第一章 総則
(定義)第一条 この法律において「協定」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定をいう。
2 この法律において「合衆国軍隊」とは、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に基づき日本国にあるアメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍をいう。 3 この法律において「合衆国軍隊の構成員」、「軍属」又は「家族」とは、協定第一条に規定する合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族をいう。第二章 罪
(施設又は区域を侵す罪)第二条 正当な理由がないのに、合衆国軍隊が使用する施設又は区域(協定第二条第一項の施設又は区域をいう。以下同じ。)であつて入ることを禁じた場所に入り、又は要求を受けてその場所から退去しない者は、一年以下の拘禁刑又は二万円以下の罰金若しくは科料に処する。 ただし、刑法(明治四十年法律第四十五号)に正条がある場合には、同法による。
(証拠を隠滅する等の罪)第三条 協定によりアメリカ合衆国の軍事裁判所(以下「合衆国軍事裁判所」という。)が裁判権を行使する他人の刑事被告事件に関する証拠を隠滅し、偽造し、若しくは変造し、又は偽造若しくは変造の証拠を使用した者は、二年以下の拘禁刑又は二万円以下の罰金に処する。
2 犯人の親族が犯人の利益のために前項の罪を犯したときは、その刑を免除することができる。 (偽証等の罪)第四条 合衆国軍事裁判所の手続に従つて宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の罪を犯した者が、証言した事件の裁判の確定前に自白したときは、その刑を減軽し、又は免除することができる。 3 合衆国軍事裁判所の手続に従つて宣誓した鑑定人又は通訳人が虚偽の鑑定又は通訳をしたときは、前二項の例による。 (軍用物を損壊する等の罪)第五条 合衆国軍隊に属し、かつ、その軍用に供する兵器、弾薬、糧食、被服その他の物を損壊し、又は傷害した者は、五年以下の拘禁刑又は五万円以下の罰金に処する。
(合衆国軍隊の機密を侵す罪)第六条 合衆国軍隊の機密(合衆国軍隊についての別表に掲げる事項及びこれらの事項に係る文書、図画又は物件で、公になつていないものをいう。以下同じ。)を、合衆国軍隊の安全を害すべき用途に供する目的をもつて、又は不当な方法で、探知し、又は収集した者は、十年以下の拘禁刑に処する。
2 合衆国軍隊の機密で、通常不当な方法によらなければ探知し、又は収集することができないようなものを他人に漏らした者も、前項と同様とする。 3 前二項の未遂罪は、罰する。第七条 前条第一項又は第二項の罪の陰謀をした者は、五年以下の拘禁刑に処する。
2 前条第一項又は第二項の罪を犯すことを教唆し、又は動した者も、前項と同様とする。 3 前項の規定は、教唆された者が、教唆に係る犯罪を実行した場合において、刑法総則に定める教唆の規定の適用を排除するものではない。第八条 第六条第一項の罪、同項に係る同条第三項の罪又は同条第一項に係る前条第一項の罪を犯した者が自首したときは、その刑を減軽し、又は免除する。
(制服を不当に着用する罪)第九条 正当な理由がないのに、合衆国軍隊の構成員の制服又はこれに似せて作つた衣服を着用した者は、拘留又は科料に処する。
第三章 刑事手続
(施設又は区域内の逮捕等)第十条 合衆国軍隊がその権限に基づいて警備している合衆国軍隊の使用する施設又は区域内における逮捕、勾引状又は勾留状の執行その他人身を拘束する処分は、合衆国軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又はその合衆国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。
2 死刑又は無期若しくは長期三年以上の拘禁刑に当たる罪に係る現行犯人を追跡して前項の施設又は区域内において逮捕する場合には、同項の同意を得ることを要しない。 (逮捕された合衆国軍隊の構成員又は軍属の引渡)第十一条 検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員又は軍属であり、且つ、その者の犯した罪が協定第十七条第三項(a)に掲げる罪のいずれかに該当すると明らかに認めたときは、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。
2 司法警察員は、前項の規定により被疑者を合衆国軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。 (合衆国軍隊によつて逮捕された者の受領)第十二条 検察官又は司法警察員は、合衆国軍隊から日本国の法令による罪を犯した者を引き渡す旨の通知があつた場合には、裁判官の発する逮捕状を示して被疑者の引渡しを受け、又は検察事務官若しくは司法警察職員にその引渡しを受けさせなければならない。 この場合において、刑事訴訟法第二百一条の二第二項の規定による逮捕状に代わるものの交付があつたときは、当該逮捕状に代わるものを示して、その引渡しを受けることができる。
