--- title: "不動産登記法とは:登記の種類と申請の基本" description: "不動産登記法の表示と権利の登記、共同申請と単独申請、申請情報と登記原因証明情報の違いを解説。相続・住所変更による記録の更新、登記事項証明書、土地の筆界特定の役割を整理します。" date: 2026-09-15 category: 法令解説 tags: [不動産登記, 登記申請] related_laws: [416AC0000000123] draft: false --- 不動産登記法(平成16年法律第123号、法令ID:`416AC0000000123`)は、土地・建物の状態と、それらに関する権利を登記によって公示する制度を定めます。不動産の売買、相続、建物の新築などに関わる人が、どの種類の記録を変更するのか、誰が申請するのかを確認する際の基本となる法律です。この記事では表示と権利の登記、申請、証明、筆界特定を扱い、個別物件の権利関係や添付書類一式の判断は扱いません。[法令全文](/view/416AC0000000123)と[e-Govの条文](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123?occasion_date=20260915)を基に、2026年9月15日時点の制度を整理します。 ## 土地・建物の表示と権利の登記を分ける 不動産登記は、不動産がどのような物であるかを示す記録と、その不動産について誰がどのような権利を持つかを示す記録を分けています。第2条は前者を「表示に関する登記」、後者を「権利に関する登記」と定義しています。 表示に関する登記が記録される部分は表題部です。土地では第34条により所在、地番、地目、地積などが、建物では第44条により所在、家屋番号、種類、構造、床面積などが登記事項になります。マンションなどの区分建物では、一棟の建物に関する情報や敷地権も扱います。表題部に所有者が記載される場合もありますが、第2条はその「表題部所有者」と、権利部の「登記名義人」を区別しています。 権利に関する登記は権利部に記録されます。第3条には所有権のほか、地上権、地役権、抵当権、賃借権、配偶者居住権などが列挙されています。建物を新築したときの状態の登録と、その建物について所有権を記録する手続は、同じ「登記」でも目的が異なります。物件の情報を読む際には、まず表示と権利のどちらの記録を見ているかを確認すると、各登記の役割を整理できます。[根拠:第2条・第3条・第34条・第44条](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123?occasion_date=20260915) ## 申請主義と共同申請の原則 第16条は、法令に別段の定めがある場合を除き、当事者の申請または官公署の嘱託がなければ登記をすることができないと定めています。取引や相続が起きたことと、登記記録が更新されることを別の段階として扱う制度です。 権利に関する登記について、第60条は登記権利者と登記義務者の共同申請を原則とします。この二つの用語は、取引上の債権者・債務者と同じ意味ではありません。第2条では、登記によって登記上直接利益を受ける者と、直接不利益を受ける登記名義人として定義されています。申請当事者を、登記の前後で記録がどう変わるかに着目して区分しているのです。 一方、第63条には単独申請の制度があります。相続や法人の合併による権利移転は登記権利者が単独で申請でき、相続人への遺贈による所有権移転にも単独申請の規定があります。また、登記手続を命ずる確定判決による登記も規定されています。「権利の登記は常に二人で申請する」という仕組みではなく、登記原因に応じて原則と特則が組み合わされています。[根拠:第2条・第16条・第60条・第63条](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123?occasion_date=20260915) ## 申請情報・登記識別情報・原因証明情報 第18条は、電子情報処理組織を利用する方法と、申請情報を記載した書面を提出する方法を定めています。申請には、対象不動産、申請人、登記の目的などを示す申請情報が必要です。 ここで区別したいのが、申請情報、登記識別情報、登記原因を証する情報です。申請情報は「何を登記してほしいか」を示します。登記識別情報は第2条・第22条に関係し、登記名義人自身が申請していることを確認するための情報です。第61条の登記原因証明情報は、権利変動の原因を証するために、原則として権利に関する登記の申請情報と併せて提供します。それぞれの情報は役割が異なり、一つを用意すれば残りが不要になるという構成ではありません。 第25条は、管轄違い、申請権限の欠如、申請情報と登記記録の不一致、必要な情報の不提供など、申請を却下する事由を定めています。