--- title: "重要電子計算機保護法施行令:2026年10月1日施行予定の対象機器と報告体制" description: "2026年10月1日施行予定の重要電子計算機保護法施行令を解説。情報システム担当者向けに、対象機器の範囲、届出と被害報告の違い、分析等の委託先、地方機関への権限委任を公布済み条文で確認します。" date: 2026-09-15 category: 法令解説 tags: [サイバーセキュリティ, 施行予定] related_laws: [508CO0000000047, 507AC0000000042] draft: false --- 「重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律施行令」(令和8年政令第47号、法令ID:`508CO0000000047`)は、**2026年10月1日施行予定**の政令です。2026年9月15日現在は未施行であり、以下は公布済みの将来の制度の説明です。[法令全集の条文](/view/508CO0000000047)と[e-Gov法令検索の施行予定版](https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000047/20261001_000000000000000)で確認できます。対象となる電子計算機の範囲、情報分析等の委託先、行政権限の委任先を定めており、行政機関や社会基盤事業者の情報システム担当者が制度の準備に際して参照する資料です。本記事では本法との役割分担と施行前後の違いを扱い、個別機器の該当性、具体的な届出様式、個別の事故に関する報告要否は判定しません。見出し等では法令名を「重要電子計算機保護法施行令」と略記します。 ## 10月1日施行予定の範囲と段階施行の関係 この施行令は2026年3月23日に公布され、附則第1項に本法の施行の日である2026年10月1日から施行する旨が記されています。公布された条文を事前に確認できることと、その条文が既に適用されていることは別です。9月15日時点で、この施行令による対象機器の具体化や権限委任が施行済みであると説明することはできません。 一方、本法である令和7年法律第42号には段階施行があります。9月15日時点の施行版には総則やサイバー通信情報監理委員会に関する規定等が含まれていますが、10月1日施行予定版では第2章の特定重要電子計算機の届出・特定侵害事象等の報告などが加わります。「法律全体がまだ存在しない」という状態でも、「すべての制度が既に動いている」という状態でもありません。 本法附則第1条第4号は、通信情報の取得等に関する第3章から第7章までなどを別の施行区分にしています。そのため、この政令の施行日をもって通信情報取得を含む全制度が一斉に始まるとする説明にはなりません。施行令の3条は、対象機器、事務の委託先、権限の委任先という具体化を担い、本法各章の施行区分そのものを一つにまとめるものではありません。根拠は[施行令附則](https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000047/20261001_000000000000000)、[本法の現行版](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20260401_000000000000000)、[本法の10月1日施行予定版・附則第1条](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20261001_000000000000000)です。 ## 国・地方公共団体の機器は情報と接続関係から区分する 施行令第1条第1項は、本法第2条第2項第1号を受け、国の機関、地方公共団体、独立行政法人等が使う電子計算機の範囲を具体化する規定です。重要情報を記録する機器だけでなく、それと電気通信回線で直接または間接に接続する機器が含まれる予定です。重要情報という用語も一般的な「大切な情報」ではなく、本法が特別防衛秘密、特定秘密、装備品等秘密、重要経済安保情報を挙げて定義しています。 これとは別に、事務・業務の情報システムで情報処理に用いられ、他の電子計算機と接続する機器の区分があります。ただし、地方公共団体と地方独立行政法人については、接続先や業務をさらに限定しています。国の機関の情報システム、地方公共団体総合行政ネットワーク、所定の本人確認情報処理システムや地方税の電子情報処理組織への接続、警察・消防・防災に係るシステムでの使用が条文に掲げられています。 したがって、機器の設置場所が庁舎内であるという情報だけでは条文上の区分を説明できません。何を記録し、どのシステムに接続し、どの事務に使うのかが規定の要素です。第1条第2項は法律上の所定の法人のうち対象とする法人を列挙し、第4項は重要情報を保有する本法所定の事業者の機器を扱います。組織の種類によって確認する項が異なり、すべての民間企業の情報機器を一律に対象とする書き方ではありません。出典は[施行令第1条第1項・第2項・第4項](https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000047/20261001_000000000000000)と[本法第2条](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20261001_000000000000000)です。 ## 社会基盤の設備本体と機能を支える機器 第1条第3項は、経済安全保障推進法にいう特定社会基盤事業者が使用する機器のうち、本法の対象となるものを3区分で示しています。第1号は特定重要設備そのものである電子計算機と、その一部を構成する電子計算機です。設備本体だけを一つの箱として捉えるのではなく、設備に組み込まれた情報処理部分も条文上の対象に含める予定です。 第2号は、設備と直接・間接に接続し、設備の機能に影響する電磁的記録を送信する機能を持つものとして主務省令で定める機器です。第3号は、設備側の情報処理に使う記録を作成する機器のうち、定期的な入力が途絶えると設備の機能が停止・低下するものとして主務省令で定める機器を扱います。接続して指令等を送る関係と、必要なデータを継続して供給する関係を分けている点が特徴です。 第2号・第3号の具体化は主務省令にも委ねられています。ここでいう主務省令は、特別社会基盤事業所管大臣と内閣総理大臣が発する命令です。政令に接続関係が書かれていることだけから、あらゆる接続機器を自動的に対象とする説明はできません。機能への影響と省令の条件を対応させる構造になっています。 また、本法第2条第3項の「特別社会基盤事業者」は、特定社会基盤事業者のうち、同条第2項第2号の重要電子計算機を使う者です。「特定」と「特別」は別の定義であり、この対象機器の具体化が届出・報告を行う事業者の範囲につながります。