2 検察官又は司法警察員は、引き渡されるべき者が日本国の法令による罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があつて、急速を要し、あらかじめ裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げてその者の引渡しを受け、又は受けさせなければならない。 この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。 逮捕状が発せられないときは、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。 3 前二項の場合を除くほか、検察官又は司法警察員は、引き渡される者を受け取つた後、直ちにその者を釈放し、又は釈放させなければならない。 4 第一項又は第二項の規定による引渡しがあつた場合には、刑事訴訟法第百九十九条の規定により被疑者が逮捕された場合に関する規定を準用する。 ただし、同法第二百三条、第二百四条及び第二百五条第二項に規定する時間は、引渡しがあつた時から起算する。 (施設又は区域内の差押え、捜索等)第十三条 合衆国軍隊がその権限に基づいて警備している合衆国軍隊の使用する施設若しくは区域内における、又は合衆国軍隊の財産についての捜索(捜索状の執行を含む。)、差押え(差押状の執行を含む。)、記録命令付差押え(記録命令付差押状の執行を含む。)又は検証(検証状の執行を含む。)は、合衆国軍隊の権限ある者の同意を得て行い、又は検察官若しくは司法警察員からその合衆国軍隊の権限ある者に嘱託して行うものとする。 ただし、裁判所又は裁判官が必要とする検証の嘱託は、その裁判所又は裁判官からするものとする。
(日本国の法令による罪に係る事件についての捜査)第十四条 協定により合衆国軍事裁判所が裁判権を行使する事件であつても、日本国の法令による罪に係る事件については、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、捜査をすることができる。
2 前項の捜査に関しては、裁判所又は裁判官は、令状の発付その他刑事訴訟に関する法令に定める権限を行使することができる。 (証人の出頭等の義務)第十五条 合衆国軍事裁判所の嘱託により、裁判官から合衆国軍事裁判所に証人として出頭すべき旨を命ぜられ、又は合衆国軍事裁判所において宣誓若しくは証言を求められた者は、これに応じなければならない。
2 前項の者が、正当な理由がないのに、出頭せず、又は宣誓若しくは証言を拒んだときは、一万円以下の過料に処する。 (証人の勾引についての協力)第十六条 正当な理由がないのに、前条第一項の規定による裁判官の出頭命令に応じない証人について合衆国軍事裁判所から嘱託があつたときは、裁判官は、その証人に対して勾引状を発して、これを合衆国軍事裁判所に勾引することができる。
2 前項の勾引状には、合衆国軍事裁判所の嘱託の趣旨を記載しなければならない。 3 第一項の勾引状は、検察官の指揮により、司法警察職員が執行する。 4 刑事訴訟法第七十一条及び第七十三条第一項前段の規定は、第一項の規定による勾引に準用する。 (書類又は証拠物の提供等)第十七条 裁判所、検察官又は司法警察員は、その保管する書類又は証拠物について、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊から、刑事事件の審判又は捜査のため必要があるものとして申出があつたときは、その閲覧若しくは謄写を許し、謄本を作成して交付し、又はこれを一時貸与し、若しくは引き渡すことができる。
(日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件についての協力)第十八条 検察官又は司法警察員は、合衆国軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服する家族の逮捕の要請を受けたときは、これを逮捕し、又は検察事務官若しくは司法警察職員に逮捕させることができる。
2 合衆国軍隊から逮捕の要請があつた者が、人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内にいることを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官の許可を得て、その場所に入りその者を捜索することができる。 但し、追跡されている者がその場所に入つたことが明らかであつて、急速を要し裁判官の許可を得ることができないときは、その許可を得ることを要しない。 3 第一項の規定により合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服する家族を逮捕したときは、直ちに検察官又は司法警察員から、その者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。 4 司法警察員は、前項の規定により合衆国軍隊の構成員、軍属又は合衆国の軍法に服する家族を引き渡したときは、その旨を検察官に通報しなければならない。第十九条 検察官又は司法警察員は、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊から、日本国の法令による罪に係る事件以外の刑事事件につき、協力の要請を受けたときは、参考人を取り調べ、実況見分をし、又は書類その他の物の所有者、所持者、若しくは保管者にその物の提出を求めることができる。
