--- title: "デジタル庁設置法とは:所掌事務と組織" description: "デジタル庁設置法の二つの任務、個人番号やデータ標準化の所掌事務、情報システム予算の調整を解説。内閣総理大臣・デジタル大臣・デジタル監の役割、庁令、推進会議と公表制度を整理します。" date: 2026-09-15 category: 法令解説 tags: [デジタル庁, 行政組織] related_laws: [503AC0000000036] draft: false --- デジタル庁設置法(令和3年法律第36号、法令ID:`503AC0000000036`)は、デジタル庁の設置、任務、所掌事務、組織と権限を定める法律です。行政のデジタル化を調べる人や公共情報システムに関わる担当者が、どの機関が何を担当するかを確認する際に参照できます。この記事では行政組織と政策調整の仕組みを扱い、個別サービスの利用方法やデータ利用の適法性は扱いません。[法令全文](/view/503AC0000000036)と[e-Govの条文](https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000036?occasion_date=20260915)に基づき、2026年9月15日時点の施行内容を説明します。 ## 内閣の補助と行政事務の遂行という二つの任務 第2条は、内閣にデジタル庁を置くと定めます。第3条は任務を二つに分け、デジタル社会形成基本法の基本理念を踏まえて、内閣を助けることと行政事務を遂行することを規定しています。 一つ目は、デジタル社会の形成に関する内閣の事務を内閣官房と共に助けることです。二つ目は、関連する行政事務を迅速かつ重点的に行うことです。この区分を受けて、第4条第1項は基本方針の企画・立案や総合調整等を、第2項は具体的な所掌事務を列挙しています。政府全体の方向を調整する仕事と、自ら担当する事務を実施する仕事を、条文上分けています。 第5条は、組織が明確な任務・所掌事務を持ちつつ、内閣の課題に弾力的に対応できることを求めます。また、自ら政策を評価・企画し、他の行政機関との調整・連絡を図って一体として行政機能を発揮すると定めます。単独のシステム開発組織としてだけでなく、府省横断の政策と事務の実施を担う組織として設計されている点が特徴です。[根拠:第2~5条](https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000036?occasion_date=20260915) ## 個人番号・本人確認・データ標準化を担当する 第4条第2項は、重点計画や番号制度、本人確認、データの標準化などを所掌事務として掲げています。ただし、列挙された分野の事務をすべて無条件にデジタル庁へ集める規定ではありません。 個人番号や個人番号カード等の利用、情報提供ネットワークシステムの設置・管理には、他府省の所掌に属するものを除く旨が付されています。電子署名、公的個人認証に関する検証者、電子委任状についても、法務省や総務省の所掌との区分があります。設置法の列挙は、他の法律が定める制度と役割分担を前提に読まれます。 データに関しては、複数の行政機関や民間事業者が利用する官民データの標準化、外部連携機能、公的基礎情報データベース等に関する政策が挙げられています。単に情報を電子化する事務だけでなく、異なる主体が情報を利用するための基盤を整える仕事を含んでいます。個々の情報の収集・提供の条件は関連する個別法の問題であり、所掌事務として列挙されていることだけで自由なデータ利用を認めるものではありません。[根拠:第4条第2項](https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000036?occasion_date=20260915) ## 情報システムの予算要求と執行を調整する 第4条第2項は、情報システムの基本方針や整備計画だけでなく、国のシステム事業の統括・監理、予算の一括要求や執行に関する事務も定めています。政策を立案する段階と実際の事業を動かす段階を接続する規定です。 同項第18号では、一定の情報システムについて必要な予算を一括要求・確保し、事業実施の計画を定めることを掲げています。その上で、デジタル庁自らが全部または一部を執行する場合と、関係行政機関へ予算を配分し、方針や計画等を通知して執行させる場合を分けています。すべてのシステムを一つの部署が直接構築するという制度ではありません。 国の安全等に関するものなど、政令で除かれる情報システムもあります。また、同項には国の機関が共用するシステム、情報交換システム、共同利用のクラウドサービスに関する事務も規定されています。