第一条 この法律において「公衆等脅迫目的の犯罪行為」とは、公衆又は国若しくは地方公共団体若しくは外国政府等(外国の政府若しくは地方公共団体又は条約その他の国際約束により設立された国際機関をいう。)を脅迫する目的をもって行われる犯罪行為であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 人を殺害し、若しくは凶器の使用その他人の身体に重大な危害を及ぼす方法によりその身体を傷害し、又は人を略取し、若しくは誘拐し、若しくは人質にする行為
二 航空機又は船舶に係る次に掲げる行為 イ 航行中の航空機を墜落させ、転覆させ、若しくは覆没させ、又はその航行に危険を生じさせる行為
ロ 航行中の船舶を沈没させ、若しくは転覆させ、又はその航行に危険を生じさせる行為
ハ 暴行若しくは脅迫を用い、又はその他の方法により人を抵抗不能の状態に陥れて、航行中の航空機若しくは船舶を強取し、又はほしいままにその運航を支配する行為
ニ 爆発物を爆発させ、放火し、又はその他の方法により、航空機若しくは船舶を破壊し、その他これに重大な損傷を与える行為
三 爆発物を爆発させ、放火し、又はその他次に掲げるものに重大な危害を及ぼす方法により、これを破壊し、その他これに重大な損傷を与える行為 イ 電車、自動車その他の人若しくは物の運送に用いる車両であって、公用若しくは公衆の利用に供するもの又はその運行の用に供する施設(ロに該当するものを除く。)
ロ 道路、公園、駅その他の公衆の利用に供する施設
ハ 電気若しくはガスを供給するための施設、水道施設若しくは下水道施設又は電気通信を行うための施設であって、公用又は公衆の利用に供するもの
ニ 石油、可燃性天然ガス、石炭又は核燃料である物質若しくはその原料となる物質を生産し、精製その他の燃料とするための処理をし、輸送し、又は貯蔵するための施設
ホ 建造物(イからニまでに該当するものを除く。)
一 国際的に保護される者(国際的に保護される者(外交官を含む。)に対する犯罪の防止及び処罰に関する条約第一条1に規定する国際的に保護される者をいう。第五号において同じ。)を殺害し、若しくは凶器の使用その他その身体に重大な危害を及ぼす方法によりその身体を傷害し、又はその者を略取し、若しくは誘拐し、若しくは人質にする行為
二 人を殺害し、又は凶器の使用その他人の身体に重大な危害を及ぼす方法によりその身体を傷害する行為であって、次のいずれかに該当するもの(前号に該当するものを除く。) イ 航行中の民間航空機(民間航空の用に供する航空機をいう。以下この項において同じ。)内の人に対して行われるもの(当該民間航空機の安全な航行を損なうおそれがあるものに限る。)
ロ 航行中の民間船舶(公用に供する船舶以外の船舶をいう。以下この項において同じ。)内の人に対して行われるもの(当該民間船舶の安全な航行を損なうおそれがあるものに限る。)
ハ 国際空港(航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第二条第十九項に規定する国際航空運送事業の用に供される飛行場又はこれに相当する外国の飛行場をいう。以下このハ及び第八号ロにおいて同じ。)において行われるもの(当該国際空港における安全を損なうおそれがあるものに限る。)
ニ 固定プラットフォーム(大陸棚に所在する固定プラットフォームの安全に対する不法な行為の防止に関する議定書第一条3に規定する固定プラットフォームをいう。以下このニ及び第十号ハにおいて同じ。)において行われるもの(当該固定プラットフォームの安全を損なうおそれがあるものに限る。)
三 公共施設等(前項第三号イからニまでに掲げるもの、同号ホに掲げるもの(公用又は公衆の利用に供するものに限る。)又は人若しくは物の運送に用いる航空機若しくは船舶であって公用若しくは公衆の利用に供するものをいう。)において、次に掲げる方法のいずれかにより、人を殺害し、又は人の身体を傷害する行為(前二号に該当するものを除く。) イ 爆発物を爆発させる方法
ロ 火炎びんの使用等の処罰に関する法律(昭和四十七年法律第十七号)第一条に規定する火炎びんを使用する方法
ハ 細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約等の実施に関する法律(昭和五十七年法律第六十一号)第二条第三項に規定する生物兵器又は同条第四項に規定する毒素兵器を使用して、当該生物兵器又は当該毒素兵器に充塡された同条第一項に規定する生物剤又は同条第二項に規定する毒素を発散させる方法
ニ 化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律(平成七年法律第六十五号)第二条第二項に規定する化学兵器を使用して、当該化学兵器に充塡され、又は当該化学兵器の内部で生成された同条第一項に規定する毒性物質又はこれと同等の毒性を有する物質を発散させる方法
ホ サリン等による人身被害の防止に関する法律(平成七年法律第七十八号)第二条に規定するサリン等を発散させる方法
四 放射線を発散させる等の方法(放射性物質(放射線を発散させて人の生命等に危険を生じさせる行為等の処罰に関する法律(平成十九年法律第三十八号)第二条第三項に規定する放射性物質をいう。)をみだりに取り扱うこと若しくは原子核分裂等装置(同条第四項に規定する原子核分裂等装置をいう。)をみだりに操作することにより、又はその他不当な方法で、核燃料物質(同条第一項に規定する核燃料物質をいう。)の原子核分裂の連鎖反応を引き起こし、又は放射線(同条第二項に規定する放射線をいう。)を発散させる方法をいう。第九号において同じ。)により、人を殺害し、又は人の身体を傷害する行為(第一号及び第二号に該当するものを除く。)
五 次のイからホまでに掲げる行為であって、国際的に保護される者の用に供する当該イからホまでに定めるものに関して行われ、当該国際的に保護される者の身体又は自由を害するおそれがあるもの イ
ロ
ハ
ニ
ホ
六 前項第二号イ又はハに掲げる行為であって、民間航空機に関して行われるもの(前号(同号イ及びハに係る部分に限る。)に該当するものを除く。)
七 前項第二号ロ又はハに掲げる行為であって、民間船舶に関して行われるもの(第五号(同号ロ及びハに係る部分に限る。)に該当するものを除く。)
