--- title: "行政手続法とは:申請・処分・行政指導の基本枠組み" description: "行政手続法(平成5年法律第88号)の基本情報と条文構成を解説します。申請、不利益処分、聴聞、弁明、行政指導、届出、意見公募手続の制度上の位置づけと確認ポイントを紹介します。" date: 2026-05-21 category: 法令解説 tags: [行政手続法, 行政法] related_laws: [405AC0000000088] draft: false --- 行政手続法(法令ID:`405AC0000000088`)は、処分、行政指導、届出、命令等を定める手続について、共通する事項を定める法律です。条文全文は[法令全集の行政手続法ページ](/view/405AC0000000088)またはe-Gov法令検索([https://laws.e-gov.go.jp/](https://laws.e-gov.go.jp/))で無料で閲覧できます。 行政手続法は、行政庁が処分を行う際の手続の共通ルールを定める一般法です。許認可の申請、営業停止などの不利益処分、行政機関による行政指導、届出、命令等(政令・省令等)を定める手続における意見公募など、行政と国民・事業者の関係で生じる様々な場面に関係します。 この記事では、行政手続法の基本情報、条文の章別構成、主要条文の確認ポイントを整理します。個別の処分の適法性や不服申立ての可否を判断するものではありません。 ## 基本情報 行政手続法は、平成5年(1993年)に制定された法律です。第1条は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に資することを目的としています。 | 項目 | 内容 | |---|---| | 正式名称 | 行政手続法 | | 法令番号 | 平成五年法律第八十八号 | | 法令ID | 405AC0000000088 | | 制定年 | 1993年 | | 主な分野 | 申請、処分、行政指導、届出、命令等、意見公募手続 | この法律は、行政庁が許認可等をする場面、相手方に不利益処分をする場面、行政指導を行う場面、届出を受ける場面、命令等を定める場面に関係します。 行政手続法は、各省庁・都道府県・市区町村が個別の処分手続を定める法令に対する一般法として機能しています。各省庁の個別法(許認可根拠法、業法など)に特別の手続規定がある場合は、個別法の規定が優先されることがあります。また、第3条・第4条に適用除外が置かれており、すべての行政活動に一律に適用されるわけではありません。 平成26年(2014年)改正では、「処分等の求め」(第四章の二)と意見公募手続の対象範囲の拡大が行われています。改正の内容は総務省の資料で確認できます。 ## 条文構成 行政手続法は、総則、申請に対する処分、不利益処分、行政指導、処分等の求め、届出、意見公募手続などで構成されています。以下は主要な章の概要です(出典:e-Gov法令検索 掲載の条文)。 | 章 | 主な内容 | |---|---| | 第一章 総則 | 目的、定義、適用除外 | | 第二章 申請に対する処分 | 審査基準、標準処理期間、理由の提示など | | 第三章 不利益処分 | 処分基準、聴聞、弁明の機会の付与、理由の提示 | | 第四章 行政指導 | 行政指導の一般原則、方式、中止等の求め | | 第四章の二 処分等の求め | 法令違反事実に対する処分等の求め | | 第五章 届出 | 届出の到達と手続上の位置づけ | | 第六章 意見公募手続等 | 命令等を定める場合の案の公示、意見提出、結果公示 | | 第七章 補則 | 地方公共団体の措置 | 条文を読むときは、第2条の定義を先に確認すると、各章の対象範囲を整理しやすくなります。 第一章の適用除外(第3条・第4条)は読み飛ばしやすい部分ですが、確認しておく価値があります。国会、裁判所の処分、刑事訴訟手続など、行政手続法が適用されない場面が列挙されているためです。自分が関係する手続が行政手続法の対象かどうかを確認するには、根拠法令の確認と合わせて第3条・第4条を見ます。 行政手続法が直接適用される手続(国の行政機関が行う処分等)と、各地方公共団体の行政手続条例が適用される手続(都道府県・市区町村が行う処分等)は区別して確認します。 ## 申請に対する処分 第二章は、許認可等を求める申請に対して、行政庁がどのように処分を行うかを扱います。審査基準や標準処理期間は、この章の中心的な項目です。 第5条は、行政庁が審査基準を定めるものとし、行政上特別の支障がある場合を除き、公にしておかなければならないと定めています。第6条は、申請から処分までに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるものとしています。 