第一章 総則
(目的)第一条 この法律は、社会の変化により個人と社会及び他者との関わりが希薄になる中で、日常生活若しくは社会生活において孤独を覚えることにより、又は社会から孤立していることにより心身に有害な影響を受けている状態(以下「孤独・孤立の状態」という。)にある者の問題が深刻な状況にあることを踏まえ、孤独・孤立の状態となることの予防、孤独・孤立の状態にある者への迅速かつ適切な支援その他孤独・孤立の状態から脱却することに資する取組(以下「孤独・孤立対策」という。)について、その基本理念、国等の責務及び施策の基本となる事項を定めるとともに、孤独・孤立対策推進本部を設置すること等により、他の関係法律による施策と相まって、総合的な孤独・孤立対策に関する施策を推進することを目的とする。
(基本理念)第二条 孤独・孤立対策は、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。
一 孤独・孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会の変化により孤独・孤立の状態にある者の問題が深刻な状況にあることに鑑み、孤独・孤立の状態にある者の問題が社会全体の課題であるとの認識の下に、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要であることを旨とすること。
二 孤独・孤立の状態となる要因及び孤独・孤立の状態が多様であることに鑑み、孤独・孤立の状態にある者及びその家族等(以下「当事者等」という。)の立場に立って、当事者等の状況に応じた支援が継続的に行われるようにすることを旨とすること。
三 当事者等に対しては、その意向に沿って当事者等が社会及び他者との関わりを持つことにより孤独・孤立の状態から脱却して日常生活及び社会生活を円滑に営むことができるようになることを目標として、必要な支援が行われるようにすることを旨とすること。
(国の責務)第三条 国は、前条に定める基本理念(次条及び第六条において「基本理念」という。)にのっとり、孤独・孤立対策に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)第四条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、孤独・孤立対策に関し、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その区域内における当事者等の状況に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(国民の努力)第五条 国民は、孤独・孤立の状態にある者に対する関心と理解を深めるとともに、国及び地方公共団体が実施する孤独・孤立対策に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(関係者の連携及び協力)第六条 国、地方公共団体、当事者等への支援を行う者、地域住民その他の関係者は、基本理念の実現に向けて、相互に連携を図りながら協力するよう努めるものとする。
(法制上の措置等)第七条 政府は、孤独・孤立対策に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
第二章 孤独・孤立対策に関する施策
(孤独・孤立対策の重点計画)第八条 孤独・孤立対策推進本部は、孤独・孤立対策に関する施策の推進を図るための重点計画(以下この条及び第二十一条第一項第一号において「孤独・孤立対策重点計画」という。)を作成しなければならない。
2 孤独・孤立対策重点計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。一 孤独・孤立対策に関する施策についての基本的な方針
二 孤独・孤立対策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
三 前二号に掲げるもののほか、孤独・孤立対策に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 孤独・孤立対策重点計画に定める施策については、原則として、当該施策の具体的な目標及びその達成の期間を定めるものとする。 4 孤独・孤立対策推進本部は、第一項の規定により孤独・孤立対策重点計画を作成したときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 これを変更したときも、同様とする。 5 孤独・孤立対策推進本部は、適時に、第三項の規定により定める目標の達成状況を調査し、その結果を遅滞なく公表しなければならない。 (国民の理解の増進等)第九条 国及び地方公共団体は、孤独・孤立対策に関し、広く国民一般の関心を高め、その理解と協力を得るとともに、社会を構成する多様な主体の参加による自主的な活動に資するよう、必要な啓発活動を積極的に行うよう努めるものとする。
(相談支援)第十条 国及び地方公共団体は、地方公共団体、当事者等への支援を行う者、地域住民その他の関係者が、当事者等からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言その他の支援を行うことを推進するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(協議の促進等)第十一条 国及び地方公共団体は、国、地方公共団体、当事者等への支援を行う者、地域住民その他の関係者が相互に連携と協働を図ることにより、孤独・孤立対策に関する施策の効果的な推進が図られることに鑑み、これらの者の間における協議の促進その他の関係者相互間の連携と協働を促進するために必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(人材の確保等)第十二条 国及び地方公共団体は、当事者等への支援を行う人材の確保、養成及び資質の向上に必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(地方公共団体及び当事者等への支援を行う者に対する支援)第十三条 国は、孤独・孤立対策に関する施策に関し、地方公共団体が実施する施策及び当事者等への支援を行う者が行う孤独・孤立対策に係る活動を支援するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(調査研究の推進)第十四条 国は、孤独・孤立の状態にある者の実態に関する調査研究その他の孤独・孤立対策に関する施策の策定に必要な調査研究を推進するよう努めるものとする。
