第一章 総則
(目的)第一条 国土調査法(昭和二十六年法律第百八十号)第二条第二項の規定による水調査の基準の設定のための調査(以下「水基本調査」という。)に関する作業規程の準則は、この省令の定めるところによる。
(調査単位区域)第二条 水基本調査は、水系(水系群を含む。)ごとに、調査単位区域を定めて行うものとする。
(水基本調査の内容)第三条 水基本調査においては、左の各号に掲げる作業を行い、その結果を地図及び簿冊に作成するものとする。
一 降水量調査にあつては、調査単位区域における降水量の観測を目的として、雨量計を有する観測所の配置を決定するのに必要な調査を行うこと。
二 水位及び流量調査にあつては、河川、湖沼及び貯水池(池を含む。以下同じ。)の水位及び流量の観測を目的として、水位標及び流速計(浮子を含む。以下同じ。)を有する観測所の配置を決定するのに必要な調査を行うこと。
三 取水量調査又は排水量調査にあつては、左に掲げる用排水路における水位及び流量の観測を目的として、水位標並びに流速計又は測水を有する観測所の配置を決定するのに必要な調査を行うこと。
イ おおむね毎秒一立方メートル以上の流量を有するもの
ロ 毎秒一立方メートル未満の流量を有する用排水路が多数存在する場合であつて特に調査を必要とするもの
ハ 都市の住民又は鉱工業の需要に供される用排水路(地下水を水源とするものを含む。)であつて特に調査を必要とするもの
ニ 水利紛争を生じ、又は生ずる虞があると認められる用排水路であつて特に調査を必要とするもの
四 用水量調査にあつては、取水量調査又は排水量調査を行う用排水路に係る地域のうちの特定の区域における用水量の観測を目的として、当該区域の減水深を測定する観測所の配置を決定するのに必要な調査を行うこと。
五 地下水調査にあつては、主要な積低地、積台地及び扇状地における地下水の水位及び浸水層の状況の観測を目的として、横断基準線及び観測井の配置又は泉調査、地質ボーリングその他の方法により地下水調査を行う地点を決定するのに必要な調査を行うこと。
六 流砂状況調査にあつては、河川における浮遊土砂量、河床の積土砂量若しくは洗掘土砂量及び堤の堆積土砂量の観測を目的として、浮遊土砂採取地点又は縦横断線の配置を決定するのに必要な調査を行うこと。
七 積雪調査にあつては、融雪水の利用及び保全上特に必要な地域における積雪の深さ及び積雪の相当水量の観測を目的として、積雪調査路、積雪標及び積雪計使用地点の配置を決定するのに必要な調査を行うこと。
八 水質調査にあつては、左に掲げるものにおける水質の観測を目的として、採水地点を決定するのに必要な調査を行うこと。
イ 水位及び流量調査を行う河川、湖沼及び貯水池
ロ 取水量調査又は排水量調査を行う用排水路
ハ 地下水調査を行う地下水の水脈
ニ 鉱工業の廃水又は都市の汚水の流入した水路であつて特に調査を必要とするもの
九 水温調査にあつては、前号に掲げるものにおける水温の観測を目的として、水温の測定地点を決定するのに必要な調査を行うこと。
十 水利慣行調査にあつては、左に掲げる事項の調査を目的として、法令又は慣行によつて取水又は排水(以下「水利用」という。)が行われている河川、湖沼、貯水池及び用排水路であつて水利慣行調査を行うべきものを決定するのに必要な調査を行うこと。
イ 水利用の根拠及び内容
ロ 水利用の施設並びにその管理方法及び管理組織
第四条 前条各号に掲げる調査は、当該調査単位区域における水の実態を総合的に握することができるように行わなければならない。
(作業規程作成の方針)第五条 水基本調査に関する作業規程は、この準則に基いて、作業に従事する者の実務の指針となるように、作業の内容をわかりやすく、且つ、詳細に規定するものとする。
第二章 観測所等の配置の基準
(観測網)第六条 観測所等(水基本調査において決定すべき観測の地点及び路線をいう。以下同じ。)の位置は、次条から第十六条までに定めるところにより、且つ、他の観測所等と相互に有機的な関連をもつ網(以下「観測網」という。)を構成するように配置しなければならない。
(降水量調査の場合の基準)第七条 降水量調査の観測所は、調査単位区域をおおむね同一の降水状況を示す地域に区分して各地域ごとに配置するものとする。 但し、おおむね同一の降水状況を示す地域に区分することが困難であるときは、調査単位区域をおおむね五十平方キロメートルから百平方キロメートルまでの広さの地域に区分して各地域ごとに配置するものとする。
2 降水量調査の観測所は、前項の規定により配置するものの外、左の各号に掲げる地域にも配置するものとする。一 風衝、風背その他特殊の降水状況を示す地域