第8条は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合、申請者に対して理由を示さなければならないと定めています。 申請に対する処分の流れを確認するときは、次のポイントを分けて見ます。まず、第5条(審査基準の設定・公示義務)では、行政庁が審査基準を定め、公にしておく義務が課されています。次に、第6条(標準処理期間)では、申請から処分までの標準的な期間を設定するよう努める義務が置かれています。第7条は、申請が到達したら受理して遅滞なく審査を開始する義務を定めています。第9条は、申請者が処分の進行状況について照会できることを定めています。 また、行政庁は審査基準を公にしておく義務(第5条第3項)を負うため、申請に先立って審査基準を確認することができます。許認可申請を行う際は、根拠法令・施行規則・審査基準・申請書式を所管省庁のウェブサイトで確認することが基本です。 ## 不利益処分と意見陳述手続 第三章は、不利益処分をする場面での手続を定めています。聴聞と弁明の機会の付与は、処分の性質に応じて使い分けられます。 第12条は、行政庁が処分基準を定め、かつ公にしておくよう努めなければならないとしています。第13条は、不利益処分をしようとする場合に、聴聞または弁明の機会の付与を行うことを定めています。 第14条は、不利益処分をする場合、名あて人に対して理由を示さなければならないと定めています。書面で不利益処分をするときは、理由も書面で示す必要があります。 聴聞は、許認可等を取り消す処分など、一定の重大な不利益処分に関係します。弁明の機会の付与は、弁明書の提出を基本とする手続として規定されています。 聴聞を行う場合の手続について、第15条は主宰者の指名、第16条は聴聞の通知、第20条・21条は聴聞での陳述・証拠書類の提出、第26条は聴聞調書と報告書の作成を定めています。聴聞の結果は、処分の判断に際して考慮されることが前提とされています。 不利益処分で理由を示すことが必要になる場面では(第14条)、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がなされたかを処分の相手方が了知できる程度の記載が求められるという考え方が、裁判例でも示されています。 ## 行政指導・届出・意見公募手続 第四章以下は、処分以外の行政活動や命令等を定める手続を扱います。処分と行政指導の違い、届出の扱い、意見公募手続の流れを確認する部分です。 行政指導については、第32条以下に、行政指導の一般原則、方式、複数の者を対象とする行政指導指針などが定められています。第2条は、行政指導を、行政機関が一定の行政目的を実現するため、特定の者に一定の作為または不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって、処分に該当しないものと定義しています。 第五章は届出について定めています。第37条は、届出が法令に定められた形式上の要件に適合している場合、提出先とされる機関の事務所に到達したときに、届出をすべき手続上の義務が履行されたものとしています。 第六章は、命令等を定める場合の意見公募手続を定めています。案の公示、意見提出期間、提出意見の考慮、結果の公示などが置かれています。 行政指導については、第32条(任意性の原則・権限行使との関係の明示禁止)、第33条(申請に関連する行政指導)、第34条(許認可等の権限に関連する行政指導の禁止事項)、第35条(行政指導の方式・書面交付義務)が確認ポイントです。行政指導は処分に該当しないため、不服申立ての手段が限られますが、第36条の2では行政指導の中止等を求める制度が置かれています。 意見公募手続(パブリックコメント)は、省令・規則などの命令等の制定・改廃に際して行われます。総務省のウェブサイトや各省庁の公式サイトで意見の提出状況と結果が公表されます。 ## 定義規定で確認する用語 行政手続法第2条には、法律全体で使う主要用語の定義が置かれています。条文を読む前に確認しておくと、各章の対象範囲が整理しやすくなります。 「処分」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいいます。「申請」とは、法令に基づき、行政庁の許可・認可・免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいいます。「不利益処分」とは、行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として直接に義務を課し、またはその権利を制限する処分をいいます(申請により求められた許可等の拒否処分、法令に基づき申請の取下げを求める処分を除く)。 