所掌事務を読むときは、基本方針、予算、事業実施、共用基盤という異なる仕事を分けることで、各府省との分担が見えてきます。[根拠:第4条第2項第15~21号](https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000036?occasion_date=20260915) ## 内閣総理大臣・デジタル大臣・デジタル監 組織の長と庁内の職については、第6条以降に規定があります。デジタル庁の長は内閣総理大臣であり、デジタル大臣やデジタル監とは法律上別の位置づけです。 第8条のデジタル大臣は国務大臣をもって充て、内閣総理大臣を助けて庁の事務を統括し、職員の服務を統督します。同条は、総合調整等のための資料提出・説明の要求、関係行政機関の長への勧告、措置の報告要求なども定めています。勧告については、相手方が十分尊重することを規定し、さらに必要な場合の内閣総理大臣への意見具申につなげています。 第11条のデジタル監は、重要事項について大臣に進言等を行い、庁務を整理して各部局等の事務を監督します。第12条のデジタル審議官は重要政策に関する事務を総括整理します。職名が近くても、それぞれの職務は異なります。設置法は個々の就任者の氏名を定めるものではなく、誰が就任しても共通する職と権限の枠を設ける法律です。[根拠:第6~12条](https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000036?occasion_date=20260915) ## 庁令・推進会議と組織の公表 第7条は、法律や政令を施行するため、または特別の委任に基づいてデジタル庁令を発する権限を定めます。同時に、法律の委任なく罰則や義務、国民の権利制限を設けることはできないとしています。 行政組織を設けることと、その組織が自由に国民への規制を作れることを分ける規定です。第14条のデジタル社会推進会議は、施策の実施推進と行政機関相互の調整を担当します。第15条では内閣総理大臣を議長、内閣官房長官とデジタル大臣を副議長とし、他の国務大臣等が参加する構成を定めています。 組織の細部には政令への委任があり、第18条は、政令で設置される所定の職の新設・改廃を次の国会に報告し、少なくとも毎年1回、組織の一覧表を官報で公示すると定めます。柔軟な組織運営とともに、その変化を国会や公表資料で把握できる仕組みを置いています。所掌事務、権限、会議、報告を併せて読むことで、デジタル庁設置法が行政の担当範囲と運営方法を定める法律であることを理解できます。[根拠:第7条・第14~18条](https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000036?occasion_date=20260915) ## 政務を担う職と庁内の実務を担う職 デジタル大臣を支える職として、第9条は副大臣、第10条は大臣政務官を置いています。副大臣は大臣の命を受けて政策・企画と政務を担当し、大臣政務官は大臣を助け、特定の政策・企画に参画して政務を処理します。両者は同じ名称の補助職ではなく、法律が職務を別々に定めています。 各条は一人を置く規定に加え、他省の同じ職を占める人を充てる職を置くことも認めています。担当範囲はデジタル大臣が定めます。任免は内閣総理大臣の申出により内閣が行い、副大臣については天皇の認証も規定されています。現在の担当者の人数や氏名を説明するものではなく、職を設け任免するための法律上の枠です。 一方、第11条のデジタル監には、職務に関する規定に加え、国家公務員法の服務規定の準用と、在任中の報酬を伴う他の職務や営利事業等の制限が置かれています。内閣総理大臣の許可がある場合を区別し、専門的な役割を担う職にも服務上の条件を設けています。 第13条は所掌事務の一部を担当する職とそれを助ける職を設け、その設置・職務・定数を政令に委ねます。第17条はデジタル事務官、デジタル技官等を置き、事務と技術を分担させています。政策に関する政務、大臣への進言や庁務の整理、各担当の実務を区分することで、設置法の組織規定が日常の業務遂行まで接続しています。[根拠:第9~11条・第13条・第17条](https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000036?occasion_date=20260915) ## 参考リンク 施行済みの組織・権限は、次の現行条文で確認できます。 - [e-Gov法令検索:デジタル庁設置法](https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000036?occasion_date=20260915)