--- title: "災害対策基本法とは:防災計画と災害対応の役割分担" description: "災害対策基本法の国・自治体の責務、防災計画、避難場所と避難所、要支援者名簿、避難指示や被災者支援を解説。地域の防災制度を調べる人に向け、平常時の準備から災害後までの役割分担を整理します。" date: 2026-09-15 category: 法令解説 tags: [防災, 災害対応] related_laws: [336AC0000000223] draft: false --- 災害対策基本法(昭和36年法律第223号、法令ID:`336AC0000000223`)は、国・地方公共団体等の防災の責務、計画、予防、応急対策、復旧等の基本的な仕組みを定めています。[法令全集](/view/336AC0000000223)と[e-Gov法令検索](https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223)で確認できます。自治体や事業所の防災担当者、地域の避難・支援制度を調べる住民が参照します。この記事は制度上の役割分担を扱い、発生中の災害における避難先の判断や個別支援金の受給判定は扱いません。 2026年9月15日時点の2026年7月17日施行版を参照し、それより後に施行される制度は現行の説明に含めていません。 ## 国・都道府県・市町村が異なる範囲を担う 第3条は国に、災害予防・応急対策・復旧の基本計画の作成と実施、地方公共団体等の事務の推進・総合調整等を求めています。第4条の都道府県は地域の計画を作り、区域内の市町村等の実施を助けて総合調整を行う役割です。第5条は市町村を基礎的な地方公共団体として、地域と住民を災害から保護する責務を定めています。 三者は同じ範囲の仕事を重ねるだけでなく、地域での実施と広域的な支援・調整を組み合わせています。市町村の消防機関、自主防災組織等の充実や、自発的な住民活動の促進も第5条に含まれます。行政組織だけで完結する防災制度ではありません。 第7条は、重要施設の管理者等の責務に加え、必要な物資・役務の供給事業者や住民の取組を定めます。住民には備蓄、自発的な防災活動への参加、教訓の伝承等の努力が示されています。国の責任と住民の備えをどちらか一方に置き換えるのではなく、それぞれ異なる主体の役割として読むことが基本になります。[根拠:第3条から第7条](https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223#Mp-At_3) ## 防災基本計画から地域の具体的な計画へ進む 第34条は中央防災会議による防災基本計画の作成と、毎年の検討・必要な修正を定めています。第36条は指定行政機関の防災業務計画を、その所掌事務に関して作成する制度です。全国的な基本と、各機関の業務上の備えを分けています。 第40条は都道府県地域防災計画、第42条は市町村地域防災計画を定めています。地域計画には、関係主体の事務・業務の大綱、予防、情報の収集・伝達、応急対策や復旧等の事項が含まれます。避難所の場所だけを示す資料ではなく、誰がどの事務を担うかを地域に即して組み立てる計画です。 計画相互の整合性や、毎年検討して必要に応じ修正する仕組みも条文にあります。一度作成した文書をそのまま保存し続けることだけを求める制度ではありません。法律の一般的な権限・責務から、各地域の具体的な体制へ進むために、地域防災計画が重要な確認先になります。全国の法律だけから、個々の自治体の担当窓口や施設運営方法を一律に説明することはできません。[根拠:第34条・第36条・第40条・第42条](https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223#Mp-At_42) ## 指定緊急避難場所と指定避難所を区別する 第49条の4は、円滑・迅速な避難のための立退きを確保する施設や場所を、洪水・津波等の異常な現象の種類ごとに指定緊急避難場所として指定する制度です。地形や地質、防災施設等の状況を踏まえるもので、どの災害でも同じ場所が適するという指定ではありません。 第49条の7の指定避難所は、災害発生時の適切な避難所を確保するため、想定される災害や人口等を踏まえて指定する施設です。危険から緊急に逃れる場所を確保する制度と、避難所を確保する制度では目的が異なります。名称の似た二つの指定を、同じ一覧の呼び方違いとして扱わないことが重要です。 指定には政令の基準や管理者の同意、公示等が関係します。法律は指定の骨格を置き、具体的な施設は市町村等の公示・資料で確認する構成です。地域の防災資料を読む際は、施設名だけでなく、どの指定なのか、災害の種類との関係がどう示されているかを区別すると、制度の意味が明確になります。[根拠:第49条の4・第49条の7](https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223#Mp-At_49_4) ## 要支援者の名簿と個別避難計画を準備する 第49条の10は、自力での避難が困難で特に支援が必要な避難行動要支援者について、市町村長が名簿を作成しておくことを定めています。地域防災計画に基づき、避難支援や安否確認等の基礎となる情報を整える制度です。 第49条の14は個別避難計画の作成を扱います。名簿が対象者を把握する基礎であるのに対し、個別計画は対象者ごとの避難支援につながる内容を扱います。作成に関する規定の強さや同意等の条件もあるため、名簿と計画を同じ書類として説明することはできません。 これらに続く条文には、情報の利用・提供、提供先の配慮、秘密保持等も置かれています。支援に必要な情報を事前に整えることと、情報を適切に扱うことを組み合わせる構造です。平常時の関係者間の準備が、災害時の支援につながるよう定められており、災害が起きてから支援対象を初めて探すことだけを想定した制度ではありません。[根拠:第49条の10から第49条の17](https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223#Mp-At_49_14) ## 避難指示・警戒区域・応援には別の権限がある 第60条は市町村長による避難のための立退きの指示等を定めます。同条には、立退きによってかえって危険が及ぶおそれがある緊急の場合に、安全確保措置を指示する仕組みもあります。日常の避難情報の用語だけでなく、法律上どの措置を定めた条文なのかを分けて確認します。 第63条の警戒区域は、生命・身体の危険防止のため、立入りの制限・禁止や退去を命じる制度です。第64条の応急公用負担等は、緊急の必要がある場合の土地・建物の一時使用等を扱います。避難の指示、区域への立入り規制、応急措置のための財産使用は、それぞれ違う要件を持っています。 第67条は他の市町村への応援要求を定め、応援を受けた活動の指揮関係も規定しています。災害対策基本法は被災した自治体だけですべての業務を行う制度ではなく、外部の応援と地域の指揮をつなぎます。権限の主体、発動する場面、対象となる行為を分けて読むことが、応急対策の全体像を理解する要点です。[根拠:第60条・第63条・第64条・第67条](https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223#Mp-At_60) ## 被害の証明と援護の情報を災害後に整える 第90条の2は、被災者の申請に基づき、市町村長が住家等の被害状況を調査し、程度を証明する罹災証明書を交付する制度です。調査に必要な職員育成や連携など、交付体制を事前に確保する規定も置かれています。書面の発行だけでなく、被害状況を確認する業務が前提になります。 第90条の3の被災者台帳は、援護を総合的・効率的に行うため必要な場合に作成できるものです。被害状況や援護の実施状況、要配慮者に関する事項等を記録します。被害を証明する書面と、支援の状況を管理する台帳は用途が異なります。 これらの制度は、避難の指示や救助の段階が終わった後の生活支援にも関係します。ただし、台帳の作成や罹災証明書の交付が、そのまますべての支援金の支給を決めるわけではありません。各支援制度は別の根拠や要件を持ちます。本法は、予防の計画、災害時の権限、被災後の情報整備を通じて、多様な制度を動かす共通の基盤を定めています。[根拠:第90条の2・第90条の3](https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223#Mp-At_90_2) ## 参考リンク 基準日時点の責務・計画・応急対策の条文は、次で確認できます。 - [災害対策基本法:e-Gov法令検索](https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223) - [2026年9月15日時点の条文データ](https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/336AC0000000223?asof=2026-09-15)