(孤独・孤立対策地域協議会)第十五条 地方公共団体は、孤独・孤立対策を推進するために必要な連携及び協働を図るため、単独で又は共同して、当事者等に対する支援(以下この項、次条及び第十七条第二項において単に「支援」という。)に関係する機関及び団体、支援に関係する職務に従事する者その他の関係者(次条第二項及び第二十一条第二項において「関係機関等」という。)により構成される孤独・孤立対策地域協議会(以下「協議会」という。)を置くよう努めるものとする。
2 地方公共団体の長は、協議会を設置したときは、内閣府令で定めるところにより、その旨を公示しなければならない。 (協議会の事務等)第十六条 協議会は、前条第一項の目的を達するため、必要な情報の交換を行うとともに、支援の内容に関する協議を行うものとする。
2 協議会を構成する関係機関等(次項及び次条において「構成機関等」という。)は、前項の協議の結果に基づき、支援を行うものとする。 3 協議会は、第一項に規定する情報の交換及び協議を行うため必要があると認めるとき、又は構成機関等による支援の実施に関し他の構成機関等から要請があった場合において必要があると認めるときは、構成機関等に対し、支援の対象となる当事者等に関する情報の提供、意見の開陳その他の必要な協力を求めることができる。 (協議会の孤独・孤立対策調整機関)第十七条 協議会を設置した地方公共団体の長は、構成機関等のうちから一の機関又は団体を限り孤独・孤立対策調整機関(次項及び次条において「調整機関」という。)として指定することができる。
2 調整機関は、協議会に関する事務を総括するとともに、必要な支援が適切に行われるよう、協議会の定めるところにより、構成機関等が行う支援の状況を把握しつつ、必要に応じて他の構成機関等が行う支援を組み合わせるなど構成機関等相互の連絡調整を行うものとする。 (秘密保持義務)第十八条 協議会の事務(調整機関としての事務を含む。以下この条において同じ。)に従事する者又は協議会の事務に従事していた者は、正当な理由がなく、協議会の事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
(協議会の定める事項)第十九条 第十五条から前条までに定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会が定める。
第三章 孤独・孤立対策推進本部
(設置)第二十条 内閣府に、特別の機関として、孤独・孤立対策推進本部(以下「本部」という。)を置く。
(所掌事務等)第二十一条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 孤独・孤立対策重点計画を作成し、及びその実施を推進すること。
二 前号に掲げるもののほか、孤独・孤立対策に関する重要な事項について審議すること。
2 本部は、前項第一号に掲げる事務を遂行するため、必要に応じ、地方公共団体、協議会又は関係機関等の意見を聴くものとする。 (組織)第二十二条 本部は、孤独・孤立対策推進本部長、孤独・孤立対策推進副本部長及び孤独・孤立対策推進本部員をもって組織する。
(孤独・孤立対策推進本部長)第二十三条 本部の長は、孤独・孤立対策推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。 (孤独・孤立対策推進副本部長)第二十四条 本部に、孤独・孤立対策推進副本部長(次項及び次条第二項において「副本部長」という。)を置き、内閣官房長官並びに内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第九条第一項に規定する特命担当大臣であって同項の規定により命を受けて同法第四条第一項第三十六号に掲げる事項に関する事務及びこれに関連する同条第三項に規定する事務を掌理するものをもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。 (孤独・孤立対策推進本部員)第二十五条 本部に、孤独・孤立対策推進本部員(次項において「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、次に掲げる者をもって充てる。一 総務大臣
二 法務大臣
三 文部科学大臣
四 厚生労働大臣
五 農林水産大臣
六 国土交通大臣
七 環境大臣
八 前各号に掲げるもののほか、本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
(資料提出の要求等)第二十六条 本部は、その所掌事務を遂行するために必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
2 本部は、その所掌事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。 (政令への委任)第二十七条 第二十条から前条までに定めるもののほか、本部の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。
第四章 罰則
第二十八条 第十八条の規定に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、令和六年四月一日から施行する。
(経過措置)
第二条 刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)の施行の日(以下この条において「刑法施行日」という。)の前日までの間における第二十八条の規定の適用については、同条中「拘禁刑」とあるのは、「懲役」とする。 刑法施行日以後における刑法施行日前にした行為に対する同条の規定の適用についても、同様とする。
(検討)
第三条 政府は、この法律の施行後五年を経過した場合において、この法律の施行の状況等を踏まえ、孤独・孤立対策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則(令和五年一一月二九日法律第七九号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
第六十七条 この法律(附則第一条第三号及び第四号に掲げる規定にあっては、当該規定。以下この条及び次条において同じ。)の施行前にした行為及びこの附則の規定によりなお従前の例によることとされる場合におけるこの法律の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附則(令和六年五月一七日法律第二七号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 ただし、第十八条第一項及び第二項(基準の変更に係る部分を除く。)の規定並びに附則第五条、第六条及び第八条から第十条までの規定は、公布の日から施行する。