2 検察官又は司法警察員は、検察事務官又は司法警察職員に前項の処分をさせることができる。 3 前二項の処分に際しては、検察官、検察事務官又は司法警察職員は、その処分を受ける者に対して合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊の要請による旨を明らかにしなければならない。 4 正当な理由がないのに、第一項又は第二項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の処分を拒み、妨げ、又は忌避した者は、一万円以下の過料に処する。 (刑事補償)第二十条 刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)又は少年の保護事件に係る補償に関する法律(平成四年法律第八十四号)の適用については、合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊による抑留又は拘禁は、刑事訴訟法による抑留若しくは拘禁又は少年の保護事件に係る補償に関する法律第二条第一項第二号に掲げる身体の自由の拘束とみなす。
附則
この法律は、公布の日から施行する。附則(昭和二八年一一月一二日法律第二六四号)
この法律は、公布の日から施行する。 検察官又は司法警察員は、逮捕された者が合衆国軍隊の構成員、軍属又は家族であり、且つ、その者の犯した罪が昭和二十八年十月二十九日前の行為に係るものであることを確認したときは、この法律による改正後の第十一条第一項の規定により引渡をなすべき場合に該当しない場合においても、刑事訴訟法の規定にかかわらず、直ちに被疑者を合衆国軍隊に引き渡さなければならない。 司法警察員は、前項の規定により被疑者を合衆国軍隊に引き渡した場合においても、必要な捜査を行い、すみやかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。附則(昭和三五年六月二三日法律第一〇二号)
(施行期日)
第一条 この法律は、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の効力発生の日から施行する。
(第十三条関係の経過規定)
第十条 日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第十七条第十二項の規定により日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第十七条の当該時に存在した規定が適用されるべき事件については、この法律による改正後の日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う刑事特別法第十条から第十九条までの規定を適用しない。 この場合においては、この法律による改正前の日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法第十条から第十九条まで並びに日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法の一部を改正する法律(昭和二十八年法律第二百六十四号)附則第二項及び第三項の規定の定めるところによる。 この法律の施行前に合衆国軍事裁判所又は合衆国軍隊によつてされた抑留又は拘禁についての刑事補償法(昭和二十五年法律第一号)の適用に関しては、なお従前の例による。
附則(平成四年六月二六日法律第八四号)
この法律は、公布の日から起算して九十日を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、この法律の施行後に第二条に規定する決定があった保護事件に係る身体の自由の拘束又は没取について適用する。附則(平成二三年六月二四日法律第七四号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
附則(令和四年六月一七日法律第六八号)
この法律は、刑法等一部改正法施行日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。一 第五百九条の規定 公布の日
附則(令和五年五月一七日法律第二八号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(罰則に関する経過措置)
第四十条 第二号施行日前にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
附則(令和七年四月二三日法律第二六号)
(施行期日)
第一条 この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
附則(令和七年五月二三日法律第三九号)
(施行期日)
第一条 この法律は、令和九年三月三十一日までの間において政令で定める日から施行する。 ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
(政令への委任)
第三十九条 この附則に定めるもののほか、この法律の施行に関し必要な経過措置は、政令で定める。
(映像等の送受信による通話に係る取組の推進)
第四十一条 政府は、被告人又は被疑者(以下「被告人等」という。)にとって、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、刑事訴訟法第三十一条第二項の許可があった後に限る。)(以下「弁護人等」という。)の援助を受けることが重要であることに鑑み、同法第三十九条第一項の規定による接見のほかに、身体の拘束を受けている被告人等と弁護人等との間における映像と音声の送受信による通話を可能とするための運用上の措置について、地域の実情を踏まえ、被告人等と弁護人等との間の秘密の確保に配慮するとともに不正行為等の防止に万全を期しつつ、必要な取組を推進するものとする。
別表
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