第一条 この法律は、我が国における急速な少子化の進行及び地域の若者の著しい減少により地域の活力が低下していることに鑑み、地域における大学(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する大学をいう。以下同じ。)の振興及び若者の雇用機会の創出のための措置を講ずることにより、地域における若者の修学及び就業を促進し、もって地域の活力の向上及び持続的発展を図ることを目的とする。
(基本理念)第二条 地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進は、国、地方公共団体及び大学の相互の密接な連携並びに事業者の理解と協力の下に、若者にとって魅力ある修学の環境の整備及び就業の機会の創出を図ることを旨として、行われなければならない。
2 地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進は、まち・ひと・しごと創生法(平成二十六年法律第百三十六号)の基本理念に基づき行われなければならない。 (国及び地方公共団体の責務等)第三条 国は、前条の基本理念にのっとり、地方公共団体の自主性及び自立性を尊重しつつ、地域における若者の修学及び就業の促進に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。
2 地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、地域における地理的及び自然的特性、文化的所産並びに経済的環境の変化を踏まえつつ、国の施策と相まって、効果的に地域における若者の修学及び就業を促進するよう所要の施策を策定し、及び実施する責務を有する。 3 国及び地方公共団体は、地域における若者の修学及び就業の促進に関する施策で大学に係るものを策定し、及びこれを実施するに当たっては、大学の自主性及び自律性その他大学における教育研究の特性に配慮しなければならない。 (基本指針)第四条 内閣総理大臣は、地域における若者の修学及び就業を促進するため、地域における大学の振興、これを通じた地域における中核的な産業の振興及び当該産業に関する専門的な知識を有する人材の育成並びに地域における事業者による若者の雇用機会の創出(以下「地域における大学振興・若者雇用創出」という。)に関する基本指針(以下この条及び次条において「基本指針」という。)を定めなければならない。
2 基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。一 地域における大学振興・若者雇用創出の意義及び目標に関する事項
二 地域における大学振興・若者雇用創出のために政府が実施すべき施策に関する基本的な方針
三 地域における大学振興・若者雇用創出のために地方公共団体が重点的に取り組むことが必要な課題に関する基本的な事項
四 地域における大学振興・若者雇用創出に係る地方公共団体、大学、事業者その他の関係者間における連携及び協力に関する基本的な事項
五 次条第一項に規定する計画の同条第六項の認定に関する基本的な事項
六 前各号に掲げるもののほか、地域における大学振興・若者雇用創出の推進のために必要な事項
3 内閣総理大臣は、基本指針を定めようとするときは、あらかじめ、文部科学大臣、厚生労働大臣及び経済産業大臣に協議するものとする。 4 内閣総理大臣は、基本指針を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。 5 内閣総理大臣は、情勢の推移により必要が生じたときは、基本指針を変更するものとする。 6 第三項及び第四項の規定は、前項の規定による基本指針の変更について準用する。 (計画の認定)第五条 地方公共団体は、単独で又は共同して、基本指針に基づき、内閣府令で定めるところにより、まち・ひと・しごと創生法第九条第一項に規定する都道府県まち・ひと・しごと創生総合戦略に同条第二項第三号に掲げる事項として定められた事業又は同法第十条第一項に規定する市町村まち・ひと・しごと創生総合戦略に同条第二項第三号に掲げる事項として定められた事業(第四項において「まち・ひと・しごと創生特定事業」という。)であって地域における大学振興・若者雇用創出のために行われる事業(以下この条及び第十条第一項において「地域における大学振興・若者雇用創出事業」という。)に関する計画(以下「計画」という。)を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができる。
2 計画には、次に掲げる事項を記載するものとする。一 計画の区域
二 計画の目標
三 地域における大学振興・若者雇用創出事業の内容に関する次に掲げる事項 イ 若者にとって魅力があり、地域の中核的な産業の振興に資する教育研究の活性化を図るために、大学が行う取組に関する事項
ロ 地域における中核的な産業の振興及び当該産業に関する専門的な知識を有する人材の育成のために、大学及び事業者が協力して行う取組に関する事項
ハ 地域における事業活動の活性化その他の事業者が行う若者の雇用機会の創出に資する取組に関する事項
四 地域における大学振興・若者雇用創出事業に関する地方公共団体、大学、事業者その他の関係者相互間の連携及び協力に関する事項
五 計画期間
六 その他内閣府令で定める事項