二 調査単位区域における降水量調査のため特に必要がある場合には、その隣接区域内の地域
三 特別の理由により局地的に精密な観測を行う必要がある地域
3 前二項の規定により配置すべき観測所の位置は、左の各号に掲げる条件に適合する地点に選定するものとする。一 おおむね十メートル平方以上の広さの開な土地であつて、空気流線の変化が少いこと。
二 山地にあつては、傾斜面における降水量の分布を測定するのに適当であること。
三 水する虞がないこと。
四 観測に便利で附近に観測人又は管理人が得やすいこと。
4 前項の場合においては、つとめて既設の観測所を利用するものとする。 この場合において、極めて近接した位置に二個以上の観測所が存在する場合には、観測器械の良否、既存資料の整備状況等を考慮してそのいずれか一を選定するものとする。 5 第三項の規定により選定した位置に置かれる観測所は、左の各号に定めるところにより、四種に区分する。一 調査単位区域における降水の一般的な状況を察知することができる位置に置き、資料の解析のための機能を持ち、且つ、他の降水量調査の観測所における観測の基準となるのにふさわしい観測設備を有するもの(「第一種降水量観測所」という。)
二 観測網の要点を占める位置に置き、自記雨量計を有するもの(「第二種降水量観測所」という。)
三 第一号及び第二号の観測所の位置以外の位置に置き、指示雨量計を有するもの(「第三種降水量観測所」という。)
四 山間地に置き、常時観測人を必要としない雨量計を有するもの(「第四種降水量観測所」という。)
(水位及び流量調査の場合の基準)第八条 水位及び流量調査の観測所は、左の各号に掲げる場所に配置するものとする。
一 河川の上流部において中流部及び下流部の水位及び流量を推定することができる場所
二 主要な支派川の水位及び流量を察知することができる場所
三 河川において水位及び流量の変化が特に大きい場所
四 河川の部、遊水池その他特殊の水理状況を示す場所
五 主要な湖沼又は貯水池の全般的な水理状況を察知することができる場所
六 河川の維持管理のため特に調査を必要とする場所
七 水位及び流量調査以外の水基本調査についての観測所等と有機的な関連を保つため調査を必要とする場所
2 前項の規定により配置すべき観測所の位置(水位標の位置を除く。)は、左の各号に掲げる条件に適合し、且つ、各種の水位及び流量について良好な観測精度を保持することができる地点に選定するものとする。一 水流が整正であること。
二 水流が急激又は緩慢に過ぎないこと。
三 河身及び河床の変動が少いこと。
四 観測の際危険が少いこと。
五 観測に便利で附近に観測人又は管理人が得やすいこと。
3 第一項の規定により配置すべき水位標の位置は、前項の規定により選定した観測所の位置に近接し、且つ、前項第三号から第五号までに掲げる条件の外、左の各号に掲げる条件にも適合する地点に選定するものとする。一 当該地点における水位が前項の規定により選定した観測所の位置における流量と常に一定の相関関係を有すること。
二 出水時の流材その他の漂流物による設備の破損の虞が少く、且つ、舟等の留の虞がないこと。
4 前条第四項の規定は、前二項の場合に準用する。 5 第二項及び第三項の規定により選定した位置に置かれる観測所は、左の各号に定めるところにより、三種に区分する。一 観測網中重要な相関位置を占め、水から渇水までの各種の水位及び流量について良好な観測精度を保持しやすい位置を占める位置に置き、良好な流量曲線の作成に必要な観測を年間三十六回以上行うことが可能であり、且つ、原則として自記水位計の設備を有するもの(「第一種水位流量観測所」という。)
二 第一種水位流量観測所に準ずる機能を有するものであつて、特定の水位及び流量に対しては良好な観測精度を保持することが困難であるか、又は水流量の観測を行わないもの(「第二種水位流量観測所」という。)
三 水流量又は渇水流量その他の特殊の水位における流量の観測のみを行うもの(「第三種水位流量観測所」という。)
(取水量調査及び排水量調査の場合の基準)第九条 取水量調査又は排水量調査の観測所は、第三条第三号に掲げる用排水路の流入口又は流出口の附近に配置するものとする。
2 前項の規定により配置すべき観測所の位置の選定については、前条第二項から第四項までの規定を準用する。 (用水量調査の場合の基準)第十条 用水量調査の観測所の位置は、調査区域をおおむね同一の土性及び地下水深の状況を示す地区に区分して各地区ごとに、観測人の利便、の状況その他の事情を考慮して選定するものとする。