「行政指導」とは、行政機関がその任務又は所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為または不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないものをいいます。「届出」とは、行政庁に対し一定の事項の通知をする行為であって、法令により直接に当該通知が義務付けられているもの(申請に該当するものを除く)をいいます。 これらの定義は、適用条文が「申請に対する処分」に関するものか「不利益処分」に関するものかを判断するためにも重要です。 ## 地方公共団体の行政手続条例との関係 行政手続法第46条は、地方公共団体が行政手続法の規定の趣旨にのっとり、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。 地方公共団体(都道府県・市区町村)が行う処分・行政指導・届出に関しては、各自治体が独自に制定した行政手続条例(または行政手続条例に相当する条例)が適用される場面があります。行政手続法は、地方公共団体の機関が行う処分等の多くについて直接の適用を除外しています(第3条第3項)。 自治体の処分・行政指導・届出に関係する場面では、当該自治体の行政手続条例を確認します。多くの都道府県・政令指定都市は行政手続条例を制定しており、各自治体のウェブサイトや例規集で内容を確認できます。 ## 読むときの注意点 行政手続法には適用除外があります。第3条や第4条には、特定の処分や行政指導、国の機関等に対する処分等について、規定の適用が除外される場面が定められています。 また、個別法に特別の定めがある場合は、その定めが優先されることがあります。特定の申請、処分、行政指導、届出にどの規定が適用されるかは、根拠法令や自治体条例の内容をあわせて確認する必要があります。 この記事は条文構成の案内であり、個別の行政処分の適法性や不服申立ての可否を判断するものではありません。具体的な手続で判断が必要な場合は、行政庁の窓口、弁護士等の専門家に確認してください。 行政手続法に関連して確認したい法令として、行政不服申立てについては行政不服審査法(平成26年法律第68号)、行政訴訟については行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)が関係します。行政指導に従わなかった場合の不利益な扱いを争う場面や、違法な処分を争う場面では、これらの法令もあわせて確認します。 ## 条文の閲覧方法 行政手続法の条文は、e-Gov法令検索で確認できます。章・節の構成は目次から確認でき、各条に見出しが付いているため、目的の条を探しやすくなっています。 申請に関係する手続を確認する場合は、第二章(第5条〜第11条)、不利益処分に関係する場合は第三章(第12条〜第31条)を中心に見ます。行政指導については第四章(第32条〜第36条の2)、意見公募手続については第六章(第38条〜第45条)が対応しています。 行政手続法を根拠とする総務省の通知・ガイドラインは、総務省のウェブサイトで公表されています。パブリックコメント(意見公募)の手続・提出状況・結果は、e-Govポータルの意見公募ページでも確認できます。条文の規定内容と実際の運用を合わせて把握するために、総務省の解説資料を参照することも有効です。 ## 参考リンク この記事は、以下の公式資料等を参照して作成しています。 - [法令全集:行政手続法](/view/405AC0000000088) - [e-Gov法令検索:行政手続法](https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000088) - [e-Govポータル:法令・くらしの安心](https://www.e-gov.go.jp/laws-and-secure-life) - [総務省:行政手続法](https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/d01.html) - [e-Gov法令検索:行政不服審査法](https://laws.e-gov.go.jp/law/426AC0000000068) - [e-Gov法令検索:行政事件訴訟法](https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000139) 行政手続法は改正が重なっているため、この記事の内容よりも上記の公式資料の最新版を優先して確認してください。個別の処分の適法性、不服申立て、行政訴訟については弁護士にご相談ください。