--- title: "著作権法の未管理著作物裁定制度とは" description: "2026年度に運用が始まった未管理著作物裁定制度について、対象になる著作物、意思確認、裁定申請、補償金、最長3年の利用期間、従来制度との違い、利用前の確認事項を整理します。" date: 2026-05-31 category: ガイド tags: [著作権法, 未管理著作物] related_laws: [345AC0000000048] draft: false --- 著作権法(法令ID:`345AC0000000048`)は、[法令全集の条文ページ](/view/345AC0000000048)と[e-Gov法令検索](https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048)で確認できます。令和5年改正により創設された未管理著作物裁定制度は、権利者の利用可否に関する意思を確認できない公表著作物等について、文化庁長官の裁定と補償金の支払いにより、一定期間の利用を可能にする制度です。出版、映像、広告、アーカイブ、教材制作、デジタル配信に関わる担当者が、古い作品や連絡先不明の作品を使いたい場面で参照することがあります。この記事では制度の入口を整理し、個別作品が裁定対象になるか、補償金額が妥当かの判断は扱いません。 ## 未管理著作物裁定制度の目的 未管理著作物裁定制度は、著作物を利用するには権利者の許諾を得るという原則を維持しながら、権利者の意思を確認できないために利用が止まってしまう著作物等を、一定の手続で利用できるようにする仕組みです。文化庁は、令和5年の著作権法改正により、著作物等の利用可否に関する権利者の意思が確認できない場合に、文化庁長官の裁定を受け、補償金を支払うことで適法な利用を可能にする制度として説明しています。 | 項目 | 内容 | |---|---| | 根拠法 | 著作権法 | | 制度名 | 未管理著作物裁定制度 | | 主な対象 | 利用可否に関する権利者の意思を確認できない公表著作物等 | | 利用期間 | 最長3年と説明されている | | 主な手続 | 意思確認、裁定申請、補償金支払い、裁定に基づく利用 | この制度は、作品を自由に使えるようにする制度ではありません。利用者が権利者に連絡できない、権利者が誰か分からない、連絡しても一定期間応答がないなど、権利者の意思確認が難しい場合に、文化庁長官の裁定を通じて利用の道を開く制度です。利用目的、利用方法、利用期間、補償金の支払いが関係するため、作品ごとに手続を整理する必要があります。 ## 対象になる著作物と意思確認 文化庁の説明では、未管理著作物裁定制度の対象は、利用の可否に関する権利者の意思が確認できない著作物等です。たとえば、古い写真、映像、文章、イラスト、音源、地域資料、社史資料、パンフレットなどで、権利者の連絡先が分からない、権利者は分かるが連絡先が確認できない、連絡先に連絡しても応答がないといった場面が想定されます。文化庁のQ&Aでは、連絡先を把握した場合にその連絡先へ連絡し、一定期間応答がない場合の扱いも示されています。 意思確認は、制度利用の中心です。利用者は、作品を見つけたからすぐに裁定申請へ進むのではなく、権利者情報、管理事業者、出版元、表示、契約情報、ウェブ上の連絡先、権利情報登録システムなどを確認することになります。どの範囲まで調査したかを記録しておかないと、後から手続の説明が難しくなります。 実務では、作品ごとの調査票を作ると整理しやすくなります。作品名、作者名、掲載媒体、発行年、出所、利用予定、権利者候補、連絡履歴、応答の有無、管理団体の確認結果を記録します。権利者が明確に利用を拒否している場合や、既に許諾窓口がある場合は、未管理著作物裁定制度とは別の手続を検討することになります。 ## 裁定申請と補償金 未管理著作物裁定制度では、文化庁長官の裁定を受け、通常の使用料に相当する補償金を支払うことが制度の柱になります。文化庁は、制度の運用開始に向けて裁定の手引きや関係法令の整備を進め、補償金額の考え方や申請手続に関する情報を公表しています。