(地下水調査の場合の基準)第十一条 地下水調査の横断基準線は、調査地域をなるべく河川に直角方向に横断し、且つ、各路線がおおむね二キロメートルの間隔を保つように配置するものとする。
2 前項の規定により配置すべき横断基準線の位置は、左の各号に掲げる事項を考慮して当該地域の地質構造を推定することができる地点に選定するものとする。一 地形
二 集落の配置状況
三 土地利用の状況
四 観測井の地盤の標高を決定するための水準測量を実施するについての利便
五 河川、湖沼、貯水池及び用排水路における水位及び流量調査との関連
3 地下水調査の観測井は、前項の規定により選定した位置に置かれる横断基準線に沿い、おおむね五百メートルから千メートルまでの間隔で配置するものとする。 但し、河岸低地及びこれに接して数段にわたる台地が存在する地形を呈する地域にあつてはそれぞれの段地ごとにもれなく、且つ、河川、湖沼、貯水池、用排水路、水田及び集水その他地下水の水位又は流量に著しい変化を与える地物がある場合にあつてはその附近には特に密に、前項の規定により選定した位置に置かれる横断基準線に沿つて配置するものとする。 4 前項の規定により配置すべき観測井の位置は、左に掲げる事項を考慮して選定するものとする。 この場合においては、つとめて既存の井戸を利用するものとする。一 地下水面等高線図及び地下水等深線図を作成するについての利便
二 観測人の利便
5 泉調査及び地質ボーリングその他の方法により地下水調査を行う地点は、観測井による方法では調査ができない地域における適当な地点に配置するものとする。 (流砂状況調査の場合の基準)第十二条 流砂状況調査(浮遊土砂量調査を除く。)の観測所の位置は、河川の全般的な流砂状況を推定することができ、且つ、左の各号の一に掲げる条件に適合するような場所に選定するものとする。
一 流出土砂量が特に多い溪流における適当な堤の上流の土砂堆積部であること。
二 高堤の上流の土砂堆積部であること。
三 河床の変動が大きいため河川の維持が困難である場所であること。
2 浮遊土砂量調査の観測所は、河川の全般的な浮遊土砂の状況を推定することができる場所に配置するものとし、その位置は、第八条第二項の規定により選定した観測所の位置と同一の地点に選定するのを原則とする。 (積雪調査の場合の基準)第十三条 積雪調査の積雪調査路は、調査地域を地形、植生等によりおおむね同一の積雪状況を示す区域に区分して各区域を連ねるように配置するものとする。 但し、調査地域をおおむね同一の積雪状況を示す区域に区分することが困難であるときは、調査地域を小流域を単位とするおおむね二十平方キロメートルの広さの区域に区分し、各区域を平均標高、平均傾斜及び平均方位を基準として分類して各分類区分のうちから積雪調査に適当と認めて抽出した区域ごとにそれぞれ積雪調査路を配置するものとする。
2 前項の規定により配置すべき積雪調査路の位置は、積雪調査路を配置すべき区域における積雪の深さの代表値を示す場所を連ねる地点に選定するものとする。 但し、積雪の深さの代表値を示す場所を予測することが困難である場合には、当該区域における谷形地形又は峰形地形を均等に通過するように選定するものとする。 3 積雪調査の積雪標及び積雪計使用地点は、前項の規定により選定した積雪調査路の路線に沿つて配置するものとする。 この場合において、当該積雪調査路が前項但書の規定により選定されたものであるときは、当該積雪標及び積雪計使用地点の位置は、おおむね百メートルから二百メートルまでの標高差ごとになるべく開な緩傾斜地で吹その他の影響を受けない地点に選定するものとする。 (水質調査の場合の基準)第十四条 水質調査の採水地点の位置は、原則として水位及び流量調査の観測所、取水量調査又は排水量調査の観測所並びに地下水調査の観測井と同一の地点に選定するものとする。
2 鉱工業の廃水又は都市の汚水の混入した水路における水質調査の採水地点の位置は、前項の規定にかかわらず、当該廃水又は汚水の混入によつて特異な状況を示す場所で、なるべく流心部における採水が可能な地点に選定するものとする。 (水温調査の場合の基準)第十五条 水温調査の水温測定地点の位置の選定については、前条の規定を準用する。 但し、谷又は道その他の特殊の水温の変化を生ずる場所があるときは、当該場所の上流地点及び下流地点にも選定するものとする。
(水利慣行調査の場合の基準)第十六条 水利慣行調査の対象となるべきものは、水位及び流量調査を行う河川、湖沼及び貯水池で調査を必要とするもの並びに取水調査又は排水量調査を行う用排水路とする。
第三章 踏査