ただし、補正可能な不備を登記官が定めた期間内に補正した場合の扱いも設けられています。申請方法の細部は政令・法務省令に委ねられているため、法律で情報の役割をつかみ、登記の種類に対応する具体的な様式や添付情報へ進む構成になっています。[根拠:第18条・第22条・第25条・第61条](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123?occasion_date=20260915) ## 相続・住所変更と登記記録の更新 所有権に関する登記の節には、相続による取得や所有者の住所等の変更について、記録を更新するための規定があります。取引時にだけ登記を行うという理解では、これらの制度を捉えきれません。 相続に関する第76条の2と相続人申告登記に関する第76条の3は、相続によって所有権を取得した場面を扱います。相続人申告登記は、その人が相続人である旨を申し出るための制度であり、具体的な所有権移転の登記と条文上も別に設けられています。相続を原因とする記録の更新では、取得の登記と申出の制度を区別して読むことが必要です。 住所等の変更については第76条の5以下に規定があります。法務省は、2026年4月1日から所有権の登記名義人の住所や氏名・名称の変更登記が義務化され、変更から2年以内の申請が必要になると案内しています。また、同省は登記官による職権登記につなげる制度も説明しています。法律全体の説明ではこれらを所有者情報の更新制度として押さえ、期限や手続の詳説は[住所変更登記の解説](/article/real-estate-registration-address-change-2026)に分けています。[根拠:法務省「住所等変更登記の義務化」](https://www.moj.go.jp/MINJI/jushohenko/) ## 登記事項証明と筆界特定の役割 登記制度は申請して記録を作るだけでなく、記録を確かめる仕組みも備えています。第119条は、何人も手数料を納付して、登記記録の全部または一部を証明する登記事項証明書の交付を請求できると定めます。 証明書は登記記録に何が記録されているかを示す書面です。同条には、住所の公開によって生命や身体等への危害のおそれがある場合に、一定の申出に基づいて住所に代わる事項を記載する制度もあります。公示を行う仕組みの中で、住所の表示に関する例外を法律が設けています。登記の内容の証明と、当事者間のすべての事情の判断は区別して考える必要があります。 土地については、第123条以降に筆界特定制度があります。筆界は、一筆の土地が登記されたときに境として構成された点と線であり、筆界特定はその現地での位置、または位置の範囲を特定する手続です。取引当事者が自由に設定する線という定義ではありません。表示に関する登記が一筆ごとの土地を対象とすることから、その境を確認する制度も登記法の中に置かれています。証明書で記録を読む場面と、現地の筆界の位置を調べる場面は、別の手続として整理されています。[根拠:第119条・第123条以下](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123?occasion_date=20260915) ## 登記の順位と仮登記から本登記への移行 同じ不動産に複数の権利が記録される場合、第4条は、法令に別段の定めがある場合を除いて、登記の前後によって順位を定めます。権利の種類や名義人だけでなく、登記の順序も記録を読むうえで意味を持ちます。 第106条は、仮登記に基づいて本登記をした場合、その順位が仮登記の順位によると規定しています。後で行う本登記と、先に置かれた仮登記を順位の面で結び付ける制度です。第107条には、登記義務者の承諾がある場合などに、登記権利者が単独で仮登記を申請できる規定もあります。 一方、所有権の仮登記を本登記にする際、登記上の利害関係を有する第三者がいる場合は、第109条によりその承諾が必要です。仮登記が記録されていることだけで、その後の申請手続がすべて不要になるわけではありません。申請方法を定める条文と順位を定める条文を合わせて読むことで、仮登記と本登記が異なる段階の記録であることを確認できます。[根拠:第4条・第106~109条](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123?occasion_date=20260915) ## 参考リンク 制度全体と所有者情報の更新は、次の公式資料で確認できます。 - [e-Gov法令検索:不動産登記法](https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123?occasion_date=20260915) - [法務省:住所等変更登記の義務化](https://www.moj.go.jp/MINJI/jushohenko/)