--- title: "建築士法とは:資格・業務・建築士事務所" description: "建築士法の免許と業務範囲、設計・工事監理、建築士事務所の登録と管理建築士、契約前の説明を解説。建築を依頼する人や資格制度を調べる人に向け、個人資格と事務所運営の違い、条文の確認先を整理します。" date: 2026-09-15 category: 法令解説 tags: [建築士, 建築設計] related_laws: [325AC1000000202] draft: false --- 建築士法(昭和25年法律第202号、法令ID:`325AC1000000202`)は、建築物の設計・工事監理等を行う技術者の資格と、その業務や事務所の運営を定める法律です。[法令全集](/view/325AC1000000202)と[e-Gov法令検索](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202)で確認できます。資格取得を考える人、設計や工事監理を依頼する建築主、事務所の担当者が参照します。この記事では資格・業務・事務所登録の関係を扱い、個別建築物を設計できる資格の判定、受験資格の認定、設計紛争は扱いません。 2026年9月15日時点の2026年7月31日施行版を参照しています。 ## 一級・二級・木造建築士と担当できる建築物 第2条は建築士を一級建築士、二級建築士、木造建築士に分けています。一級は国土交通大臣、二級と木造は都道府県知事の免許による資格です。免許の主体だけでなく、設計・工事監理を担当できる建築物の範囲にも区別があります。 第3条以下は、建築物の用途、構造、高さ、階数、延べ面積等に応じて、どの建築士でなければ設計又は工事監理できないかを定めています。例えば第3条は一級建築士に関する範囲を規定しますが、用途と面積、構造と高さなどの条件が組み合わされています。「住宅だから」「木造だから」という一要素だけで分類する制度ではありません。 増築、改築、大規模な修繕・模様替えについても、対象部分を新築するものとみなす等の規定があります。資格区分の確認は、建物全体の名称を調べるだけではなく、予定する業務と工事の内容を条文に対応させる作業です。建築士法は技術者の業務範囲を定め、建築基準法等は建築物が満たす基準を定めるという役割の違いがあります。[根拠:第2条・第3条以下](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202#Mp-At_3) ## 試験合格と免許登録は同じ段階ではない 第4条は建築士の免許を定め、一級建築士について試験合格と所定の学歴・実務経験等の要件を組み合わせています。第5条は名簿への登録によって免許を行うとしています。試験を受ける条件、試験に合格すること、免許を受けることは、制度上分けて確認する段階です。 第2章は免許に関する手続、第3章は試験に関する規定を置いています。実務経験の内容などは国土交通省令に委ねられた部分があるため、法律本文の資格名だけでは必要な書類や認められる業務を確定できません。学んだ科目、卒業した課程、経験した業務といった事項は、対応する規定に分けて確認する構成です。 資格取得後についても、第22条は知識・技能の維持向上、第22条の2は対象となる建築士の定期講習を定めています。事務所に属する建築士や構造設計・設備設計一級建築士など、対象区分がある点も重要です。免許取得時の要件だけでなく、業務を続ける段階の学習・講習制度が置かれています。[根拠:第4条・第5条・第22条・第22条の2](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202#Mp-At_4) ## 設計と工事監理は図書の作成と照合を担う 第2条は設計を責任を持って設計図書を作成すること、工事監理を責任を持って工事と設計図書を照合し、図書どおり実施されているか確認することとして定義しています。工事現場の工程や作業を管理するという一般的な言葉だけでは、工事監理の法定の意味を表せません。 第18条は、設計する建築物を法令・条例の基準に適合させることや、設計内容を委託者に説明する努力を定めています。工事監理では図書どおりに実施されていないと認めた場合、施工者へ指摘して是正を求め、従わない場合には建築主へ報告するという流れを置きます。 第20条は設計図書への資格の表示・記名、工事監理終了時の結果報告等を定めています。誰が設計したかを示すことと、工事監理で確認した結果を建築主へ伝えることは、別々の場面の義務です。