3 前項第一号の区域は、大学の学部(短期大学(学校教育法第百八条第二項の大学をいう。)の学科を含み、夜間において授業を行うもの及び通信により教育を行うものを除く。第十三条及び附則第三条において同じ。)の学生が既に相当程度集中している地域であって他の地域における若者の著しい減少を緩和するために当該学生が更に集中することを防止する必要がある地域として政令で定める地域(第十三条及び附則第三条において「特定地域」という。)外に定めなければならない。 4 計画には、第二項各号に掲げる事項のほか、まち・ひと・しごと創生特定事業であって当該地域における大学振興・若者雇用創出事業に関連して高等専門学校(学校教育法第一条に規定する高等専門学校をいう。第十条第二項第一号及び第十三条第一号において同じ。)又は専門学校(専修学校(同法第百二十四条の専修学校をいう。同号において同じ。)であって、専門課程(同法第百二十五条第一項に規定する専門課程をいう。同号において同じ。)を置くものをいう。第十条第二項第一号において同じ。)が地域における中核的な産業の振興及び当該産業に関する専門的な知識を有する人材の育成のために行う事業に関する事項を記載することができる。 5 地方公共団体は、地域における大学振興・若者雇用創出推進会議が作成する案に基づいて計画を定めるものとする。 6 内閣総理大臣は、第一項の規定による認定の申請があった場合において、計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をするものとする。一 基本指針に適合するものであること。
二 当該計画の実施が当該計画の区域における若者の修学及び就業の促進に相当程度寄与するものであると認められること。
三 円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。
7 内閣総理大臣は、前項の認定をしようとするときは、あらかじめ、文部科学大臣、厚生労働大臣及び経済産業大臣に協議しなければならない。 8 内閣総理大臣は、第六項の認定をしたときは、遅滞なく、その旨を当該地方公共団体に通知しなければならない。 9 地方公共団体は、前項の通知を受けたときは、遅滞なく、当該通知に係る計画を公表するよう努めなければならない。 (認定を受けた計画の変更)第六条 地方公共団体は、前条第六項の認定を受けた計画の変更(内閣府令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときは、内閣総理大臣の認定を受けなければならない。
2 前条第五項から第九項までの規定は、前項の変更の認定について準用する。 (報告の徴収)第七条 内閣総理大臣は、第五条第六項の認定を受けた計画(前条第一項の変更の認定があったときは、その変更後のもの。以下「認定計画」という。)の適正な実施を確保するために必要と認めるときは、第五条第六項の認定を受けた地方公共団体(以下「認定地方公共団体」という。)に対し、認定計画の実施の状況について報告を求めることができる。
2 文部科学大臣は、大学の自主性及び自律性その他大学における教育研究の特性に配慮する観点から必要と認めるときは、認定地方公共団体に対し、認定計画の実施の状況について報告を求めることができる。 (措置の要求)第八条 内閣総理大臣は、認定計画が適正に実施されていないと認めるときは、認定地方公共団体に対し、その是正のために必要な措置を講ずることを求めることができる。
2 文部科学大臣は、大学の自主性及び自律性その他大学における教育研究の特性への配慮がされていないと認めるときは、認定地方公共団体に対し、その是正のために必要な措置を講ずることを求めることができる。 (認定の取消し)第九条 内閣総理大臣は、認定計画が第五条第六項各号のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
2 第五条第八項及び第九項の規定は、前項の規定による認定の取消しについて準用する。 (地域における大学振興・若者雇用創出推進会議)第十条 地方公共団体は、計画の案を作成し、及び認定計画の実施に関し必要な事項その他地域における大学振興・若者雇用創出の推進に関し必要な事項について協議するため、地域における大学振興・若者雇用創出事業を実施し、又は実施すると見込まれる大学及び事業者若しくは事業者が組織する団体と共同して、協議により規約を定め、地域における大学振興・若者雇用創出推進会議(以下この条において「会議」という。)を組織することができる。
2 前項の規定により会議を組織する地方公共団体は、必要があると認めるときは、同項に規定する者のほか、会議に、次に掲げる者を構成員として加えることができる。一 第五条第四項に規定する事業を実施し、又は実施すると見込まれる高等専門学校又は専門学校
二 その他当該地方公共団体が必要と認める者
3 会議において協議が調った事項については、会議の構成員は、その協議の結果を尊重しなければならない。 4 前三項に定めるもののほか、会議の運営に関し必要な事項は、規約で定めるものとする。 (交付金の交付)第十一条 国は、認定地方公共団体に対し、当該認定地方公共団体の認定計画に基づく事業の実施に要する経費に充てるため、内閣府令で定めるところにより、予算の範囲内で、交付金を交付することができる。
(関連する施策との連携)第十二条 国は、地域における大学振興・若者雇用創出に関する施策の推進に当たっては、関係行政機関相互間の連携の強化を図るとともに、地域再生の総合的かつ効果的な推進に関する施策、大学における地域の特性を生かした教育研究の推進及び当該教育研究の成果を活用した地域の活力の向上に資する施策その他の関連する施策との連携を図るよう努めるものとする。
(特定地域内学部収容定員の抑制等)第十三条 大学の設置者又は大学を設置しようとする者は、特定地域外の地域における若者の修学及び就業を促進するため、特定地域内における大学の学部の設置、特定地域外から特定地域内への大学の学部の移転その他の方法により、特定地域内学部収容定員(特定地域内に校舎が所在する大学の学部の学生の収容定員のうち、当該校舎で授業を受ける学生に係るものとして政令で定めるところにより算定した収容定員をいう。以下この条及び附則第三条において同じ。)を増加させてはならない。
一 特定地域内に設置している学部等(大学の学部、高等専門学校の学科又は専修学校の専門課程をいう。以下この号において同じ。)の廃止、特定地域内から特定地域外への学部等の移転その他の方法により特定地域内学部等収容定員(特定地域内に校舎が所在する学部等の学生等(大学の学部若しくは高等専門学校の学科の学生又は専修学校の専門課程の生徒をいう。以下この号において同じ。)の収容定員のうち、当該校舎で授業を受ける学生等に係るものとして政令で定めるところにより算定した収容定員をいう。以下この号及び次号において同じ。)を減少させることと併せて、政令で定めるところにより、当該学部等を置く大学、高等専門学校又は専修学校の設置者(同号において「大学等の設置者」という。)が当該減少させる特定地域内学部等収容定員の数を考慮して政令で定めるところにより算定した数の範囲内で特定地域内学部収容定員を増加させる場合
