--- title: "労働安全衛生法とは:安全衛生管理と健康確保" description: "労働安全衛生法の安全衛生管理体制、危険防止、化学物質の情報伝達、安全衛生教育、健康診断と事後措置を解説。事業者や職場の担当者に向け、政省令による対象区分と健康情報の保護まで整理します。" date: 2026-09-15 category: 法令解説 tags: [労働安全衛生, 職場] related_laws: [347AC0000000057] draft: false --- 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号、法令ID:`347AC0000000057`)は、労働災害の防止に関する基準、責任体制、自主的な活動等を通じ、職場の安全と健康を確保する法律です。[法令全集](/view/347AC0000000057)と[e-Gov法令検索](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057)で確認できます。事業者、現場管理者、人事・安全衛生担当者や労働者が、職場で必要な制度を調べる際に参照します。この記事では体制、設備・物質、教育、健康確保の関係を扱い、特定作業の安全判定や個人の医学的判断は扱いません。 2026年9月15日時点の2026年4月1日施行版を参照しています。改正の段階的施行は、[2026年の労働安全衛生法改正に関する記事](/article/industrial-safety-health-2026-amendment)と分担し、ここでは法令全体を整理します。 ## 管理者・産業医・委員会で役割を分ける 第3条は事業者に、最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境と労働条件の改善を通じて安全・健康を確保する責務を定めます。第3章は、その取組を動かす管理体制を扱います。総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医等は、それぞれ異なる条文に置かれています。 第10条以下の選任対象は、業種や事業場規模等について政令・省令の定めに接続します。すべての事業場が同じ役職者を同じ人数置くという制度ではありません。資格、担当する職務、選任の条件を分けて確認する必要があります。産業医については第13条が、健康管理に必要な情報の提供や勧告等を定めています。 第17条は安全委員会、第18条は衛生委員会を置き、危険防止や健康障害防止、再発防止等の調査審議を担わせます。担当者が実施する業務と、労働者も関わって審議する場は別の機能です。人を選任することだけで終わらず、情報提供、意見、具体的な対策をつなげる体制として読むことが重要です。[根拠:第3条・第10条から第19条](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057#Mp-At_13) ## 設備や作業の危険と健康障害を予防する 第20条は機械・設備、爆発性・引火性の物、電気や熱等による危険を防止する措置を定めます。第22条は原材料、ガス、粉じん、騒音、高温等による健康障害を防ぐ措置です。目に見える事故だけでなく、作業環境や物質へのばく露に関する健康影響も対象になります。 第28条の2は、設備、原材料、作業行動等の危険性・有害性を調査し、その結果を措置につなげる努力義務を定めています。対象業種や物質には区分があり、後述の第57条の3の調査義務とは分けて読む必要があります。危険を見つける活動と、個別の法令で義務付けられる措置の両方を組み合わせる構造です。 第5章には機械の製造許可、検査、使用制限等の制度もあります。設備を買う段階、使い始める段階、継続して使用する段階で確認する規定は異なります。労働安全衛生法は「作業者が気を付けること」だけではなく、機械・環境・作業方法を通じて危険を防ぐための制度を定めています。[根拠:第20条・第22条・第28条の2・第5章](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057#Mp-At_20) ## 化学物質は表示・通知・調査をつなげる 第57条は対象物質を容器等で譲渡・提供する者に、名称、人体への作用、取扱上の注意等の表示を定めます。第57条の2は、成分・含有量、性質、応急措置等の情報を相手方へ通知する制度です。容器の表示と、詳しい情報を伝える通知は関連しながらも別の規定です。 第57条の3は、対象物質による危険性・有害性等を事業者が調査する義務を定めます。情報を受け取ることが、職場での具体的な取扱いを調べることにつながる構成です。同条は調査結果に基づく法令上の措置と、その他の必要な措置に関する努力を区分しています。 対象となる物質や具体的な方法は政省令によって定められます。一般消費者の生活用製品についての除外等もあり、化学物質という名称だけですべて同じ取扱いになるわけではありません。供給する者の情報伝達と、使用する事業者の調査・対策を分けることで、化学物質管理の責任関係を把握できます。[根拠:第57条から第57条の3](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057#Mp-At_57_3) ## 雇入れ時教育・特別教育・就業制限を区別する 第59条は、雇入れ時と作業内容変更時の安全衛生教育を定めています。また、危険・有害な業務のうち省令で定めるものに就かせる場合には、特別の教育を行う仕組みがあります。一般的な入社説明と、特定の危険業務に必要な教育は、同じ条文の中でも区別されています。 第61条の就業制限は、政令で定める業務について、免許、技能講習修了等の資格がある者でなければ就かせてはならないという規定です。特別教育を受けることと、就業制限業務の資格を満たすことを同一視できません。対象作業を確認し、教育と資格のどちらの制度に関係するかを調べる必要があります。 第62条の2は、高年齢者の特性に配慮した作業環境の改善や作業管理等の努力義務を定めています。教育を一度行えば、設備や作業管理への配慮が不要になる構成ではありません。作業者の知識・技能、必要な資格、年齢等に応じた環境を組み合わせ、業務に就く段階と継続する段階を支える制度です。[根拠:第59条・第61条・第62条の2](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057#Mp-At_59) ## 健康診断は医師の意見と就業上の措置へ続く 第66条は健康診断を定め、有害業務に関する特別な項目の健診等も区分しています。実施時期や項目は厚生労働省令等の定めと結び付きます。健康診断を受けたかどうかだけでなく、業務に対応する種類の健診かを確認する構造です。 第66条の3は結果の記録、第66条の4は異常所見のある労働者について医師等の意見を聴くこと、第66条の5はその意見を踏まえた就業上の措置を定めています。就業場所の変更、作業転換、労働時間の短縮等が挙げられており、結果票を保管して終わる制度ではありません。 第65条の作業環境測定も、働く場所の有害要因を把握する別の制度です。労働者本人の健康状態を確認する健診と、作業場の状態を測定することは同じではありません。環境の測定、健診、医師の意見、作業条件の改善をつなげて読むことで、健康障害を予防する章の全体像を把握できます。[根拠:第65条・第66条から第66条の5](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057#Mp-At_66) ## 面接指導とストレスチェックでは情報保護も重要 第66条の8以下は、労働時間等の条件に応じた医師の面接指導を定めています。第66条の10は心理的な負担の程度を把握する検査と、所定の条件に該当して本人から申出があった場合の面接指導を扱います。労働時間に関する制度と心理的負担の検査は、それぞれ別の入口を持ちます。 第66条の10は、検査を行った医師等から本人へ結果が通知されることと、本人の同意なしに事業者へ結果を提供してはならないことを定めています。健康確保のために実施する制度でも、事業者がすべての結果を当然に自由利用できるという仕組みではありません。事業場規模に関する適用や改正の経過措置は、本則だけでなく附則との照合が必要です。 第104条は心身の状態に関する情報を、健康確保に必要な範囲で収集し、目的の範囲で保管・使用する原則と、適正管理の措置を定めます。健康支援と情報保護は対立する別問題ではなく、同じ制度を実施する際の要件として組み合わされています。労働安全衛生法を読む際は、安全設備や健診の実施に加え、結果を誰がどう扱うかまで確認することが要点です。[根拠:第66条の8・第66条の10・第104条](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057#Mp-At_104) ## 参考リンク 管理体制から健康情報までの根拠は、公式条文で確認できます。 - [労働安全衛生法:e-Gov法令検索](https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000057) - [2026年9月15日時点の条文データ](https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/347AC0000000057?asof=2026-09-15)