第一条 この法律は、防災重点農業用ため池の決壊による水害その他の災害から国民の生命及び財産を保護するため、防災工事等基本指針の策定、防災重点農業用ため池の指定、防災工事等推進計画の策定及びこれに基づく事業等に係る国の財政上の措置等について定めることにより、防災重点農業用ため池に係る防災工事等の集中的かつ計画的な推進を図ることを目的とする。
(定義)第二条 この法律において「農業用ため池」とは、農業用ため池の管理及び保全に関する法律(平成三十一年法律第十七号)第二条第一項に規定する農業用ため池をいう。
2 この法律において「防災重点農業用ため池」とは、第四条第一項の規定により指定された農業用ため池をいう。 3 この法律において「防災工事」とは、農業用ため池の決壊を防止するために施行する工事(農業用ため池を廃止するために施行する工事を含む。)をいう。 4 この法律において「劣化状況評価」とは、防災工事の必要性についての判断に資するために行う劣化による農業用ため池の決壊の危険性の評価をいう。 5 この法律において「地震・豪雨耐性評価」とは、防災工事の必要性についての判断に資するために行う地震又は豪雨による農業用ため池の決壊の危険性の評価をいう。 6 この法律において「防災工事等」とは、防災工事並びに劣化状況評価及び地震・豪雨耐性評価をいう。 (基本指針)第三条 農林水産大臣は、防災重点農業用ため池に係る防災工事等の集中的かつ計画的な推進を図るため、防災工事等基本指針(以下「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針においては、防災重点農業用ため池に係る防災工事等に関し、次に掲げる事項を定めるものとする。一 防災工事等の推進に関する基本的な事項
二 防災重点農業用ため池の指定について指針となるべき事項
三 第五条第一項に規定する防災工事等推進計画の策定について指針となるべき次に掲げる事項 イ 劣化状況評価の実施に関する基本的な事項
ロ 地震・豪雨耐性評価を優先的に実施すべき防災重点農業用ため池の基準その他地震・豪雨耐性評価の実施に関する基本的な事項
ハ 防災工事の実施に関する基本的な事項
ニ 防災工事等の実施に当たっての都道府県及び市町村の役割分担及び連携に関する基本的な事項
四 前三号に掲げるもののほか、防災工事等の推進に関し必要な事項
3 農林水産大臣は、基本指針を定めようとするときは、あらかじめ、関係行政機関の長に協議しなければならない。 4 農林水産大臣は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 5 前二項の規定は、基本指針の変更について準用する。 (防災重点農業用ため池の指定等)第四条 都道府県知事は、基本指針に基づき、農業用ため池であってその決壊による水害その他の災害によりその周辺の区域に被害を及ぼすおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものを、防災重点農業用ため池として指定することができる。
2 都道府県知事は、前項の規定による指定をしようとするときは、あらかじめ、関係市町村長の意見を聴くものとする。 3 前項の規定は、第一項の規定による指定の解除について準用する。 (推進計画)第五条 都道府県知事は、防災重点農業用ため池を指定したときは、基本指針に基づき、防災重点農業用ため池に係る防災工事等の集中的かつ計画的な推進を図るため、防災工事等推進計画(以下「推進計画」という。)を定めるものとする。
2 推進計画においては、防災重点農業用ため池に係る防災工事等に関し、次に掲げる事項を定めるものとする。一 防災工事等の推進に関する基本的な方針
二 劣化状況評価の実施に関する事項
三 地震・豪雨耐性評価の実施に関する事項
四 防災工事の実施に関する事項
五 防災工事等の実施に当たっての市町村との役割分担及び連携に関する事項
六 前各号に掲げるもののほか、防災工事等の推進に関し必要な事項
3 都道府県知事は、推進計画を定めようとするときは、あらかじめ、関係市町村長に協議しなければならない。 4 都道府県知事は、推進計画を定めたときは、これを公表するよう努めるとともに、農林水産大臣に提出しなければならない。 5 前二項の規定は、推進計画の変更について準用する。 (都道府県の援助)第六条 都道府県は、推進計画に基づく防災工事等を実施する者に対し、当該防災工事等の確実かつ効果的な実施に関し必要な技術的な指導、助言その他の援助に努めるものとする。
2 都道府県は、前項の援助に関し必要があると認めるときは、土地改良事業団体連合会に対し、必要な協力を求めることができる。 (財政上の措置)第七条 国は、推進計画に基づく事業及び前条第一項の援助の実施に要する費用について、必要な財政上の措置を講ずるものとする。
(地方債についての配慮)第八条 地方公共団体が推進計画に基づいて実施する事業に要する経費に充てるために起こす地方債については、法令の範囲内において、資金事情及び当該地方公共団体の財政状況が許す限り、特別の配慮をするものとする。