裁決(第45条・第49条)、申請に理由がないとして棄却する裁決(同)、申請に理由があるとして認容する裁決(第46条・第47条・第49条)の区別があります。取消裁決、無効確認裁決、義務付け裁決など、処分・不作為の性質によって認容の形が変わります。

第52条は、裁決の拘束力を定めています。関係行政庁(処分庁を含む)は、裁決の主文および理由に拘束されます。ただし、裁決は行政不服審査法上の手続における判断であり、行政事件訴訟法による取消訴訟を妨げるものではありません。

行政不服審査会等

第五章は、行政不服審査会等について定めています。審査庁が裁決をする前に、一定の場合に第三者機関へ諮問する枠組みが置かれています。

行政不服審査会等は、審理員意見書や事件記録を踏まえて調査審議を行う機関です。地方公共団体の場合は、条例に基づいて置かれる機関が関係する場合があります。

この部分は、個別の行政庁や自治体の制度設計によって確認すべき機関が変わるため、対象となる手続の案内資料や条例も参照する必要があります。

国の行政機関が審査庁となる場合は、総務省設置の行政不服審査会(第67条)への諮問が行われます。地方公共団体に置かれる機関(条例による機関)は、自治体ごとに構成や手続が異なるため、対象となる自治体の条例・設置要綱を確認します(第81条・第82条)。

行政不服審査法の諮問手続(第43条)は、審査庁が裁決する前に、行政不服審査会等の意見を聞くことが義務付けられる場合があります。ただし、一定の場合(例:事実上の行為等に関する審査請求で認容する場合)は諮問が不要なこともあるため、条文を確認します。

審査請求の期間と教示制度

審査請求期間は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内が原則です(第18条第1項)。また、処分があった日の翌日から1年を経過したときは、正当な理由があるものを除き審査請求をすることができません(同条第2項)。

処分を行った行政庁は、処分の相手方に対して、審査請求ができる旨、審査請求先の行政庁、審査請求期間を書面で教示する義務があります(第82条)。審査請求先や期間の教示が処分通知書に記載されているため、処分を受けた場合はまずその記載を確認します。

教示が誤っていた場合や教示がなかった場合は、期間の例外扱いが認められることがあります(第22条・第83条等)。処分通知書に審査請求の教示がない場合や、記載内容に疑問がある場合は、所管行政庁に確認するか専門家に相談することが重要です。

行政手続法・行政事件訴訟法との関係

行政不服審査法は、行政法の中で「行政救済法」の一部を構成します。関連する法令として、行政手続法(処分・行政指導・届出の手続)と行政事件訴訟法(取消訴訟等の行政訴訟)があります。

行政手続法は処分が行われる前の手続(申請・審査基準・理由の提示等)を規律し、行政不服審査法は処分が行われた後の行政内部での不服申立てを規律します。行政事件訴訟法は裁判所による司法的な救済を定めます。行政手続の問題は、これら三つの法律をそれぞれの役割で参照することが基本です。

行政不服審査法による審査請求と行政事件訴訟法による取消訴訟は、それぞれ利用できる場面、費用、期間、効果が異なります。どちらを選ぶか、または両方を組み合わせるかは、処分の内容、根拠法令の規定、求める救済の内容によって異なるため、弁護士に確認することが重要です。

読むときの注意点

行政不服審査法は、行政処分に対する救済手続の基本法ですが、個別法に特別の定めがある場合があります。また、審査請求期間、審査庁、再調査の請求の可否、再審査請求の可否は、対象となる処分や根拠法令によって変わります。

この記事は条文構成の案内であり、特定の処分について審査請求ができるか、期限内か、どの主張をすべきかを判断するものではありません。具体的な手続では、処分通知書の教示、所管行政庁の案内、弁護士等の専門家に確認してください。

審査請求は、行政訴訟(取消訴訟等)との関係も考慮する必要があります。処分の取消しを求める取消訴訟を提起する前に審査請求を経ることが必要な場合(審査請求前置)があります。個別法に「審査請求前置」の規定がある場合は、審査請求の裁決を経なければ取消訴訟を提起できないとされています。一方、審査請求前置の規定がない場合は、審査請求と取消訴訟を選択または組み合わせることができます。

取消訴訟の出訴期間(行政事件訴訟法第14条)も確認が必要です。処分を知った日から6か月、または処分から1年が原則とされており、審査請求との関係で期間の計算が変わる場合があります。

参考リンク

この記事は、以下の公式資料等を参照して作成しています。

行政不服審査法は改正が重なっているため、この記事の内容よりも上記の公式資料の最新版を優先して確認してください。個別の処分への対応・審査請求・行政訴訟については弁護士にご相談ください。

条文の確認にあたり、総務省は行政不服審査法の解説資料や逐条解説(「行政不服審査法の解説」)を公表しています。審査請求書の様式例・裁決書の例は総務省のウェブサイトで案内されています。地方公共団体における行政不服審査会の設置状況は総務省の調査で公表されており、各自治体の条例制定状況もあわせて確認できます。