八 前項第二号ニに掲げる行為であって、次のいずれかに該当するもの(第五号(同号ニに係る部分に限る。)に該当するものを除く。) イ 民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約第二条(b)の規定により業務中の民間航空機とみなされる民間航空機(ロにおいて「業務中の民間航空機」という。)に関して行われるもの
ロ 国際空港にある民間航空機(業務中の民間航空機に該当するものを除く。)に関して行われるもの(当該国際空港における安全を損なうおそれがあるものに限る。)
ハ 航行中の民間船舶に関して行われるもの
九 前項第二号ニ又は同項第三号に掲げる行為であって、放射線を発散させる等の方法により行われるもの(第五号(同号ニ及びホに係る部分に限る。)及び前号に該当するものを除く。)
十 爆発物を爆発させ、放火し、又はその他次のイからハまでに掲げるものに重大な危害を及ぼす方法により、これを破壊し、その他これに重大な損傷を与える行為のうち、当該イからハまでに定めるおそれがあるもの イ
ロ
ハ
第二条 公衆等脅迫目的の犯罪行為又は特定犯罪行為(以下「公衆等脅迫目的の犯罪行為等」という。)を実行しようとする者が、その実行のために利用する目的で、資金若しくはその実行に資するその他利益(資金以外の土地、建物、物品、役務その他の利益をいう。以下同じ。)の提供を勧誘し、若しくは要請し、又はその他の方法により、これらの資金又はその他利益を提供させたときは、十二年以下の懲役若しくは千二百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。 (公衆等脅迫目的の犯罪行為等を実行しようとする者以外の者による資金等の提供等)第三条 公衆等脅迫目的の犯罪行為等の実行を容易にする目的で、これを実行しようとする者に対し、資金又はその実行に資するその他利益を提供した者は、十二年以下の懲役又は千二百万円以下の罰金に処する。
2 公衆等脅迫目的の犯罪行為等の実行を容易にする目的で、当該公衆等脅迫目的の犯罪行為等に係る前項の罪を実行しようとする者に対し、資金又は当該公衆等脅迫目的の犯罪行為等の実行に資するその他利益を提供した者は、十年以下の懲役又は千万円以下の罰金に処する。 3 前項後段に規定するもののほか、第一項の罪を実行しようとする者が、その実行のために利用する目的で、資金若しくはその実行に資するその他利益の提供を勧誘し、若しくは要請し、又はその他の方法により、これらの資金又はその他利益を提供させたときは、七年以下の懲役若しくは七百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 4 前三項の罪の未遂は、罰する。第四条 前条第一項の罪の実行を容易にする目的で、これを実行しようとする者に対し、資金又はその実行に資するその他利益を提供した者は、七年以下の懲役又は七百万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。第五条 前二条に規定するもののほか、公衆等脅迫目的の犯罪行為等の実行のために利用されるものとして、資金又はその他利益を提供した者は、五年以下の懲役又は五百万円以下の罰金に処する。
2 第三条に規定するもののほか、公衆等脅迫目的の犯罪行為等の実行のために利用されるものとして、資金若しくはその他利益の提供を勧誘し、若しくは要請し、又はその他の方法により、これらの資金又はその他利益を提供させた者は、五年以下の拘禁刑若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 3 前二項の罪の未遂は、罰する。 (自首)第六条 第二条から前条までの罪を犯した者が当該罪に係る公衆等脅迫目的の犯罪行為等の実行の着手前に自首したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
(国外犯)第七条 第二条から第五条までの罪は、刑法(明治四十年法律第四十五号)第三条及び第四条の二の例に従う。
(両罰規定)第八条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第二条から第五条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
附則
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 ただし、第五条の規定(刑法第四条の二に係る部分に限る。)は、テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約が日本国について効力を生ずる日から施行する。 第七条の規定(刑法第四条の二に係る部分に限る。)は、前項ただし書に規定する規定の施行の日以後に日本国について効力を生ずる条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされる罪に限り適用する。附則(平成二六年一一月二一日法律第一一三号)
この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。附則(令和四年六月一七日法律第六八号)
この法律は、刑法等一部改正法施行日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。一 第五百九条の規定 公布の日
附則(令和四年一二月九日法律第九七号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(公衆等脅迫目的の犯罪行為のための資金等の提供等の処罰に関する法律の一部改正に伴う経過措置)
第七条 刑法等の一部を改正する法律(令和四年法律第六十七号)の施行の日(以下この条において「刑法施行日」という。)の前日までの間における第五条の規定による改正後の公衆等脅迫目的の犯罪行為等のための資金等の提供等の処罰に関する法律第三条第二項後段及び第五条第二項の規定の適用については、これらの規定中「拘禁刑」とあるのは、「懲役」とする。 刑法施行日以後における刑法施行日前にした行為に対するこれらの規定の適用についても、同様とする。
(政令への委任)
第九条 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。