(踏査)第十七条 前章に規定する観測所等の配置の基準に基き、観測所等の位置を決定するため、次条から第二十七条までに定めるところにより、当該調査単位区域を踏査するものとする。
(降水量調査の場合の踏査)第十八条 降水量調査に関する踏査においては、左の各号に掲げる事項について調査するものとする。
一 既存資料の状況
二 既存の観測所の位置及び所属並びに観測施設の状況
三 設置すべき観測所の位置
四 その他必要な事項
(水位及び流量調査の場合の踏査)第十九条 水位及び流量調査に関する踏査においては、前条各号に掲げる事項について調査するものとする。
(取水量調査及び排水量調査の場合の踏査)第二十条 取水量調査又は排水量調査に関する踏査においては、左の各号に掲げる事項について調査するものとする。
一 既存資料の状況
二 用排水路の系統
三 既存の観測所の位置及び所属並びに観測施設の状況
四 設置すべき観測所の位置
五 その他必要な事項
(用水量調査の場合の踏査)第二十一条 用水量調査に関する踏査においては、前条各号に掲げる事項の外、の方法についても調査するものとする。
(地下水調査の場合の踏査)第二十二条 地下水調査に関する踏査においては、左の各号に掲げる事項について調査するものとする。
一 既存資料の状況
二 地下水調査を行うべき地域の面積、地勢その他の概況
三 設置すべき横断基準線の位置及びその総延長の概数
四 設置すべき観測井の位置
五 泉調査及び地質ボーリング等を行うべき地点の位置
六 その他必要な事項
(流砂状況調査の場合の踏査)第二十三条 流砂状況調査に関する踏査においては、左の各号に掲げる事項について調査するものとする。
一 既存資料の状況
二 堆積土砂量調査を行うべき堤
三 河床の堆積土砂量又は洗掘土砂量の調査を行うべき場所
四 設置すべき縦横断線の位置及びその総延長の概数
五 浮遊土砂量調査を行うべき場所
六 その他必要な事項
(積雪調査の場合の踏査)第二十四条 積雪調査に関する踏査においては、左の各号に掲げる事項について調査するものとする。
一 既存資料の状況
二 積雪調査を行うべき地域の面積、地勢その他の概況
三 設定すべき積雪調査路の位置及びその総延長の概数
四 積雪標及び積雪計使用地点の位置
五 その他必要な事項
(水質調査の場合の踏査)第二十五条 水質調査に関する踏査においては、左の各号に掲げる事項について調査するものとする。
一 既存資料の状況
二 採水地点の位置
三 水質分析を行うべき項目
四 その他必要な事項
(水温調査の場合の踏査)第二十六条 水温調査に関する踏査においては、左の各号に掲げる事項について調査するものとする。
一 既存資料の状況
二 水温測定地点の位置
三 その他必要な事項
(水利慣行調査の場合の踏査)第二十七条 水利慣行調査に関する踏査においては、左の各号に掲げる事項について調査するものとする。
一 既存資料の状況
二 調査すべき河川、湖沼、貯水池又は用排水路の位置及び当該受益地域の面積、地勢その他の概況
三 その他必要な事項
第四章 既存資料の集及び解析
第二十八条 観測所等の位置を決定するため、必要な既存資料を集し、且つ、解析するものとする。
第五章 観測所等の位置の決定
(観測所等の位置の決定)第二十九条 第三章の規定による踏査及び前条の規定による解析の結果に基き、観測所等の位置を決定するものとする。
(観測所等の番号)第三十条 前条の規定により観測所等の位置を決定したときは、相互の関連を明らかならしめるため、調査の種類別に、一連番号を附するものとする。
(観測所等の位置の検討)第三十一条 第二十九条の規定により決定された観測所等の位置については、現地における観測、その結果の解析及びその他の方法により当該位置が第七条から第十六条までに定める観測所等の配置の基準に従つているかどうか、及び他の観測所等と相互に有機的な関連を持つ位置を占めているかどうかについて常に検討するものとする。
第六章 成果のとりまとめ
第三十二条 前章の規定により観測所等の位置を決定した場合には、調査の種類別にこれをとりまとめ、観測網一覧表及び一覧図並びに説明書を作成するものとする。
2 前項の観測網一覧表及び一覧図並びに説明書の様式については、別に定める。附則
この府令は、公布の日から施行する。附則(平成一二年八月一四日総理府令第一〇三号)
この府令は、内閣法の一部を改正する法律(平成十一年法律第八十八号)の施行の日(平成十三年一月六日)から施行する。附則(平成一四年三月二六日国土交通省令第二五号)
(施行期日)
第一条 この省令は、平成十四年四月一日から施行する。