第一条 この法律は、社会の対等な構成員である男女が公選による公職又は内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣、大臣政務官若しくは大臣補佐官若しくは副知事若しくは副市町村長の職(以下「公選による公職等」という。)にある者として国又は地方公共団体における政策の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されること(以下「政治分野における男女共同参画」という。)が、その立案及び決定において多様な国民の意見が的確に反映されるために一層重要となることに鑑み、男女共同参画社会基本法(平成十一年法律第七十八号)の基本理念にのっとり、政治分野における男女共同参画の推進について、その基本原則を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、政治分野における男女共同参画の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、政治分野における男女共同参画を効果的かつ積極的に推進し、もって男女が共同して参画する民主政治の発展に寄与することを目的とする。
(基本原則)第二条 政治分野における男女共同参画の推進は、衆議院議員、参議院議員及び地方公共団体の議会の議員の選挙において、政党その他の政治団体の候補者の選定の自由、候補者の立候補の自由その他の政治活動の自由を確保しつつ、男女の候補者の数ができる限り均等となることを目指して行われるものとする。
2 政治分野における男女共同参画の推進は、自らの意思によって公選による公職等としての活動に参画し、又は参画しようとする者に対するこれらの者の間における交流の機会の積極的な提供及びその活用を通じ、かつ、性別による固定的な役割分担等を反映した社会における制度又は慣行が政治分野における男女共同参画の推進に対して及ぼす影響に配慮して、男女が、その性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮できるようにすることを旨として、行われなければならない。 3 政治分野における男女共同参画の推進は、男女が、その性別にかかわりなく、相互の協力と社会の支援の下に、公選による公職等としての活動と家庭生活との円滑かつ継続的な両立が可能となることを旨として、行われなければならない。 4 政治分野における男女共同参画の推進は、政党その他の政治団体が自主的に取り組むほか、衆議院、参議院及び地方公共団体の議会並びに内閣府、総務省その他の関係行政機関等が適切な役割分担の下でそれぞれ積極的に取り組むことにより、行われるものとする。 (国及び地方公共団体の責務)第三条 国及び地方公共団体は、前条に定める政治分野における男女共同参画の推進についての基本原則(次条において単に「基本原則」という。)にのっとり、政党その他の政治団体の政治活動の自由及び選挙の公正を確保しつつ、政治分野における男女共同参画の推進に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。
(政党その他の政治団体の努力)第四条 政党その他の政治団体は、基本原則にのっとり、政治分野における男女共同参画の推進に関し、当該政党その他の政治団体に所属する男女のそれぞれの公職の候補者の数に係る目標の設定、当該政党その他の政治団体に所属する公職の候補者の選定方法の改善、公職の候補者となるにふさわしい能力を有する人材の育成、当該政党その他の政治団体に所属する公選による公職等にある者及び公職の候補者についての性的な言動、妊娠又は出産に関する言動等に起因する問題の発生の防止及び適切な解決その他の事項について、自主的に取り組むよう努めるものとする。
(法制上の措置等)第五条 国は、政治分野における男女共同参画の推進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
(実態の調査及び情報の収集等)第六条 国は、政治分野における男女共同参画の推進に関する取組に資するよう、その推進に当たって障壁となるような社会における制度、慣行、観念その他一切のもの(次項において「社会的障壁」という。)及び国内外における当該取組の状況について、実態の調査並びに情報の収集、整理、分析及び提供(同項及び第十一条において「実態の調査及び情報の収集等」という。)を行うものとする。
2 地方公共団体は、政治分野における男女共同参画の推進に関する取組に資するよう、当該地方公共団体における社会的障壁及び当該取組の状況について、実態の調査及び情報の収集等を行うよう努めるものとする。 (啓発活動)第七条 国及び地方公共団体は、政治分野における男女共同参画の推進について、国民の関心と理解を深めるとともに、必要な啓発活動を行うものとする。
(環境整備)第八条 国及び地方公共団体は、議会における欠席事由の拡大をはじめとする公選による公職等としての活動と妊娠、出産、育児、介護等の家庭生活との円滑かつ継続的な両立を支援するための体制の整備その他の政治分野における男女共同参画の推進に関する取組を積極的に進めることができる環境の整備を行うものとする。
(性的な言動等に起因する問題への対応)第九条 国及び地方公共団体は、政治分野における男女共同参画の推進に資するよう、公選による公職等にある者及び公職の候補者について、性的な言動、妊娠又は出産に関する言動等に起因する問題の発生の防止を図るとともに、当該問題の適切な解決を図るため、当該問題の発生の防止に資する研修の実施、当該問題に係る相談体制の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。
(人材の育成等)第十条 国及び地方公共団体は、政治分野における男女共同参画が推進されるよう、議会における審議を体験する機会の提供、公選による公職等としての活動に対する関心を深めこれに必要な知見を提供する講演会等の開催の推進その他の人材の育成及び活用に資する施策を講ずるものとする。
(その他の施策)第十一条 国及び地方公共団体は、第七条から前条までに定めるもののほか、第六条の規定による実態の調査及び情報の収集等の結果を踏まえ、必要があると認めるときは、政治分野における男女共同参画の推進のために必要な施策を講ずるものとする。