利用者は、どの著作物を、どの範囲で、どの期間、どの媒体で利用するのかを明確にして申請する必要があります。 補償金は、権利者の許諾がないことを理由に支払いを不要にするものではなく、権利者の利益に配慮しながら利用を認めるための仕組みです。利用者側では、補償金、申請手数料、調査コスト、利用開始までの期間を見込んで企画を組む必要があります。映像や書籍のように多数の著作物が含まれる企画では、作品ごとの権利処理リストを作り、通常許諾で対応できるものと裁定制度を検討するものを分けると進めやすくなります。 裁定を受けた後も、裁定された範囲を超えて利用できるわけではありません。媒体、期間、地域、二次利用、改変、再配信、広告利用など、利用条件を確認し、社内や委託先に共有する必要があります。裁定の範囲を管理しないまま別用途へ展開すると、当初の申請内容とずれる可能性があります。 ## 従来の裁定制度との関係 著作権法には、従来から権利者不明等の場合の裁定制度があります。未管理著作物裁定制度は、それと同じ問題意識を持ちながら、利用可否に関する権利者の意思が確認できない場合に対応する新しい仕組みとして位置づけられます。文化庁の制度説明では、現行裁定制度、未管理著作物裁定制度、窓口組織による手続、補償金管理の仕組みが関連して説明されています。 従来制度と新制度を区別するには、まず何が分からないのかを整理します。権利者が誰か分からないのか、権利者の連絡先が分からないのか、連絡先は分かるが応答がないのか、利用可否の意思が確認できないのかによって、確認する制度や資料が変わります。作品の種類や利用方法によっては、著作権管理事業者、出版者、レコード会社、放送事業者、写真家団体などの窓口確認が必要になることもあります。 また、未管理著作物裁定制度は、著作権侵害を後から当然に治す制度として扱うべきものではありません。利用前に手続を確認し、必要な裁定を受け、補償金を支払うことが前提です。既に利用している作品について問題が見つかった場合は、通常の権利処理、利用停止、権利者対応、専門家相談を含めて整理する必要があります。 ## 利用者が準備する確認リスト 制度を利用する可能性がある場合、最初に整理したいのは作品単位の情報です。作品の題名、作者、発行者、掲載場所、発行年、権利表示、出典、利用予定、利用媒体、利用期間、改変の有無、商用利用かどうかを記録します。次に、権利者や管理団体への照会履歴を残します。メール、問い合わせフォーム、郵送、電話記録、ウェブ検索結果を時系列で保存すると、意思確認の過程を説明しやすくなります。 次に、裁定に基づく利用範囲を社内で管理します。書籍掲載だけなのか、電子書籍配信も含むのか、展示だけなのか、ウェブ公開も含むのか、動画配信やSNS投稿を含むのかを分けます。利用範囲が変わる場合は、当初の裁定内容で足りるかを確認する必要があります。委託先に素材を渡す場合は、裁定に基づく利用条件を契約や発注書に反映します。 権利者から後日連絡があった場合の対応も準備します。裁定制度は権利者の利益を無視する制度ではないため、問い合わせ窓口、利用状況の説明、補償金との関係、今後の利用継続や停止の判断を整理しておくことが重要です。文化庁の手引き、Q&A、権利情報登録システムの情報を確認しながら、作品ごとのリスクを管理します。 ## 参考リンク 未管理著作物裁定制度を確認するときは、まず文化庁の制度解説とQ&Aで対象・手続・意思確認を確認し、次に著作権法本文で条文上の位置づけを確認する流れが分かりやすいです。 - [e-Gov法令検索:著作権法](https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048) - [文化庁:未管理著作物裁定制度](https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/chosakukensha_fumei/tyosakubutsu/) - [文化庁広報誌:未管理著作物裁定制度が2026年度から始まります](https://www.bunka.go.jp/prmagazine/rensai/news/news_019.html)