設計図書、工事の実施、確認結果という一連の情報を、責任の所在とともに残す構造が読み取れます。[根拠:第2条・第18条・第20条](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202#Mp-At_18) ## 事務所登録と管理建築士は組織の業務を支える 第23条は、他人の求めに応じ報酬を得て設計等を業として行う場合、建築士事務所を定めて都道府県知事の登録を受ける仕組みを置いています。建築士本人の免許と、業務を行う事務所の登録は別です。登録の有効期間と更新も同条に定められています。 第24条は事務所ごとに専任の管理建築士を置くことを規定します。管理建築士には所定の実務経験と講習修了が求められ、受託できる業務量・難易度、担当する技術者の選定・配置、提携先の業務範囲等の技術的事項を総括します。単に事務所の看板に名前を載せる役割ではありません。 事務所を開設する者、管理建築士、個別案件の設計・工事監理を担当する建築士は、条文上の役割が異なります。一人が複数の役割を担う場合でも、必要な確認事項は同じ一項目にまとまるわけではありません。個人の能力・資格と、事務所として業務を受けて管理する体制の両方を定める点が、建築士法の特徴です。[根拠:第23条・第24条](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202#Mp-At_23) ## 契約前の説明と契約後の書面を分ける 第24条の7は、設計又は工事監理の受託契約を建築主と結ぶ前に、管理建築士等が書面を交付して重要事項を説明する仕組みを定めています。設計図書の種類、工事と図書の照合方法、担当建築士等の事項が対象となり、契約内容を事前に確認するための手続です。 第24条の8は、契約を締結したときの書面交付を定めています。契約前の重要事項説明と、締結後に契約事項を残す書面は時点と役割が違います。設計・工事監理の業務範囲や履行に関する事項を、依頼者と事務所の関係の中で明らかにする制度です。 業務の適正を担保する規定として、第10条には建築士への懲戒が置かれています。免許に関する措置と事務所の登録・監督の仕組みも区別されます。建築士法は、資格を取得する入口、業務の遂行、事務所の受託体制、建築主への情報提供を段階ごとに定めており、依頼先を調べる場合にも資格名だけでなく業務と組織の両方を読む手掛かりになります。[根拠:第10条・第24条の7・第24条の8](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202#Mp-At_24_7) ## 構造設計と設備設計には専門資格による確認がある 第20条の2と第20条の3は、一級建築士の中でも構造設計・設備設計の専門資格が関わる仕組みを置いています。一級建築士が設計できる建築物であれば、専門分野の確認が一切不要になるという構成ではありません。対象となる建築物と設計部分を区別し、専門資格を持つ者が設計した場合と、それ以外の一級建築士が設計した場合で手続を分けています。 構造設計では、第3条第1項の建築物のうち建築基準法第20条第1項第1号又は第2号に該当するものについて、構造設計一級建築士が自ら設計する場合の資格表示等が定められています。それ以外の一級建築士が構造設計を行う場合には、構造設計一級建築士に構造関係規定への適合を確認してもらう仕組みです。確認を行った者は、その結果を構造設計図書に記載し、記名します。 設備設計では、階数が3以上で、かつ延べ面積が5,000平方メートルを超える建築物が第20条の3の対象です。設備設計一級建築士による設計又は設備関係規定への適合確認が規定されています。構造と設備では対象の定め方が異なり、面積だけを共通の判断軸として読むことはできません。設計図書に残る資格の表示と確認結果は、専門分野について誰がどの役割を担ったかを示します。[根拠:第20条の2・第20条の3](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202#Mp-At_20_2) ## 参考リンク 資格区分と業務・事務所の制度は、公式条文で確認できます。 - [建築士法:e-Gov法令検索](https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC1000000202) - [基準日指定の条文データ](https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/325AC1000000202?asof=2026-09-15)