二 前号に規定する方法により特定地域内学部等収容定員を減少させる大学等の設置者との協議に基づき、当該特定地域内学部等収容定員の減少と併せて、政令で定めるところにより、当該大学等の設置者とは異なる大学の設置者又は大学を設置しようとする者が当該減少させる特定地域内学部等収容定員の数を考慮して政令で定めるところにより算定した数の範囲内で特定地域内学部収容定員を増加させる場合
三 大学における教育研究の国際競争力の向上、実践的な教育研究の充実その他の教育研究の質的向上を図るために外国人留学生又は就業者である学生に限定して特定地域内学部収容定員を増加させる場合その他の特定地域内学部収容定員を増加させることが特定地域以外の地域における若者の著しい減少を助長するおそれが少ないものとして政令で定める場合
(勧告及び命令)第十四条 文部科学大臣は、大学(学校教育法第二条第二項に規定する公立学校又は私立学校であるものに限る。以下この項において同じ。)の設置者又は大学を設置しようとする者(以下この条において「公私立大学設置者等」という。)が前条の規定に違反し、又は違反するおそれがあると認めるときは、当該公私立大学設置者等に対し、その是正のために必要な措置を講ずることを勧告することができる。
2 文部科学大臣は、前項の規定による勧告を受けた公私立大学設置者等が、正当な理由がなくて当該勧告に係る措置を講じなかったときは、当該公私立大学設置者等に対し、当該措置を講ずることを命ずることができる。 3 文部科学大臣は、第一項の規定による勧告又は前項の規定による命令を行うために必要があると認めるときは、当該公私立大学設置者等に対し、報告又は資料の提出を求めることができる。 (地域における若者の雇用機会の創出等)第十五条 国は、地方公共団体と連携して、地域における若者の就業を促進するため、地域の特性を生かした創業の促進及び地域における事業活動の活性化による若者の雇用機会の創出、地域における適職の選択を可能とする環境の整備その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
(財政上の措置等)第十六条 国は、地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する施策を実施するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
附則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成三十年四月一日又はこの法律の公布の日のいずれか遅い日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(失効)
第二条 第十三条及び第十四条の規定は、令和十年三月三十一日限り、その効力を失う。
(経過措置)
第三条 第十三条の規定は、次に掲げる場合において、特定地域内学部収容定員を増加させるときは、適用しない。
(政令への委任)
第四条 前条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(検討)
第五条 政府は、令和六年三月三十一日までの間に、専門職大学等の設置の状況その他この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 政府は、令和十年三月三十一日までの間に、地域における若者の修学及び就業の状況その他この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則(令和三年五月一九日法律第三六号)
(施行期日)
第一条 この法律は、令和三年九月一日から施行する。 ただし、附則第六十条の規定は、公布の日から施行する。
(処分等に関する経過措置)
第五十七条 この法律の施行前にこの法律による改正前のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条及び次条において「旧法令」という。)の規定により従前の国の機関がした認定等の処分その他の行為は、法令に別段の定めがあるもののほか、この法律の施行後は、この法律による改正後のそれぞれの法律(これに基づく命令を含む。以下この条及び次条において「新法令」という。)の相当規定により相当の国の機関がした認定等の処分その他の行為とみなす。 この法律の施行の際現に旧法令の規定により従前の国の機関に対してされている申請、届出その他の行為は、法令に別段の定めがあるもののほか、この法律の施行後は、新法令の相当規定により相当の国の機関に対してされた申請、届出その他の行為とみなす。 この法律の施行前に旧法令の規定により従前の国の機関に対して申請、届出その他の手続をしなければならない事項で、この法律の施行の日前に従前の国の機関に対してその手続がされていないものについては、法令に別段の定めがあるもののほか、この法律の施行後は、これを、新法令の相当規定により相当の国の機関に対してその手続がされていないものとみなして、新法令の規定を適用する。
(命令の効力に関する経過措置)
第五十八条 旧法令の規定により発せられた内閣府設置法第七条第三項の内閣府令又は国家行政組織法第十二条第一項の省令は、法令に別段の定めがあるもののほか、この法律の施行後は、新法令の相当規定に基づいて発せられた相当の第七条第三項のデジタル庁令又は国家行政組織法第十二条第一項の省令としての効力を有するものとする。
(政令への委任)
第六十条 附則第十五条、第十六条、第五十一条及び前三条に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)は、政令で定める。