出典は[施行令第1条第3項](https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000047/20261001_000000000000000)と[本法第2条第2項・第3項](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20261001_000000000000000)です。 ## 機器の届出と被害報告では権限の委任範囲が違う 10月1日施行予定の本法第4条は、特定重要電子計算機を導入した際の届出を、第5条は特定侵害事象等の発生を認知した際の報告を定めています。第4条の届出先は事業所管大臣で、第5条の報告先には事業所管大臣と内閣総理大臣が規定されています。設備の導入情報を届ける制度と、侵害事象等の情報を報告する制度は同一ではありません。 施行令第3条が地方機関に委任するのは、本法第5条の権限と、第6条・第9条・第10条のうち第5条に関係する部分です。届出を定める本法第4条の権限まで一括して地方機関へ移す規定ではありません。第6条の命令、第9条の報告・資料提出の求め、第10条の指導・助言にも、どの義務に関係するかという限定が付いています。 委任先は、総務大臣の権限では総合通信局長または沖縄総合通信事務所長、経済産業大臣の権限では経済産業局長です。国土交通大臣の権限では地方整備局長、地方運輸局長などが列挙され、金融庁長官に委任された所定の権限では財務局長または福岡財務支局長が規定されています。それぞれ事業を行う場所の所在地の管轄と対応します。 各項には、大臣や金融庁長官が自ら権限を行使することを妨げない旨もあります。地方機関への委任は国の主体が一切関与しなくなるという意味ではなく、権限の範囲と行使主体を具体化するものです。具体的な提出様式・受付方法は、この3条だけで完結しません。出典は[施行令第3条](https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000047/20261001_000000000000000)と[本法第4条から第10条・第74条](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20261001_000000000000000)です。 ## 情報分析と周知の委託先を事務ごとに定める 第2条は、本法第72条が政令に委任した法人を、委託する事務の種類に応じて定めています。第1項第1号は、本法第37条の情報整理・分析のうち選別後通信情報を取り扱うものを除く事務について、国立研究開発法人情報通信研究機構を挙げています。同項第2号は、本法第41条の周知等の事務について、一般社団法人JPCERTコーディネーションセンターを挙げています。 本法第72条第1項は情報処理推進機構を直接掲げた上で、その他の法人を政令に委ねています。そのため、施行令に列挙された2法人だけが法律上の委託先の全体である、という読み方にはなりません。また、これは事務の一部を委託できる法人を定める規定であり、掲載された法人が既に具体的な委託を受けたことを示すものでもありません。 第2条第2項は、本法第72条第2項の委託先としても前項の2法人を挙げています。対応する本法第42条第1項は、電子計算機等の供給者への脆弱性に関する情報提供や周知を扱う規定です。情報を整理・分析する事務、その結果等を利用者側へ周知する事務、供給者へ情報を提供する事務を分け、委託できる主体を対応させています。 選別後通信情報の除外は重要な限定です。本法第72条には受託者への情報・資料提供の範囲や秘密保持も規定されており、この委託先の指定から通信情報全般の取扱いを包括的に認めるとは説明できません。出典は[施行令第2条](https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000047/20261001_000000000000000)と[本法第37条・第41条・第42条・第72条](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20261001_000000000000000)です。 ## 導入済み機器と対象法人に置かれる経過措置 本法附則第4条は、施行時に既に特定重要電子計算機を導入している事業者について、届出に関する経過措置を置いています。本法第4条第1項の「導入したとき」という部分を、施行の日から6月以内という期間に読み替える仕組みです。新規に導入する機器に関する規定と、施行時に使用している機器に関する規定を区別しています。この6月という期間は本法の規定であり、施行令第3条が定める報告関係の権限委任とは別の事項です。 施行令にも独自の経過措置があります。第1条第2項の法人の列挙には外国人育成就労機構が含まれていますが、附則第2項は、令和6年法律第60号の施行の日の前日まで、この名称を除く形で同項を適用するとしています。本文に法人名が載っていることと、その法人について当該時点で規定を適用することを分けるための読替えです。 この読替えの終了日は別の法律の施行日と結び付いており、施行令の施行予定日だけから同日に終了すると決めることはできません。事前準備で条文を確認する場合も、機器の範囲を示す本文と、既存機器や法人の扱いを調整する附則を併せて読む構成になります。出典は[本法附則第4条](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20261001_000000000000000)と[施行令附則第2項](https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000047/20261001_000000000000000)です。 ## 参考リンク 9月15日時点の現行版と、10月1日施行予定版を分けて掲載しています。 - [e-Gov法令検索:施行令(2026年10月1日施行予定)](https://laws.e-gov.go.jp/law/508CO0000000047/20261001_000000000000000) - [e-Gov法令API:公布済み施行令の本文・附則](https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/508CO0000000047_20261001_000000000000000) - [e-Gov法令検索:本法(2026年9月15日時点の現行版)](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20260401_000000000000000) - [e-Gov法令検索:本法(2026年10月1日施行予定版)](https://laws.e-gov.go.jp/law/507AC0000000042/20261001_000000000000000)