第一章 総則
(趣旨)第一条 この法律は、令和六年能登半島地震災害の被災者の負担の軽減を図るため、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)及び災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(昭和二十二年法律第百七十五号)の特例を定めるものとする。
(定義)第二条 この法律において「令和六年能登半島地震災害」とは、令和六年一月一日に発生した令和六年能登半島地震による災害をいう。
2 次章において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。一 居住者 所得税法第二条第一項第三号に規定する居住者をいう。
二 確定申告書 所得税法第二条第一項第三十七号に規定する確定申告書をいう。
三 修正申告書 国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第十九条第三項に規定する修正申告書をいう。
四 更正請求書 国税通則法第二十三条第三項に規定する更正請求書をいう。
五 不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得 それぞれ所得税法第二編第二章第二節第一款に規定する不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得をいう。
六 事業所得の金額 所得税法第二十七条第二項に規定する事業所得の金額をいう。
第二章 所得税法の特例
(雑損控除の特例)第三条 居住者又はその者と生計を一にする配偶者その他の親族で政令で定めるものの有する所得税法第七十二条第一項に規定する資産について令和六年能登半島地震災害により生じた損失の金額(令和六年能登半島地震災害に関連するその居住者によるやむを得ない支出で政令で定めるもの(以下この項において「災害関連支出」という。)の金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される部分の金額を除く。以下この項及び次条第四項において「特例損失金額」という。)がある場合には、特例損失金額(災害関連支出がある場合には、次項に規定する確定申告書、修正申告書又は更正請求書の提出の日の前日までに支出したものに限る。以下この項において「損失対象金額」という。)について、その居住者の選択により、令和五年において生じた同法第七十二条第一項に規定する損失の金額として、同法の規定を適用することができる。 この場合において、同項の規定により控除された金額に係る当該損失対象金額は、その居住者の令和六年分以後の年分で当該損失対象金額が生じた年分の所得税に係る同法の規定の適用については、当該損失対象金額が生じた年において生じなかったものとみなす。
2 前項の規定は、令和五年分の確定申告書、修正申告書又は更正請求書に同項の規定の適用を受けようとする旨の記載がある場合に限り、適用する。 (被災事業用資産の損失の必要経費算入に関する特例等)第四条 居住者の有する棚卸資産(所得税法第二条第一項第十六号に規定する棚卸資産をいう。)について令和六年能登半島地震災害により生じた損失の金額(令和六年能登半島地震災害に関連するやむを得ない支出で政令で定めるもの(以下この条において「災害関連支出」という。)の金額を含む。以下この項において「棚卸資産震災損失額」という。)がある場合には、棚卸資産震災損失額(災害関連支出がある場合には、第五項に規定する確定申告書、修正申告書又は更正請求書の提出の日(次項から第四項までにおいて「申告書等提出日」という。)の前日までに支出したものに限る。以下この項において「棚卸資産損失対象額」という。)について、その者の選択により、令和五年において生じたものとして、その者の同年分の事業所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。 この場合において、当該事業所得の金額の計算上必要経費に算入された当該棚卸資産損失対象額は、その者の令和六年分以後の年分で当該棚卸資産損失対象額が生じた年分の所得税に係る同法の規定の適用については、当該棚卸資産損失対象額が生じた年において生じなかったものとみなす。
2 居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産(所得税法第二条第一項第十八号に規定する固定資産をいう。)その他これに準ずる資産で政令で定めるものについて令和六年能登半島地震災害により生じた損失の金額(災害関連支出の金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される部分の金額を除く。以下この項及び第四項において「固定資産震災損失額」という。)がある場合には、固定資産震災損失額(災害関連支出がある場合には、申告書等提出日の前日までに支出したものに限る。以下この項において「固定資産損失対象額」という。)について、その者の選択により、令和五年において生じた同法第五十一条第一項に規定する損失の金額として、同法の規定を適用することができる。 この場合において、同項の規定により必要経費に算入された当該固定資産損失対象額は、その者の令和六年分以後の年分で当該固定資産損失対象額が生じた年分の所得税に係る同法の規定の適用については、当該固定資産損失対象額が生じた年において生じなかったものとみなす。 3 居住者の有する山林について令和六年能登半島地震災害により生じた損失の金額(災害関連支出の金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される部分の金額を除く。以下この項において「山林震災損失額」という。)がある場合には、山林震災損失額(災害関連支出がある場合には、申告書等提出日の前日までに支出したものに限る。以下この項において「山林損失対象額」という。)について、その者の選択により、令和五年において生じた所得税法第五十一条第三項に規定する損失の金額として、同法の規定を適用することができる。 この場合において、同項の規定により必要経費に算入された当該山林損失対象額は、その者の令和六年分以後の年分で当該山林損失対象額が生じた年分の所得税に係る同法の規定の適用については、当該山林損失対象額が生じた年において生じなかったものとみなす。 4 居住者の不動産所得若しくは雑所得を生ずべき業務の用に供され、又はこれらの所得の基因となる所得税法第五十一条第四項に規定する資産について令和六年能登半島地震災害により生じた損失の金額(災害関連支出の金額を含むものとし、保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補塡される部分の金額及び固定資産震災損失額又は特例損失金額を除く。以下この項において「業務用資産震災損失額」という。)がある場合には、業務用資産震災損失額(災害関連支出がある場合には、申告書等提出日の前日までに支出したものに限る。以下この項において「業務用資産損失対象額」という。)について、その者の選択により、令和五年において生じた同条第四項に規定する損失の金額として、同法の規定を適用することができる。 この場合において、同項の規定により必要経費に算入された金額に係る当該業務用資産損失対象額は、その者の令和六年分以後の年分で当該業務用資産損失対象額が生じた年分の所得税に係る同法の規定の適用については、当該業務用資産損失対象額が生じた年において生じなかったものとみなす。 5 前各項の規定は、令和五年分の確定申告書、修正申告書又は更正請求書にこれらの規定の適用を受けようとする旨及びこれらの規定により必要経費に算入される金額の記載がある場合に限り、適用する。 (非居住者への適用)第五条 前二条の規定は、非居住者(所得税法第二条第一項第五号に規定する非居住者をいう。)に課する所得税の課税標準及び所得税の額を計算する場合について準用する。
(政令への委任)第六条 前三条に定めるもののほか、この章の規定の適用がある場合における所得税法その他の法令の規定に関する技術的読替えその他この章の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
第三章 災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の特例
第七条 令和六年能登半島地震災害により住宅又は家財について甚大な被害を受けた者については、その者の選択により、当該被害を令和五年において受けたものとして、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律第二条の規定を適用することができる。 この場合において、令和五年分の所得税について同条の規定の適用を受けた者に係る令和六年分の所得税についての同条の規定の適用については、当該令和六年能登半島地震災害による被害を同年において受けなかったものとみなす。
2 前項の規定の適用を受ける場合における災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律第三条の規定の適用その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。